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『ただの収納スキルですが、時間は止まるし、生物もしまえます。――さて、邪魔者はどこですか?』  作者: だい


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閑話 選ばれし「正義」の道化たち

王都、白亜の城。


その最上階にある「水晶の間」で、

盛大な祝宴が開かれていた。


主役は5人の男女。

異世界から召喚された

「勇者パーティー」だ。


「カイト様! さすがですわ!」

「一撃でドラゴンを屠るとは!」


着飾った貴族たちが、

勇者カイトを取り囲み、

口々に称賛を浴びせる。


「ああ、大したことないさ」


金髪の美青年、カイトは

ワイングラスを揺らしながら

余裕の笑みを浮かべた。


「俺の聖剣にかかれば、

あんなトカゲ、雑魚同然だ」


その横では、

賢者や聖女たちも

同様にチヤホヤされている。


彼らは「選ばれた」のだ。

強大なチート能力。

神からの祝福。

そして、王国の全面バックアップ。


彼らにとって、

この異世界は「イージーモード」の

ゲームでしかなかった。


「……ところで、カイト様」


国王が重々しく口を開いた。

その瞳の奥には、

冷酷な光が宿っている。


「先日、神託が下りました」


「神託?」


「はい。

我らが敵、『魔族』についてです」


国王は芝居がかった仕草で

天を仰いだ。


「神は仰いました。

『魔族とは、穢れた血を持つ者。

魔法という悪魔の力を使い、

世界を滅ぼす害虫である』と」


「害虫、ですか」


「ええ。

奴らは一見、人と変わりません。

耳が少し長かったり、

肌の色が違うだけ……」


「だが、その本性は邪悪です。

根絶やしにせねばなりません」


嘘である。


この世界の「魔族」とは、

単に魔力保有量が多い

「亜人」の総称に過ぎない。


彼らは森で静かに暮らす、

平和的な種族だ。


だが、王国にとって

彼らの土地にある「魔石鉱脈」は

喉から手が出るほど欲しい資源だった。


だから「神」を利用した。

侵略を「正義」に塗り替えるために。


「許せませんね」


聖女が憤慨して言った。

彼女は自分が「正義の味方」だと

信じて疑わない。


「神様がそう仰るなら、

彼らは生きているだけで罪なのです。

浄化してあげなくては」


「その通りです、聖女様」


国王は深く頷き、

地図を広げた。


指差したのは、

王国の東に位置する隣国。

アツシたちが通り過ぎた、

あの平和な商業国家の先にある

亜人たちの自治区だ。


「しかし、問題があります」


「この隣国は、

『魔族との共存』などと

甘いことを抜かしています」


「魔族を匿い、

我々の聖戦を妨害しているのです。

これは、魔王に魂を売ったも同然……」


「つまり、敵ってことだな?」


勇者カイトが、

聖剣の柄に手をかけた。


「魔族を守る国もまた、

悪に染まっている。

なら、まとめて滅ぼすしかない」


「おお……!

なんと頼もしいお言葉!」


国王と貴族たちが

大げさに感涙してみせる。


彼らの狙いは明白だ。


「魔族討伐」を大義名分に、

豊かな隣国へ軍を進める。

領土を奪い、資源を奪い、

亜人を奴隷にする。


これは「聖戦」ではない。

ただの「強盗」だ。


だが、

5人の「正義の味方」は気づかない。

自分たちが、

強盗の「凶器」として

利用されていることに。


「やってやるさ」

「レベル上げにも飽きてたところだ」

「悪を滅ぼすのが、勇者の仕事だしね」


彼らは笑う。

これから殺す相手が、

武器も持たない市民や

ただの亜人だとも知らずに。


「そういえば」


ふと、賢者が思い出したように言った。


「最初に追放した二人……

あの陰気な男と、地味な女。

どうなったかな?」


「アツシとミクか?」


カイトは鼻で笑った。


「とっくに死んでるだろ。

スキルなしのゴミだったしな」


「違いありませんわ」

「魔物の餌食になって、

今頃は骨も残っていませんよ」


彼らはグラスを掲げた。


「不要なゴミに、乾杯」

「我らが正義の未来に、乾杯」


高らかな笑い声が

水晶の間に響く。


彼らは知らない。


自分たちが「ゴミ」と呼んだ男が、

この世界のシステムすら書き換える

最悪の「ジョーカー」として

生き残っていることを。


そして、

そのジョーカーが

「自分の平穏を邪魔する者」には

勇者だろうが神だろうが

容赦なく牙を剥くことを。


道化たちの宴は続く。

破滅の足音が近づいていることも知らずに。

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