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橋本ケンヂは飛ぶ  作者: 遠藤信彦
33/75

仮題 復讐②

ケンヂが休みを取る2日前からタクミは動きだした。カバンや靴などのケンヂの持ち物に大麻のクズを入れた。気付かれないようにごく少量だ。そして同じく大麻片を食品の中に混入させていく。野菜サラダやソースの中だと見た目には気付かれにくい。タクミが辺りを見回しながら、ポケットから液体の入った瓶を取り出す。生のチキンから出た汁だ。こいつを調理済みのチキンに塗り込む。チキンは寿司用に冷やしてあるので、菌が死ぬことはない。

『全員くたばれクソ野郎。』

タクミは笑いが止まらなかった。


生のチキンの汁によって食中毒患者が出るかどうかは運次第だ。対象者が健康体なら悪い症状が出ないかもしれない。だがチキンの寿司だけで100パックは売れるのだ。コンビネーションの寿司も入れると200パックは売れるだろう。仮に3%の購入者に下痢の症状がでたら、3人から6人以上の患者が出ることになる。5%なら5〜10人だ。少ない数ではない。そのうちの何人かは保健所に通報するだろう。このビジネスをぶっ壊してやる。スタッフもみんなバラバラになればいい。仕事が急になくなって、路頭に迷うやつもいるかもしれない。いい気味だ。とくにケンヂは焦るだろう。あいつがここ以外で金を稼げる筈がないからだ。タクミは瓶から取り出した液体を食品に塗りつける。

そして極め付けは大麻の食品混入だ。たとえ少量でも子供なら異変が出るかもしれない。そして大麻の出所はケンヂだ。


ケンヂが旅に出た次の日にミノルは警察に通報した。あの店で食べた寿司はおかしいと。さらにシティーカウンシルにも通報した。友人が腹を壊したと、調査して欲しいと訴えた。


警察は迅速に対応した。ケンヂが働いている店に3人でやってきた。店の商品はなにかがおかしいと、問い合わせが多かったからだ。オーナーのケビンと鮮魚のマネージャーのステフ、寿司のマネージャーのデイビッドが立ち会った。いくつかの食品がランダムに押収された。


ケビンが真っ青になって頭を抱えていた。程なくして今度はシティーカウンシルの保険課が来た。食品衛生に関する係だそうだ。食中毒が出た疑いがあるので話をしたいとケビンと消えていった。5分ほどでケビンが帰ってくると、本日の業務を中止、停止する旨をみんなに伝えた。全ての商品、食材の一部づつを食品係は丁寧に取り分けた。その数はかなりの量になったが、その食品係は根気良く少しずつ丁寧に小分けして冷蔵バッグに入れた。その作業だけで2時間かかった。そのあと彼は各書類に目を通していった。何月何時何分にどの食品を入荷したのか?、その時の量や温度は適正だったのか?などを調べていった。そして全ての書類にチェックをしたのち、係がケビンに対して全ての食品商品の一部ずつを冷凍するように指示を出し、帰っていった。スタッフ全員で食品のサンプルを取り、冷凍した。その後食材を全て廃棄し、隅から隅まで大掃除をした。総額数万ドルの損失だろう。


タクミはほくそ笑んだ。思惑通りだ。出来すぎと言っても良い。タクミは床に這いつくばりながらスチールタワシで汚れを落としている。込み上げる笑いが止まらない。ザマァみやがれ。今日から営業はなく、でも給料は保証される。定額貰えるだろう。この先掃除をするために出勤はするかもしれないが、そんなのは大したことじゃない。次の営業日まで仕事がなくても給料が入ってくるなんて天国だ。あとは大麻だ。警察が首尾よく大麻を見つけてくれさえすれば、ケンヂを追い込むことができる。



翌日警察は食品に大麻を見つけた。シティーカウンシルも食中毒の原因はこの店の商品である可能性が高いと結論づけた。

オーナーであるケビンは鮮魚のマネージャーのステフと寿司マネージャーのデイビッドに自宅謹慎を申しつけた。



デイビッドは寿司セクションの皆を集めてミーティングをした。自分は自宅謹慎になる。遠くない将来にクビになるだろう。たぶん今日でみんなとお別れになる。自分がいなくなっても皆で協力して頑張って欲しい。給料は定額ではあるが保証される筈だ。だがもし新しい仕事を見つけたいのなら、好きなようにしたらいいと。

タクミは神妙な顔で聞いていたが、内心はガッツポーズだった。ケンヂが帰ってくるのが待ち遠しい。直接あいつの顔を見れないのが本当にくやしいが。タクミは隣にいたサトミとショウタに目配せをした。今夜はパーティーだという合図だ。2人は頷いた。嬉しそうな顔になるのを我慢しているのが見て取れる。



『俺を馬鹿にする奴みんなに地獄を見せてきた。今度はお前の番だケンヂ!』


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