「お金を払ったらセックスさせてあげる」って妹に言われたんだが、どうすればいい?
ハッピーメリークリスマス!
「19年も生きていれば、人生いろいろだよなぁ」
いろいろありすぎた結果、現在ニートでひきこもりの生活を送っている。
基本情報を開示しておこう。
男性。19歳。
匿名希望。
無職。ひきこもり。
身長150センチメートル。体重45キログラム。
特殊技能なし。
FDV(Facial Deviation Value)はおそらく50程度。
もちろん童貞。
いろいろあった人生の中でも特に高校時代。
「一度も人間扱いされたことはなかったなぁ」
高校だけはなんとか卒業したけれど。
「二度と思い出したくもない」
今は24時間、自宅の自室で過ごしている。
「無職、ニート、ごくつぶし、すねかじり、自宅警備員、なんとでも言うがいいさ」
独り自室でつぶやく日々。
ニートはゲーム三昧できるとか考えている人がいるならそんな甘い考えはさっさと捨て去るべきだ。
ゲームをしたくても「できない」のだ。
気力も体力もないからひきこもるのであって、気力も体力も有り余っていたらそもそもひきこもる必要なんてないわけで。
「心もカラダも重い。動ける気がしねえ……」
気力や体力を必要とするゲームなど当然できるはずもなく。
「中学、高校で精魂尽き果てちまった」
外に出ても何もいいことはない。楽しいことは皆無だしね。
「嫌なことにひたすら耐える19年間だったなあ」
これ以上嫌なことに耐えて生き続ける自信がない。あまりにも疲れすぎてしまった。
「身長150センチのニートに転生したいってやつがいるならいつでも言ってくれ。喜んでカラダを明け渡してやるよ!」
働かざる者食うべからずかぁ。
「餓死してしまったところで、誰も何も困らないんだよなぁ」
ひきこもりのニートの餓死なんて今の日本じゃめずらしくもなんともないだろう。
「そういえば、世間はクリスマスの真っ只中だったか。まあ、ひきこもりのニートには永遠に無縁のイベントだよなぁ」
ドタドタドタ!
大きな足音を立てて廊下を歩くのは二つ下、高校二年生の妹だ。
「メリークリスマス、ゴミ兄!」
ドアが開いて、真っ赤なミニスカサンタのコスチュームを着た妹が部屋ん中に入ってきた。
妹は、いつものように早口で喋り出した。
「100人くらいの男子とセックスして分かったんだけどさぁコンプレックスの強い男子ほど性欲が強いよね。イケメンたちはセックスも手慣れた感じでサラッとしたもんだったわ。キモメンほど粘着質で偏執的で拘りが強くてやたら注文が多いったらなかったわ。総じていえばヘンタイね。キモメンほどヘンタイ度も高いって感じ。キモメンは経験値も少ないから妄想だけが肥大化していって果てしなく肥大化した妄想はやがてヘンタイへと至るこれが真理よ。まあもらったお金の分はしっかりとサービスしなくちゃだからそこんとこはあたしだってわきまえてるわけよ」
「お、おまえ100人とセックスをしたのか」
100とゼロ。妹と兄のこの格差よ。
「ゴミ兄、今さら驚くとこそこ?」
兄の知る限り、妹は中一で初体験を済ませていた。相手は生徒会長だと聞いている。
以後、いろいろな男子たちで経験を積んでいるらしい。
妹の身長は163センチメートル。150の兄より13センチ高い。
妹はにっこり笑って言った。
「お金を払ったらセックスさせてあげる」
「はっ……!」
セックスさせてあげるという提案に絶句する兄。
「なんだその前代未聞の提案は?」
「ゴミ兄も相当溜め込んじゃってるよね? 1回10万円でさせてあげる。クリスマス特別割引だから感謝してよね」
唯一の趣味が貯金だったため、銀行口座には300万円以上貯まっている。
「払えない金額ではないが……」
「ゴミ兄。お金は有効活用しなくちゃだよ」
かわいい笑顔で妹は諭すように兄に言った。
「兄妹だからダメとかそういうのはナシ。別に子供を作るわけじゃないんだから子作りとセックスは分けて考えなくちゃ。お金を得る有効手段としてセックスがあるなら活用しない手はないしね」
まるで2倍速の動画のように、妹はよく喋り、よく動く。
「ほらあたしって顔もスタイルも上級クラスじゃん。交際範囲も広くてなにかと実入りが必要なわけよ」
「見栄を張りたいお年頃というわけか」
真っ赤なサンタコスの胸元をはだけ、妹は紺色のドーム君を手に近づいてきた。
間近で見る生の胸の谷間はド迫力だった。とたんに大きくなった兄のソレを見て妹は「むふっ」と笑った。
「商談成立ね」
慣れた手つきで兄のズボンを下ろして、紺色のドーム君をかぶせたソレに舌を這わせた。
ぺろぺろぺろ。
どっかーん!
「うわっ! めっちゃ早っ! どんだけ溜め込んでたんだよゴミ兄」
ほんの数秒で終わってしまった。あな恐ろしや!
「こ、これが経験値100の実力か……」
男子のツボを熟知した妹に抗う術は「童貞」にはなかった。
「ううっ、まるでやった気がしないのだが」
不完全燃焼感が半端なかった。
「もう1回やりたいの? なら追加料金を払って下さーい」
クリスマス・イヴ、銀行口座から20万円が消えた。
2回目は支払ったお金のぶんだけしっかりと触らせてもらった。
「これは人をダメにする柔らかさだな」
胸を揉みながらそう思った。いくらでも揉んでいられる。
下着を脱いだ妹の外性器は脱毛されていた。
「ツルツルだな」
ネットでしか見たことのなかった女性器を目視で確認した。
「あれが陰核包皮で陰核亀頭、大陰辱に小陰辱、それから……」
馬乗りになった妹は兄のソレをつかんで膣口に導いた。
自分のソレが膣の中に消えていく様子を、
「おおっ!」
驚きと感動とともに見つめていた兄だったが、僅か数分後には全てが終わっていた。
真っ赤なサンタのコスチュームをたたみながら妹は兄に釘を刺した。
「勘違いしないでよね。クリスマスの奇跡は回数には入らないから、ゴミ兄は『童貞』のままなんだからね」
スマホでお金が振り込まれたことを確認した妹は、
「ハッピーメリークリスマス! またのご利用をお待ちしておりまーす」
ご満悦な様子で部屋から出て行った。
一人っきりになった部屋で天井を見つめて余韻に浸る兄。
「クリスマスの奇跡か……」
喜ぶべきか、嘆くべきか、複雑な心境だった。
クリスマス限定?
「甘い! 今回限りで終わるなんて絶対に思えないんだよなぁ」
「お金を払ったらセックスさせてあげる」って再び妹に言われらどう対処すればいい?
このまま有り金全部吸い尽くされる未来しか浮かばない。
「妹とセックスしなければすむ話じゃねえか! 兄なら兄らしく毅然と……」
それが出来るなら苦労しない! 気力と体力は失われても、性欲だけは何故か減衰しないのだ。
「ああ、男という生物の悲しき性よ」
セックスを提示されて拒めるくらいの賢者であったならどれほどよかっただろうか。
「凡庸な人間にはしょせん無理な話だ」
金の切れ目が縁の切れ目って言われている通り、貯金が無くなる日が、妹との縁が切れる日になるだろう。
「それまでになんとか策を講じなければ……どげんかせねばいかんなぁ」などと思い悩む日々。
貯金が無くなる日まで、あと28回。
28回後に妹と縁が切れるゴミ兄……、心を強く持って限りある時間を生きて。