エピローグその2 帰国から3年後
"Oui, chef."
{ウィ、シェフ)
ロンドンの中心部、サイモンズストリートにあるレストランでケンヂは働いている。現代ヨーロッパ料理を出す店で、フランス人の料理長の元、12人の料理人と一緒に働いていた。地中海料理はもちろん、日本料理のエッセンスも取り入れたいということで、ケンヂは重宝された。
リカの転勤に伴い、二人はロンドンに居を移した。滞在予定は2年だが、二人の希望で永住を目指して頑張るつもりでいる。
日本でなかなか出来なかった待望の第一子がリカのお腹の中にいる。ロンドンに来て直ぐの出来事だった。育児と教育、そして二人の仕事のバランスを考えたら、ロンドンで育てた方が良いという結論を出したのだ。日に日に大きくなるリカのお腹とともに、二人の幸せも膨らんでいった。
『子供の名前、何にする?』
『リカさんが付けていいよ。』
『無責任じゃない?一緒に考えて。』
『世界に飛躍するような名前がいいな。』
『男の子か、女の子かも分かってないから難しいね。』
『難しいね。』
『双子だったりして。』
『確かに、異様に大きい。』
『じゃぁ、男の子だったら、私が名付ける。女の子だったらケンヂね。』
『変な名前つけたりすると、一生恨まれたりするんだろうな。』
『大丈夫、拒否権発動有りにするから。』
リカさんのお腹に耳をつける。心音が聞こえないかと耳を澄ます。窓の向こうに夕焼けが見える。朱い光が彼女の靴下を照らしている。ケンヂは徐々に照らす場所を変える朱い光をずっと眺めていた。
終わり
このエピソードで、この小説も終わります。
長いようで、短かった3ヶ月間でした。
読者の皆様、いつも支えてくれて、本当にありがとう
心から感謝申し上げます。
次の作品でまた会いましょう
作者
遠藤信彦




