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橋本ケンヂは飛ぶ  作者: 遠藤信彦
42/75

恋も愛も②

彼女の鼻の頭にキスをした。


にっこりと笑って微笑んでくれた。目と目が合う。視線を外さない。見つめあっている。僕は左手の親指を使って彼女の眉を撫でる。眉間に指を当て、徐々に眉山に向かって指を動かす。眉毛の数を数えるかのようにゆっくりと動かす。彼女は右目を閉じた。

僕は撫でていた右の眉毛に唇を当てる。指でなぞった後を唇で繰り返しなぞる。眉間から眉山に向かってゆっくりと唇を動かす。彼女はまだ笑っているが、僕の背中に置いた手に力が入っている。緊張させてしまったのかもしれない。もう一度目を合わせる。今度は指でまぶたと目尻の位置を確認して唇を当てた。彼女の口から息が漏れる。唇を瞼の上に置き、間から舌を出して当て、軽く吸ってみる。体がビクんと反応し、硬直する。

僕の唇がリカさんの唇に当たらないように細心の注意を払う。指を顔の各部に当て、確認してから唇を付ける。僕の唇は彼女の顎を吸い、頬骨にキスをする。


彼女の鼻の頭を軽く噛んだ。彼女は少しだけ仰け反り、汗ばんだ手のひらで僕の顔を包み込んだ。

『おでこでない部分にチュッてされている気がする。』

唇を尖らせ、困ったなという顔をして見せた。

『気のせいじゃないですか?』

僕の人差し指が彼女の唇に触れる。とても柔らかい。僕の視線が彼女の唇の上に置かれる。彼女の目が見開く。僕の顔を持つ手に緊張が走る。僕の唇はまっすぐ彼女の唇に向かう。

唇と唇が触れる寸前のところで僕の唇は彼女の唇を逸れようとする。彼女の唇が僕の唇を迎えようと微かに上に向いた。

びっくりした。今、迎えに来たよね?と意地悪く聞くと、僕の顔を挟んだ両手の平を締め付け、圧迫する。僕の顔がアヒルさん顔になる。眉間に皺を寄せ、グリグリと両手で顔を締め続ける。

「ごめんなさい。もうしません。おやすみなさい。」

彼女の頭を僕の胸に抱き寄せ、おでこにそっとキスをした。

「ねぇ、もっとキスしたい?」

聞き取れそうにないほどの小さな声で聞かれた。

「100回したから我慢します。」

左手で彼女の髪の毛を撫で、梳く。

「52回よ。48回()()()()()。」


繰り返すキスの中で気づいたことがある。目覚めたと言ってもいい。自分の感情の中に今まではなかったものだ。それはリカさんに対する性的な欲求だったり、悪く言えば征服欲だったりだ。この人をもっと知りたい。この人を自分のものにしたい。僕以外の人がこの人に触れるのは嫌だ、と。

『残りの48回を今してしまうと、次に会ってくれないかもしれない。』

それがとても怖いと伝える。

『口にするかもしれない。しない自信もない。』

正直に答えた。両手で強く抱きしめる。彼女の両手は僕の顔を離れ、首に抱きつくように周った。

『口にするのは反則じゃ。』

そうですね姫様、と言いながらおでことおでこをくっつけ、ぐりぐりしてみた。彼女から笑みが溢れる。

『ケンヂが私にキスをしれくれることがとても嬉しい。今すぐして欲しい。』

お姫様はおでこを離し、そこにキスをしれくれた。形容のしようのない感情が僕の中に起きた。とても嬉しかった。僕はありがとうと同じ場所にキスを返した。53回目のキスだった。


さっきよりも時間をかける。キスをする権利は文字通り数えるほどしかない。場所選びに慎重になる。指を使い、触れ、どの場所がいいか丹念に調べる。77回目のキスは右手の薬指だった。88回目は鎖骨を噛み、99回目はおでこに戻った。

『あと一回しかないね。』

残念ですと僕は言い、私も残念とリカさんも言う。

『まるで夢を見ているような気分です。』

リカさんに対する湧き上がってきた新しい気持ちを正直に伝えた。リカさんは驚かなかった。むしろ不機嫌になった。

『本当に今まで私に対して何も思ってなかったのね!』

うすうす感じていたけど、本当に腹が立つと僕の脇腹を抓った。

『最後の一回は明日の朝がいいです。』

痛みを堪えながら伝えた。

『私も明日起きるのが楽しみになった。』

おやすみなさいと僕の胸に顔を埋めた。



リカさんがよく眠れるように優しく抱きしめた。片手で髪を撫で、もう片方の手は背中を撫でた。安心しきっている彼女の体はすぐに重たくなり、深い眠りに落ちていることを知らせた。







ご拝読ありがとうございます。

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作者

遠藤信彦

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