タクミとミノル
チクショウ、なんでだ?なんでこうなったんだ・・・・・・・・・。
薄暗い倉庫の中で全裸のタクミが正座をしている。顔は出血し、ひどく腫れている。体にもいくつもの擦過傷や打撲痕があり、見るからに痛そうだ。
タクミの正面には椅子に座っているミノルがいる。ニヤニヤしながらタクミを見ている。タバコなのか、大麻なのか判断できないが、辺りには白い煙が漂っている。
『ワーハッハッハハ、本当にやりやがっな、タクミちゃんよぉ?』
いつもタクミをさん付けで呼んでいるミノルだったが、なぜかちゃん付けだった。
手に持った鉄パイプでタクミをこずいている。
『やめてくれよぉ、頼むよぉ。』
タクミは半泣きになり、殴られた口から血を出しながら懇願した。
『本当に犯罪を犯しやがった、バカめ、本当のバカだ!』
ミノルは嬉しくてたまらないらしい。
『お前が犯した罪を列挙してみよう。まず初めは食品に大麻を混入させた。次に食中毒が出るように意図的に鳥の生の汁を商品に塗りたくった。そして最後は傷害事件だ。鉄パイプでケンヂの後頭部をフルスイングしやがった。おまけに失神したあいつをさらに殴る蹴るだもんな、よくやったよ。』
ミノルだって共犯じゃねえか?とタクミは叫んだ。ミノルはさらに大笑いした。
『本当のバカだな?俺は何もしてねぇだろ?全部お前がやったんだ。俺は何もやってねぇ。指一本触れてねぇもんよ!』
ミノルが笑いすぎて椅子から落ちそうになる。タクミが恨めしそうに睨んでいる。
『金だよ、金!いくら持っているんだよ?あぁ?』
ミノルが吠える。吠えながらタクミの左肩をおもいっきり蹴った。タクミが声を出し、呻き、ブルブルと震えている。恐怖からの震えなのか、怒りからの震えなのか、顔を下に向けているのでわからない。
『今から警察にいくか?コラァ?あ?』
『勘弁してください、お金を払えばいいんですね?』
ミノルの足に抱きつきながら土下座をする形で懇願する。もう殴らないでくださいと。
ミノルが大きく煙を吸い込み、しばらく息を止める。そしてゆっくりと少しずつ煙を細い糸のように吐いていく。恍惚の表情を浮かべ、持っていた鉄パイプをタクミの背中に打ち下ろした。
『うグゥあ!!』
タクミがのけぞる。ミノルが大爆笑している。どこからかショウタが現れた。ショウタは服を着ていなかった。
『いつもいつも俺をバカにしやがって!体まで弄びやがってぇ!』
ショウタのパンチがミノルの顔面を捉えた。
『バカにすんな!バカにすんな!バカにすんな!』
ショウタは自分の言葉や暴力に酔ったかのように、ミノルを攻め続ける。
『そのくらいにしてあげなよ、ショウタちゃん。』
ミノルは急に優しい声になって、ショウタを止めた。肩で息をしていたショウタも少し落ち着いてきたみたいだ。
『かわいいね、ショウタちゃん。ねぇ、タクミにやられたことをやり返すチャンスじゃない?』
ミノルにそう言われて、ショウタはコクンと頷いた。
『やめて!、やめてくれぇ!』
タクミが叫ぶ、必死の形相でミノルの足にしがみつく。
『もっと足を開けよ、馬鹿野郎!』
ショウタは容赦なかった。なんどもなんどもタクミと一つになった。
ミノルが笑っている。ショウタにやられているミノルを見て笑い転げている。
タクミは何度も嘔吐した。殴られすぎたからなのか、ショウタから攻められすぎたからなのかは分からないが、胃の中のものを全部だした。涙で前が見えない。
『チクショウ、チクショウ、チクショウ・・・・・』
俺はこんな目に遭うために日本から出てきたのか?こんな目に遭うために生まれてきたのか?
俺はこんな奴らを仲間だと信じてきたのか?俺はこれから先、強請られて生きていくのか?
俺はここで殺されるのか?
俺はなんで生まれてきたんだ。両親はなんで俺を捨てたんだ?俺はなんで生まれてきたんだ?
『ウオォ!!!!』
タクミは少ない力を振り絞り、落ちていた鉄パイプを拾い上げ、ショウタの横っ面をぶっ叩いた。
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作者
遠藤信彦




