ショックから目覚めたら……協議した結果
シャルルは邪魔と言われ、愛馬に置いてけぼりにされ、突然の接待を言い渡され、あげく愛馬同士のトラブル、そして極めつけに見合いを断れと言われ、放心状態に気絶してしまいました。
どうなるのでしょうか?
どうやら僕は気絶したらしい。
したらしいというのは意識がないので、らしいなのだよ。
しかも、気絶した後精神的にショックだったらしく。
このショックという僕は自覚がなくて。
三日三晩九度近い熱にうなされていたようだった。
と、目覚めた時に副執事長に聞かされたのだ。
三日目の朝に僕が目を覚ましたら枕元の近くで黒髪の女性が寝台に寄りかかってすやすや寝ていました。
睫毛が長くてクルリとした切れ長の目元はよく見るとチャーミングです。
年の頃は十六、七歳くらいでしょうか?
公家の傍流の令嬢らしく気品があります。
「だまっていたら可愛いのに……」
自然とぽろっと零れる言葉は本心。
眺めていたらふいに目を覚ましたようだった。
「おはよう」
思わず朝の挨拶をしてしまった。
彼女は少し戸惑った様に恥ずかしそうに小さな声で言った。
「おはようございます。
お医者を呼んでまいります」
そういって部屋を出ていった。
僕だけ寝室に取り残された。ぽつんと一人なんだかいつもとは違う変な感覚だ。
なんと表現したいいのか?不思議でそれでいていやじゃない。
そうこうしているうちに医者が来て診察を受けとりあえず大事ない。
ストレスだろうということだった。
ゆっくり身体を休める事、滋養の良い食べ物を取る事、しばらく静養を強いられてしまった。
熱は下がっていたし感染タイプの発熱ではないと言われたので、まずは副執事長と召使とヴィクトリアーヌ公女を寝室に呼んだ。
三人はすぐに僕の部屋に入る。
「しばらく静養になった。
副執事長と召使は公女様をもてなしてくれ。
ヴィクトリアーヌ公女様は例の件はしばらく時間がほしい。
それまでここに滞在してください
滞在中の事はそこの副執事長に申しつけてください」
「はいシャルル様」
「はい大公子殿下」
「ええ。わかったわ」
この状態ではよい判断は出来ないだろうと理解してもらった。
話のわかる方でよかった。
三人が立ち去ろうとした時副執事が僕に耳打ちした。
「発熱中公女様が寝ずの看護をされておいででございました」
僕は頷いて背中越しに公女に言った。
「ご迷惑をかけましたね。ありがとう」
公女はこちらは振り向かなかったものの耳が真っ赤でわずかに首が上下に動いた。
案外優しい性格なのだとこの時感じた。
それから一週間彼女の行動は副執事から報告を受けていた。
まずは朝晩規則正しい生活をしている事。
食後に朝の庭園の散歩、それから読書をして昼食、昼食後は愛馬で乗馬とたまに狩猟をして過ごし、
時にその獲物を夕方に出てくる。
再び読書を夕食前までして。食後は部屋でゆっくりしているとの事だった。
特に印象深かったのは副執事長の一言だった。
「概ね私達に無理を言うでなく。こちらの依頼も素直に受けてくださいます」
これは意外でした。
あの爆弾発言をした本人とは思えないし、概ね僕達にはしとやかでも使用人には横柄なのは普通だからだ。それほど身分差があるのがどこも普通だから。
これらの合間に愛馬のお世話もしているのでフランツとは仲良くなったそうだ。
副執事長と召使とは仲良くなり、フランクで飾り気がなく大変下の者にも横柄な態度は一度もないと感心している。
以前のあの物言いの女性とは別人ではないのかと思うほどの感想を聞かされている僕は困惑している。
七日くらい経ったある日居間で公女話す事にした。
緊張した様子で僕の前に座っているヴィクトリアーヌはあの人物と同じ都は思えない。
「話を整理して確認するが、皇命ではあなたの接待をするようにとしか承ってないのです。
つまり表向きはおもてなし。これは副執事長が言っていたのだがお見合いさせようとしているらしいつまりお見合いは無視していいようにも思う」
ヴィクトリアーヌは頭を上下に動かして同意しているようだ。
「私も父を通じて大公にこちらに伺うように。
シャルル大公子殿下と別荘で過ごし、交流するようにとしか聞いていません。
あまり乗る気ではありませんでしたが、こちらの地形が乗馬と狩猟に適していると聞き。
早めに訪問した次第です。
それとお見合いなら先に断ってほしいと存じまして」
どうやらお互い見合いといえば間違いなく断る前提を崩すための方便の策略らしい。
そうなるとその通りにするにもしゃくだ。
大事なのはお互いの外交問題にならないようにこの話を無難にこなし、そしていかにお見合いの話を回避するかが鍵になる。
僕は黙り込んで顎に手を当ててあれこれ思考してみる。
はっと思いつく。
「しばらくこちらで過ごし頃合いを見計らって体調不良になるのはどうだろう。
流石の風土に合わないとわかれば無理強いしないしね」
ヴィクトリアーヌがにっこりと安心したように微笑み。
「その手がありますね。
まあ精神的なものなら結果はでないから大丈夫でしょう。
お祖母様が悲しいむでしょうが。
しかたありません。私はお祖母様の期待に沿えません。自分を崩す事は出来ないのです」
???
「お祖母様?」
「ええ 今回の縁談はエルミエ皇后と私の母方の祖母であるハドルヌス侯爵夫人との間で進められたそう
ですよ。」
「へェ~初耳です。君確かアフェルキア公国の傍流の公女殿下だよね」
「えぇ。アフェルキア公国四代前の大公の弟の家系です。
確か大公子殿下の御高祖母様である故パルミラル皇太后陛下の姉君が私の御高祖母様です。
そのあたりで今回のお話が出たと思います」
「ふ~~んあの御祖母様ならやりそう」
なんせすることにそつがないし、意図があるので。
「しばらくは安心させるために行動を一緒にしよう」
ヴィクトリアーヌは最もだと思い納得して頷いた。
でた!
皇后の愛と復讐…それは 全てはこの日のために
エルミエ皇后の実の両親はアファルキア公国傍流の公子と母はパルラミル皇后の異母姉(大公と大公妃の妹の子)の子
つまり二人には血縁関係があります。
次回二人の関係に変化が