運命に逆らいたい 逆らえないだったら
ヴィクトリアーヌの家庭環境を聞いてシャルルは自分なりの助言を行ってみました。
そんな中副執事長が現れて。
「シャルル様 あっ いえ 大公子殿下。
エルミエ皇后陛下並びにアフェルキア公国のエリザベート・ディア・ハドルヌス侯爵夫人
ご訪問されて、今居間にお通ししております」
「えぇ?」
「えっ?」
ほぼ同時に僕もトリアも頭を殴られたような衝撃でこの言葉を聞いて軽いめまいがした。
この状況で二人どうして??
「……。あ!わかったすぐ行くよ。」
先に副執事長に居間へ行ってもらう。
「トリア 僕は決めた。
運命に逆らいたいし 逆らえない!」
「えぇ そうね。 私も逆らいたい 逆らえないわ!」
何かを覚悟していたようだった。
二人手を繋いで居間へと向かう。
初めて意気投合した瞬間だった。
僕はなんだかんだ言って冷めた性格を父上のせいにしてた。
何かに熱狂したり、夢中になったり、それだけを追求したり。
してこなかった。
それは自分の中にストッパーを作って踏み込んでほしくなかったから。
でもそれじゃ駄目な事もあるんじゃないかって。
私はなんだかんだと理由をつけては結婚から逃げていた。
結婚だけじゃないわ。人ともあまり付き合ってこなかったわ。
傷つきたくなくて距離をとって壁を作ってきた。
全ての事に。
でもこのままじゃいけないわ。
そうよ。
二人の固い意志は全く揺るがない。
二人居間の扉の前で深呼吸をしてみる。
二人にとっては一大決心だから。十数年自分を客観的に見てた。本当にほしいものほしいことは心の底から願わないと努力しなきゃいけないことがわかったから。
熱いものが身体から放出し初めているのを感じる。それは経験したことのない未知の不安と少しの恐怖も混じり合っているがいたなものではなかった。
重い扉が皇后付きの衛兵によって開かれた。
靴の踵をつよく床を叩いて奮い立たせる。
僕とトリアで胸を上げ二人で居間にまさに乗り込んだ。
「まぁ二人でやってくるなんてやはり正解ね。エリザベート殿」
御祖母様はティーカップの紅茶を口に運び、満面の笑みで僕達を迎える。
「御祖母様 御無沙汰をいたしております。
ご機嫌いかがでしょうか?」
御祖母様の目元が鋭くなる。
「ご無沙汰
そうですよね。少しお顔を見せてくださいね」
少しお灸をすえられる。
実は御祖母様苦手です。
なんだか全てを見透かされているようで…。
まあ当然といえば当然ですが、このフェレイデン帝国の右翼を担っています。
「はい 少し増やします」
「まあ。よろしい。
さあエリザベート・ディア・ハドルヌス侯爵夫人にご挨拶を」
僕は隣のトリアの御祖母様の前に立つ。
髪は白くは、皴は刻まれているが上品で凛とした姿は十分に美しい貴婦人だ。
「お初にお目にかかります。
シャルル・アベール・ディア・フォルディスで
ございます」
ハドルヌス侯爵夫人の手の甲を取り軽く唇をつける。
ほのかにする薔薇の香りがこの高貴な雰囲気の老婦人にぴったりです。
「お転婆娘の子守は大変でしたでしょう。」
その口調の中には孫を心配し、愛しく思う者の思いが詰まっている。
少なくとも僕にはそう感じた。
「いいえ。楽しい日々です」
僕は安心させるように口角を上げてハドルヌス侯爵夫人を見た後、トリアが驚いたような顔して僕を見てにっこり微笑んだ。
「御祖母様!」
トリアが悲しそうに、愛しそうに涙を流しながらその胸に抱きついた。
二人はしばらくお互いの体温を確かめ合いながら愛おしそうに。
「さぁ 座って話をしましょう」
僕の御祖母様が二人に声をかけて、四人ソファーに腰を降ろした。
トリアは御祖母様と並んでぴったりくっついて手を握り合っている。
本当に御祖母様が好きなんだね。
二人にはまるで親子のような愛情を感じる。
「まずはトリアから聞いているかもしれないし、シャルルの事だからすぐに気付いたでしょうね。
今回の公女の接待は貴方達の相性や人柄が合うかどうかを見極める為に私が計画しました。
貴方達の性格上お見合いしなさいと言ってしまうと即拒否するのは目に見えていたからね。
それともしそうなった時にお互いを知っていくのはいい事だと思ったわ。
エリザベート殿のお話でシャルルにはヴィクトリアーヌ公女が合うと確信していたけれど。
どうお互いを意識し合うか心配だったわ」
大体そんな事だとはわかっていましたよ。
だって若い僕に年頃の他国の公女を接待なんて何があってもいいですよっていってるようなものですよ。
トリアは祖母を見ながらその肩に寄り添った。
その瞳にはまるで悪い事をして怒られそうな時に見せる申し訳なさと祖母への愛を感じるね。
「御祖母様の魂胆はすぐにわかりましたよ。
正直にお話しますと、二人でうまく縁談を回避する方法を探って計画していました。
ごめんなさい」
もう自白するしかありません。
御祖母様は苦笑いをしてトリアの祖母を見ている。
「でしょうね。
それで今の所結果は出たのかしら?」
余裕で御祖母様が笑っているのが謎です。
僕とトリアは顔を見つめ合い。
用意ドン!!
とばかり呼吸を合わせて声を出す。
でた言葉は同時だったが、明らかに真反対の回答だった。
「お受けします」
「お断りします」
次回はエルミエ皇后陛下のヴィクトリアーヌへの押しが強い強い。