02 別に、
生徒会立候補しちまったYO という気持ちが抑えきれない。
ワクワクと、ドキドキと、バクバク。
生徒会って、どんなもの?と、私は不安である。
その前に、生徒会に入る前の立候補演説。鬼門である。(倍率は1なのだが)
まあどーせ立候補演説なんて、誰も聞いてないし・・・。信任だし。
と、私は今朝放送された内容どおり、昼休みに推薦者と一緒に会議室へ向かう。
集まったのは14人だった。
生徒会立候補者7名。推薦者7名。
生徒会となるのは7名。会長2年より1名。役員2年より3名、1年より3名。
定員ぴったりである。やはり、生徒会というのはみんなに忘れ去られている委員会なのである。
そんな忘れ去られている委員会に入ろうとする 私も私だよなー・・・。と会議室を見渡す。
ちゃんと松本もいた。私の担任の先生から渡された 立会演説会の内容が書かれた紙をじっと見つめている。
くそー真面目クンだな・・・。と、私は目を細めて松本を見る。
そのほかに私と同じ学年の人は・・・、
ロッキーと、リリーである。
ロッキーはちょっと肌が黒くて電子機器に強い ちょっと小柄な男の子である。
こっちも真面目。でも、どちらかというと松本よりは話しやすい。松本はひどくつっけんどんである。
ちなみにロッキーは野球少年でカープファン。
あと、ロッキー、というのは もちろんあだ名である。由来はわからないらしい。苗字は佐藤である。
リリーは私より背が高くて、ふっくらとしていて ツヤツヤした黒髪のおかっぱの女の子である。あんまりしゃべったことはない。
おっとりした性格で 真面目。全員真面目・・・で、私の出る幕なんか無いではないか。
でも、同性の人がいて良かったなー。と思う。やっぱり、男子だけだと不安になる。
真面目で真面目で真面目の鏡。ホント。だが、ジャニオタ・・・らしい。詳細は知らんけど。
リリーもあだ名である。本名は「山田ユリ」なので、「ユリ」から「リリー」。らしい。
1話でも言ったが、私のあだ名はカツラである。理由は略。
私の苗字は「菅野」である。「カンノ」と読む。
カンノだから、もっとかわいい「かのん」とか、そういうあだ名をつけてほしかった。
こう見ると、松本だけあだ名がない。別にいいけど。
そういえばロッキーは松本のこと、「まっちゃん」って呼んでたな。
私が松本にあだ名をつけるとしたら、『エロ会長』かな。
で、私以外の3人は全員生徒会を経験済みである。だから、全員先輩である。
新しく入る1年生と一緒に 私は生徒会となる。予定。
それから大まかな演説会の内容を聞いて 解散となった。
演説会は来週の木曜日。それまでにスピーチの内容を考えてこい。とのこと。
もう大体言うことは決まってる。1年間続けてきた 「完食」のこと。
夕焼け小焼けの帰り道。
私を松本が追い抜いた。「松本。」と私は松本を呼んだ。
松本は おとといの朝と同じように眉間にしわを寄せて、「何?」と私を振り返った。
私はニヤッと笑って「演説頑張れよ。」と言った。
そしたら、松本もちょっとだけ笑って、「お前もな。」と言い、向きを変えて歩き始めた。
いつも硬い表情の松本が 優しく笑うのを見たのは 久しぶりだった。
いよいよ演説会。
言うことを暗記しようかな~・・・と思ったけどめんどくさかったからやめた。信任だし。
2年生で演説する順は 会長に立候補した松本、それから役員に立候補した私、ロッキー、リリーの順番になった。1年生はリリーのあと。
体育館のステージの上で全校生徒に見つめられながらパイプ椅子に座っているのが、意外にも緊張する。
そんなに緊張はしない、と思っていたけど 生徒が来るとひしひしとわかる。やっぱり、暗記してくるべきだったな。
それから、演説会の始まりのチャイムがなって、演説が開始された。
選挙管理委員の生徒に名前を呼ばれた松本は、机の前に歩いて行く。
うわっ やべえよ、と私は肩をすくめる。
思い返してみれば 演説会で一番緊張したのは松本がしゃべってるときだったなあ・・・。
松本は 去年突然亡くなった校長先生のお話も織り交ぜて、超絶レベルの高い演説を完成させていた。
は?^^こんなんじゃ私の出る幕ねーよ(2度目)
しかもなんで私のような凡人が松本のようなレベル高い人間の後に演説しなきゃいけないんだよ マジ絶望。
私は青ざめていく心の中で、そんなことを思っていた。
演説が終わったのか、パチパチ、と生徒の群集から拍手が起きて、私はびっくりして跳ね上がる。
隣のロッキーが、「カツラ緊張しすぎだよ、」と、ちょっと笑ってくれた。
うん、緊張するのは当たり前だね^^ みんな生徒会経験者なんだからね・・・、と、私はため息をついた。
で、そんな感じで松本は私の隣に座る。その時もまたびっくりして、私はガタンと椅子を揺らす。
そしたら今度は松本が「おい次だぞ。頑張れよ。」と、勝ち誇ったように私の耳で囁いて、うぜえええええと、私は歯を食いしばった。
それから、私は名前を呼ばれて、ロボットのようにガチガチになりながら 台へと向かった。
私が演説で何を言ったのか、覚えてない。
完食がどうとか、伝統がどうとか、そんな言葉ばっかり並べていたような気がする。気がするんじゃなくて、そうだった。
演説が終わって、拍手の中私は椅子に沈み込む。緊張が解ける。ヤバかった・・・。と、私はため息をついた。
そのあとは、頭が真っ白になって、ぼーっとしていて、ロッキーの演説が始まった。
それで、推薦人がロッキーのことを、
「オバマに似ている佐藤くんがこの中学校を変えてくれます!Yes, he can ! です!!」
とか言って、一同ブフォ;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )
で、推薦人の後のロッキーの演説で「オバマに似ている佐藤です、」とか言ってまた;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ブフォ
みんなすごい、ほんとパフォーマー。私の演説なんてつまんなくて、なんだか落ち込んでしまった。
(言わずもがな、リリーの演説も神がかっていた)
そんなんで、私は史上最悪のテンションで舞台から降りた。
信任投票なんだけど なんだかつまんねえな・・・ と、私は思いながら教室に戻った。
投票の結果は明日。
私はうな垂れながら、給食を食べた。
私の頭の中ではロビーの掲示板に でかでかと、
「カツラなんぞ、生徒会に入る資格はねーよ」
と、掲示されている光景を余裕で妄想することができた。