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03 レッツゴー生徒会室

「・・・あぁ。」と、私は落胆の声を上げた。

選挙の翌日。寒いロビーに堂々と張り出された模造紙に、私の名前は、

あった。


無いほうが良かった。

「2年3組 菅野 ヒヨリ (信任)」とババーンと載っていて、あーあ、と私は思った。

なんだい、自分から立候補したくせに、と、私の隣で私が喚く。

「うるさいなっ、」と私は呟いて顔を上げて模造紙を睨む。

そしたら、隣で「へ?」という声がして、私は「ちょっと黙っててよバカ!」とぐりんとそっちを向く。


ロッキーがボーゼンと立っていた。

「・・・はい。」と、ロッキーはため息をつきながら苦笑いをした。

「あれ?」と、私は首を傾げる。私はきょとんとしているロッキーに首を振って、

「違う、すんません。いいですよ喋って。」と言った。

ロッキーはまた、「・・・はい。」と笑った。


「よかったね 全員大丈夫で。」と、ロッキーは模造紙を見上げながら呟いた。

よくねーよハゲと私は心の中で呟いて小さく頷いた。

だから私は、

「ロッキーんところ 『2年4組 佐藤 ダイチ』じゃなくて『バラク・オバマ』だったら面白かったなー。」

とニヤニヤした。

ロッキーは、それを聞いて苦笑いをした。

ロッキーの笑い声は いつもどこか寂しそうに聞こえるから、もっと大笑いしてほしいな~、と私はぼんやり思った。


「でさ、カツラ」とロッキーは私を振り向く。私はロッキーの方に目をやった。

「さっき、誰としゃべってたの?」と、ロッキー。

私は「は?」とロッキーを振り返って、「別に誰とも・・・、」とぶっきら棒に呟いた。

「・・・あ、そう。」と、ロッキーは模造紙に向き直る。私は、「何で、」と尋ねた。

「だって、カツラさっき 『うるさい』とか『黙ってろバカ』とか言ってたし。」

うん、それは心の中の自分、先生に気に入られたい自分と話してた。

だから私は、「ねーよ、」と笑ってもう一度、模造紙を見つめた。


あー・・・。

私のダサイ名前の上にはバッチリ「会長 2年2組 松本 クウヤ」と書いてあって、私はため息をついた。

くそー・・・ 今度からこのエロにこの学校を動かされるのか・・・と、私は考えていた。

そしたら隣のロッキーはうれしそうに、

「これからはまっちゃんが会長だね。松本政権誕生だねえ、」と笑った。

はあ?何喜んでんだよイェスウィーキャン。いい迷惑だよ。


でも、去年 松本と一緒に生徒会をやっていたロッキーが、そんなに松本に期待するなんて。

やっぱ、松本はそーいうことにもスペシャリストなのだろうか。

どうでもいいけど。

悔しいけど。




それから、次の週の生徒会が運営している生徒朝会で、私たちは旧役員の方々からバトンを受け取った。

このバトンは、私にとって重いだろうか。それとも、軽いのだろうか。

落としたら割れる 重いガラスのバトン。

・・・落としても無事なアルミホイルの軽いバトンが良かったな。

いや、今の私のバトンは、アルミバトン。


私の前で背筋を伸ばして体育座りをしている松本の握ってるバトンは、きっと、ガラス製。

でも、私の受け取ったバトンだって、思いっきり握れば、グシャグシャになってしまう。

どっちにしろ、大切にしないと、次の生徒会の人たちに胸を張ってバトンを渡せない。

1年先の心配なんて、してんじゃねーよ。と、また私は笑う。うるせーくそ。死ね。


旧役員だった松本、ロッキー、リリーはそのまま新役員となった。

旧役員の3年生は抜けて、新役員の私たち、それと1年生が生徒会に入った。


そして、今日の放課後、生徒会室に集合ということになった。

生徒会室とか場所わかんねーよ・・・と、私は頭を掻き毟りながら体育館を後にした。

2年生4人で足早に歩きながら、教室に戻った。


その途中、松本が笑いながら「あー、緊張したぁ。」とため息をついた。

それを聞いて、私は振り返る。そして、「松本も緊張とかすんの?」と尋ねた。

松本は「え?」と、私に聞き返して、笑いながら「当たり前だろ。」と言った。

「・・・へー。」と私は半眼で答えた。

あの松本ですら、引継ぎ式でちょっとした挨拶を言うのも緊張するのか。

じゃあ、この間の演説会では?

訊かなかったけど。


「じゃ、今日の放課後。」と、松本は体育館より一番近い2組の教室へと吸い込まれて行った。

私は黙って手を挙げた。ロッキーは「じゃねー。」と、ニコニコ笑った。

そして次に私は、3組の教室に入り、二人と別れたのであった。




そして、放課後。

いつも一緒に帰る友人たちには、生徒会がある。と告げた。

そしたら友人は声を弾ませて、「初仕事?がんばってね!」と笑った。

ああ、うん。と、私は曖昧に頷いて、友人たちと別れた。


初仕事って、おいおい。

仕事 なんてでっけぇことじゃねえよ。と、私はため息をついた。

でも、仕事?

私がこの学校に「完食」という新しい伝統を創るのは、仕事?

わかんない。

初めてだから。

言い訳にしかならない。

うぜえな、私。

自分にこんなイライラしたの、久しぶり。


そんな風に生徒会の妄想をしてたら、とんとんと肩を叩かれて、私は後ろを振り向いた。

「えへへー、」と、リリーが笑っていた。

うわ・・・ なんかいい匂いがしそうな息だなあ、と私も笑った。

「菅野さんは生徒会初めてだよね、」と、リリーは言った。

「ああ、うん・・・。」と、私は頷いた。リリーのようなお嬢様じみてる子とお話しするのは苦手である。

「じゃさ、生徒会室の場所、わかる?」と、リリーはふわっと首を傾げる。

おお・・・ いいなあ、こんな子。と、私は思いながら「わかんない。」と言った。

「そお?じゃあ、ついてきて~。」と、リリーは私を追い越す。


私はリリーの2歩後ろをついて歩く。リリーは綺麗な黒髪をゆらゆら揺らしながら私の前を行く。

はあ・・・ よりによって話しづらい子と生徒会かあ・・・。松本といい、リリーといい。

まあ愚痴は言ってらんない。私は望んで生徒会に入ったし。メンツはドンマイ。


1組の先を超えると、地味な教室が現れた。

普通の教室より明らかに狭い。生徒会室なんて、そんなもん。

でも、ボロっちいドアと黄ばんだ「生徒会室」という紙が挟まれているクラス札を見て、

すげえ使い込まれた感あるなあ、と私は感心した。

感心してる間に、リリーはもう生徒会室の中に入っていて、こっちを見ていた。

だから私は慌てて生徒会室に入り、ドアを閉めた。


松本がどんと座っていた。

ドアと向かいになっている大きな窓を背にして、誕生日席に座っていた。

うわっ・・・絵になるわぁ。と、私は舌打ちをして歩き始めた。

そしたら、ぞるんっと足が滑って、私は股を180度に大きく開いた。

「アアォ!!」と、謎の奇声を発して、私は床にすっ転んだ。

痛っっってえ!もともと体が硬い私、もうこのとき私は、股関節がいかれてしまったのかと思ったほどであった。


ロッキーの楽しそうな笑い声が聞こえて、私は顔をあげた。

「おもしろー、カツラ。そんな生徒会いきなり入ってギャグかまさなくても・・・。」

と、ロッキーはオバマのような白い歯を見せて朗らかに笑う。

私は教室の床とは少し違う、生徒会室の床をのた打ち回りながら、「わざとじゃないよ。」と言った。

それでもロッキーは、この間、選挙の発表の日に会った日より格段に楽しそうに笑っていて、良かった。


松本はちょっとだけ笑って、「生徒会室の床、滑りやすいから気をつけろよ。」と言った。

早く言えよな、そういうことは。と私は言って、立ち上がった。

生徒会室は、外も地味だが中も地味だった。つーか、生徒会室の中は倉庫だった。

見ただけで、動くのかわからないボロいパソコン、

ダンボール、色画用紙、紙テープ、クリアファイル、筆、模造紙、テープ類・・・。


と、私が生徒会室の品々を物色していると、松本が、

「おい菅野。あとで生徒会室のモンは紹介してやるから。とっとと席に着け。」と言った。

私は松本を振り返って「あ、はい。」とため息をついた。長いまつげの奥にガラス玉のような目が光ってる。うえー、怖い。

と、言われたものの、どこに座っていいかわからない。


私がまたオドオドしてると松本が、「そこでいーよ。」とめんどくさそうにあごをしゃくった。

松本の視線の先には、松本に一番近い席。で、ロッキーの隣だった。

はあ?最悪だよ。と私は思いながらしぶしぶ席についた。

私の隣のロッキーは私のほうを向いて、笑った。「よろしくね。」

「ああ、はい。どーも。」と私も頭を下げた。


そのあと、1年生もぞろぞろと生徒会室に入ってきて、新生徒会となって初めての生徒会が始まった。

「気をつけ、礼。」という松本の号令で、皆が一斉に頭を下げた。私は半テンポ遅れて礼をした。


さあ、いよいよ生徒会生活の幕開けだ。

・・・幸か不幸か。

いつも見てくださってる方ありがとうございます。

市川は1ヶ月先に受験を控えているため、少しの間更新を停止させていただきます。

無事に合格できたら帰ってきます!(*`▽´)ノシ 頑張ってきます!

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