最終回 「氷の大公子」の氷が遂に溶ける?
楽しい狩りの時は終わりを向かえ遂にお別れの日が。
結局狩りの結果
僕は兎三頭 鹿一頭 猪五頭
トリアは兎五頭 鹿二頭 狐二匹 猪二頭
圧倒的なトリアの勝でした。
カイザーがかなり得意顔で走っています。
カイゼリンは不本意ながら素知らぬ顔をしています。
大人になったねカイゼリン。
なんでも言う事聞くよ。但し結婚はなしってのは無理だけど。
二人はテントに帰ると丁度御祖母様と御母様も戻っていて獲物が山積になっていました。
「ヴィクトリアーヌ
もしシャルルと結婚したらオルファン名馬に乗り放題ですわよ。」
これはものすごい殺し文句です。
ナイス御祖母様
僕らの獲物も列に並び狩猟は終了です。
もう空も夕暮れ時で別荘に帰る時間とても楽しい一日でした。
獲物はこの後別荘で解体されて使用人や村の人達に送られます。
肉、皮骨といろいろ使えるので重宝するそうです。
狩りは戦いの予備練習や趣味の他に増えすぎた害獣の調整と平民のたんぱく質補給という意味もあります。
御母様は父上の手前お泊り出来ませんその日のうちに帰宅しました。
さて僕の接待は明日で終了です。
ヴィクトリアーヌはアフェルキア公国へ帰国します。
寂しいようないや。正直寂しい。
最初はなんだこの人と思ったけれど、意外と優しかったり、しっかりしているようで脆い所もあって、強がりで弱がりで。なんだかほっとけないとか。
バランスの悪さが人間らしとこ。
結構僕と似てるとことか。
なんだか寂しいような……眠れない夜を過ごす事になりそうです。
翌朝和気あいあいと四人で朝食を済ませて最後の日を迎えました。
いや最後じゃない。
最後にするもんか。
と強く僕は決意する。
御祖母様と門まで二人を見送る。
馬車にトリアが乗り込む前に僕の方を向いて走ってきた。
「シャルル
狩りで負けた方が勝った方に言う事を聞くって懸けたよね」
「んン。したよ。僕は何をしたらいい?」
トリアは僕の前に近づいて、いや傍に寄ってきて。
「おでこにキスさせて」
言ったかと思うと僕のおでこに軽く唇をつけた。
ポ~~カンとして目が丸くなり、口は半開き。
トリアは顔が真っ赤になって、目は空を見ている。
僕は固まってそのまま動けない。
トリアは目線を僕に戻して、にっこりと満面の笑顔を向けてくれた。
こんなトリアは始めて見た。
可愛い心の底から可愛いと思った。
馬車に乗り込むトリアを脱がしてはいけない。
「トリア!待ってるから。僕待ってる。
待ってるから」
すぐに走ってトリアの馬車のドア越しにに告白する。
「好き。トリア好き。好き~~」
トリアは祖母を前に告白されて真っ赤だけど。
小さく頷いている。
さすがに恥ずかしいので僕を見てはくれないけど。
気持ちは通じている。
今はわかる。
「手紙を書くよ。遊びにもいくよ。絶対!」
御者は鞭で馬を叩く。
すると馬は鳴き声と共に足を前に出し馬車は動き出す。
「絶対行くよ」
「うん。うん。私も手紙を書くわ。」
大きく手を振って僕らは別れた。でも最後じゃない。
これは始まりの始まり。
僕達の始まりなんだ。
知らぬ間に泣いているらしい涙がポロポロかってに出てくる。
御祖母様が僕の肩を抱く。
「ヴィクトリアーヌに認められるようにしっかり成長しないとね。
それと離れてもきちんと交流しなさいね。あの子は素敵だからほっとくと他の人にとられちゃうわ。
お花や季節の贈物、手紙は欠かさない。
機会があれば会いにいきなさいね」
「ん。トリアは美人だし、きっともてるから。僕も相応しい人になります」
御祖母様は僕の頭を何度も何度も撫でてくれて優しく抱き寄せてくれた。
トリアの馬車は段々と遠くなる。
だけどこれは別れではなくて新たな始まり。
僕とトリアの新しい関係の始まりだ!
帰国した私ヴィクトリアーヌは屋敷に到着するなり、早速とお父様の書斎を目指します。
今日は一日書斎にいると執事長に聞いていたので。
今日こそは一言いってやる。
もう無視しない
我慢しない
良い子は演じない。
ノックなしで書斎の扉をドンと開ける。
「誰だ!ノックなしで!!」
お父様の怒鳴り声が聞こえるが無視だ。
「お父様。私が子供の頃御前がいなければ離婚していたと言った事覚えてますか?
勝手に人のせいにしないで!
今日から私はエルザベートお祖母様と暮らします。
お世話になりました」
いう事だけ言ってそそくさと書斎を出て私室に必要な物だけ詰め込んでさっせと玄関に向かいます。
廊下でお母様に会いました。
「お母様。
今日からエリザベートお祖母様と暮らします。
お世話になりました」
そう言ってスタスタ玄関口に向かう私の勢いに固まったのか母は待ってとも、さよならとも口にせず、微動だにもしません。
さようなら。
そういって待っているお祖母様の馬車に乗り込みました。
今日から正式にお祖母様の子になります。
勿論両親の同意はいりますが、元々アフェルキア公国公室ではお祖母様は引退したとはいえ一派を形成するほど実力者です。
大公に同意をとりつけています。
これからヴィクトリアーヌ・ディア・ハドルヌスです。
よし!
玄関口に馬車と太陽の光が私を出迎えてくれます。
シャルルに会う為に。
相応しくなるために。
古い私にさようなら
新しい私こんちにわ
新しい私明日から大公妃の侍女として宮仕えをします。
がんばります!
それからの僕は人付き合いも無難にこなすように気を配りました。
あまり過度にすると令嬢たちが勘違いするのでそこは壁を作りはしましたが。
段々と。
そのうち同い年の友達も増えていろんな交流をしています。
トリアとは文通を通じ今も連絡を取り合いお互い切磋琢磨しています。
ふさわしい人になれるように。
トリアは帰国後すぐにお祖母様と暮らしたそうで、お祖母様の紹介で大公妃の侍女をして宮廷生活を始めたと書いていました。
大変だけど宮廷生活は思っていたほど悪くない楽しいと書いてきています。
最近は同い年の友達も出来て、自分なりに年頃の女性らしくなったなと書いていたり、トリアらしく乗馬の話や狩りの話は楽しそうに書いていて。
読んでいるとこちらも楽しくなります。
そして今日僕は御祖母様のお使いでアフェルキア公国へ使者として訪問します。
トリアとは交流していたもののあれから会うのは一年ぶりです。
トリアは変わらず僕をいや、少しはもう少しは僕を更に好きと思ってくれているでしょうか?
それならいいのに。
僕は今トリアのいる大公妃の居間にいます。
花束を二つ
一つは大公妃様に
もう一つは勿論トリアに。
そしてここでプロポーズする予定です。
ドキドキの僕の心臓は今飛び出しそうな……
あっ先ぶれの声
来た~~~~。
「アフェルキア大公妃御なり」
完結
後日談
勿論プロポーズは成功して一年後二人は結婚します。
一男一女に恵まれて趣味の狩りでは
「狩りの邪魔はしないで」と叫ばれることにありますが円満な家庭生活を築きましたとさ。
短い連載でしたが、楽しんでいただけましたでしょうか?
ちょっとクールで正直に気持ちを現せない男女を描いてみました。
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ご愛読ありがとうございました。
また皇后の愛と復讐とそれは…全てはこの日のために いろいろ外伝これからの展開していきたいと思います。是非宜しくお願いいたします。