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橋本ケンヂは飛ぶ  作者: 遠藤信彦
19/74

仮)無題

暦は12月になり、サンタさんがサーフボードに乗って波乗りをしているポスターが至る所で見れるようになった。朝晩は涼しく、とても気持ちが良いが、日中の日差しの強さには辟易す。この国の空の上ではオゾン層が薄いみたいで、強い紫外線が容赦なく人々の皮膚を焼きにくる。皮膚がんで亡くなる人がとても多い。必然的に日焼け止めが必須になり、水分補強のために1.5リットルの大きなコーラのボトルを抱えている人が多く見られるようになった。南半球は本格的な夏を迎えようとしていた。


ケンヂにとっては初めての異国での年越しになる。この国に来て5ヶ月がたった。ワーホリビザは12ヶ月しかない。もうすぐ折り返し地点だ。()()()()()()()()()()()()()()。毎日働いている。毎日勉強をしている。毎日のようにジムに行っている。誰とも遊んでいない。絶対にブレない。毎日が充実している。死んだ魚の目をしたワーホリが多い中で、自分はよくやっている方だと思う。社交的な性格ではないため、遊びやコミュニケーションを通じた思い出づくりはできていないが、(できないが)英語力は格段に伸びた。英会話学校に通った人たちよりも数段上手い。それは職場のスタッフにもよく言われた。5ヶ月前の僕の英会話力は酷いもんだったと笑い話にされる程だ。

仕事もプライベートも申し分なくうまく行っている。でもなんだか心にポッカリと穴が空いたような気持ちになっている。それはタクミとの喧嘩の後に顕著になっていた。タクミは友達作りにとても熱心だった。そのためにワーホリに来たのかと思わせるくらい熱心だった。アルコールや時には大麻まで持ち出して、人と繋がることにこだわっていた。彼がそこまでして人と繋がることに賭けていたものは何だったんだろう?。


ある平日休みの日、腰の調子が良くなかったので、ジムは休みにした。普段は誰と会うでもない休みの日であるが、今日は久しぶりにワーホリのエージェントがあるオフィスに顔をだした。日本語書籍の貸し出しサービスが目当てだった。英語ばかりの勉強では流石にモチベーションも続かないからだ。遠藤周作、山崎豊子、村上春樹作品など、片っ端から読んでいる。海外に住んでいて日本文学にハマるのもどうかと思うが、異国の地で読む小説がこれほどまでに自分の心を掴むのかと不思議でならない。日本にいた時から大学に行かなかった分、本を読むようにはしていたが、今の半分以下の読書量だったと思う。


『あら、久しぶり。ケンヂくん、元気だった?』

本を選んでいるところでまどかさんが帰ってきた。今日のまどかさんは白のハーフスリーブで肩を出し、胸元が大胆に空いたものだった。外国暮らしが長いと服装も現地の人に似通ってくると聞いたことがある。目のやり場に困る。

『お久しぶりです。今日は本を借りていこうと思います。山崎豊子の“2つの祖国”にしようと思います。これ借りてってもいいですか?』

以前不毛地帯をよんでからはすっかり山﨑豊子ファンになっていた。とにかく読ませる。夜寝れないこともあるくらいだ。

『もちろんよ、名前と借りた本を記入帳に書いてくれたらいいわ、もう知っているわね。』

まどかさんはウインクをいてジム仕事に帰って行った。うーん、美人だ。これで子供が2人いるって言うから、人は見た目では分からないものだと思った。こんどまどかさんに時間があったら僕の悩みについて相談してみよう。ワーホリのモチベーションが行き詰まったなんて話、たくさん聞いてきただろう。きっといいアイデアか、解決策を知っているはずだ。


家に帰ってから早速本を読んだ。今日はもう英語の勉強はしないと決めた。帰宅途中で買っておいたスナック菓子とチョコレート、そしてブラックコーヒー。世界は僕のためにあると確信した。


ご拝読ありがとうございます


生まれて初めて書く小説です

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