2021年11月9日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#9 ブランコ
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
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②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第10回目の今回は………
2021年11月9日放送。
妄想【愛の劇場】#9 ブランコ
奏と八巻シリーズの第九回目
ケンカをした。
居ても立っても居られず、外に出た。
八巻は、自分のマンションから少し離れた児童公園のブランコに座っていた。
最近の八巻は恋人の奏と、なかなか時間をつくる事ができない代わりに、電話で話をするのが寝る前の日課になっている。
仕事から家に帰り、軽い食事と風呂を済ませてから、奏へ電話をかける。
恋人の軽く弾んだ鈴の音の様な声は、疲れた八巻を癒やしてくれるが、いかんせん眠い。
奏の話をボーッとしながら聞き、なんとなく相槌を打つこともある。気が付くと、通話状態で朝を迎えてしまう事もある。
そういう朝は、恋人に申し訳ないとも思う。
ある日の電話中、奏が「会いたい」と言ってきた。
八巻の勤務先に近い喫茶店で奏が働いているので、常に会っているじゃないか、と八巻は思うのだが、改めて「会いたい」とお願いされた事が嬉しかった。
八巻は、奏と休みが合わせられたその日に、久し振りに昼間から恋人と過ごす選択をした。
秋らしいちぎれた雲が浮かぶ、日差しの柔らかい午後。八巻は恋人を自宅に招き入れる。
八巻の好きなクラッシックの音楽がゆっくりと流れるリビングで、奏と2人なんでもない時間を過ごす。
八巻にとって、これ程至極な時間はないだろう。幸せな時間だと思っていた。
「何も話してくれないのね」
奏は突然切り出した。
「何が?」
「ずっと黙ってる。本当は会いたくなかったんでしょ?」
八巻の問いに、奏は悲しげな表情で返してきた。
八巻は意味が分からなかった。会いたくなかったら、家などにあげたりしない。
奏は何が言いたいのだろうか。
「何で?」
「それよ!電話もそう。今日もそう。何で?何が?ふーん。へー。気のない返事ばっかりッ!!」
八巻の返しに不満があると言うように、奏は感情をぶつけてきた。
八巻には分からない。疑問に感じたから「何で?」と返しただけなのに、奏はそれが良くないと言う。
だからといって、奏の話に対して自分の意見を言えば、「八巻くんの意見が欲しかったわけじゃないの」と言う。
会話が八方塞がりになるのが八巻には分からなかったし、耐えられなかった。
「奏の話は聞いているし、その為の時間だって毎日つくっている。何が不満なんだ」
八巻も奏に感情をぶつけた。
「話を聞いて欲しいだけよっ!」
「聞いているじゃないか。だから、こうしたらいいじゃないかって話をするんだろ?」
「八巻くんの意見が欲しいわけじゃないのっ!」
まただ。じゃあ、どうしたら良いんだよ。
八巻はイライラし始めた。この解決に向かわない、気持ちの悪い会話が耐えられない。
ふいに、八巻は部屋から外に出た。
「どこに行くのよ」
「コンビニ」
奏の言葉に嘘をついた。
八巻は児童公園のブランコに座りながら、今日の不毛なやり取りを思い出していた。心が晴れない。今は奏の顔は見たくない。奏と出会ってから、こんな事は初めてかもしれない。
「ちょっと、おじさんっ!ブランコこぐなら、はやくしてよっ!」
ハキハキした声がした。八巻は声の主を確認する。
まだ、5歳くらいの女の子が、自分よりも小さな男の子と一緒に八巻の方を見ている。
「ブランコに乗りたいのかな、ゴメンね。すぐに退くからね」
ブランコから腰をあげようとした八巻。
「おじさん、ブランコは10かいよ。いっしょにかぞえてあげるから、はやくして!!」
八巻は女の子の勢いに負け、言葉に従った。ブランコの背中側を引っ張り上げてから、勢いよく地面を蹴った。
「うわッ!!気持ち悪いッ!!!!」
何十年振りに、水平半規管が刺激され、八巻は目眩を覚えた。
ブランコが前に進むと気持ち悪い。
ブランコが後ろに進むと気持ち悪い。
前に進むと……。
後ろに進むと……。
この繰り返しの中、女の子たちは大きな声で「いぃーち、にぃーい」と、カウントを始めた。
そして、八巻には長い時間に感じられたブランコタイムが、「じゅう!」のカウントでやっと終わった。
「おにいさんは、ブランコ終わり。さぁ、君たちの番だよ」
八巻は女の子たちに言った。
「つぎは、マーちゃんだよ」
女の子は、自分よりも小さなマーちゃんと呼ぶ男の子をブランコに乗せるが、マーちゃんは怖がってブランコに乗れない。
「マーちゃん、こわくないよ」
優しく声をかける女の子の姿を、八巻はブランコの近くにあるベンチに腰をかけて見ていた。
ブランコにマーちゃんが、恐る恐る乗る。
女の子は安心させるように、ブランコに乗るマーちゃんに声をかけながら、ブランコを揺らそうとするが、なかなか上手くブランコが揺れない。
マーちゃんが不安な視線を女の子に向けてくる。女の子は少し考えて、「おじさん!」と八巻に声をかけた。
「おじさん、ブランコゆらしてください」
不意のお願いに驚きながらも、八巻はマーちゃんの乗るブランコを、ゆっくりと揺らし始めた。
「いっかい、にぃかい」
八巻と女の子がカウントをしながら、ブランコは優しく揺れる。
不安な表情だったマーちゃんに笑顔が生まれた。
「じゅう!マーちゃん、つぎはねーねだよ」
女の子は、マーちゃんからブランコを譲ってもらおうとする。
「ねーね、だめ。マーちゃんがのるの!」
マーちゃんは、お姉ちゃんらしい女の子にブランコを譲らず、カンシャクを起こした。
イヤイヤしながら、マーちゃんは泣き始める。
2人のやり取りに困る八巻をよそに、女の子は感情をギュッ!と我慢して、マーちゃんの乗るブランコを今度は、彼女が自分で揺らしてあげようと、ブランコに手をかけた。
「マーちゃん、次はお姉ちゃんの番だよ」
八巻は、マーちゃんを説得しようと話しだした。
「マーちゃんは、10回乗ったでしょう?次は、お姉ちゃんが10回乗る番だよ」
もちろんマーちゃんには通じない。
「ブランコは10回でしょ?」
八巻の言葉に、マーちゃんのイヤイヤが沸点に達して、泣き出した。
「次はお姉ちゃんの番だから、マーちゃんはブランコから降りてね」
説得を続ける八巻と、泣き続けるマーちゃん。
イライラし始めた八巻と、じっと黙り込む女の子。
何で俺が、他人の子供の世話をしなくちゃならないんだ。しかし、放って置くわけにはいかない。昼間の児童公園になんて、来なければよかった。
後悔をしながら八巻は、何とかならないか?と考えるが、何も浮かばない。
「ごめんなさい!子供達がご迷惑を!」
「ママ!」
女の子が声を上げた。
八巻は、ママと呼ばれた女性の声の方へ顔を向けると、2人の母親らしい女性が小走りに近付いてきた。
「ママ!」
泣きじゃくっていたマーちゃんも、声を上げる。
八巻に対して、しきりに頭を下げながら、母親はまず、女の子を抱きしめた。
「りんちゃん、マーちゃんのお世話をありがとう。大変だったでしょう?いつも、ありがとうね」
りんちゃんと呼ばれた女の子は、緊張の糸が切れたのか、母親の腕の中で大きな声で泣き出した。
その姿に驚いたマーちゃんは泣き止み、ブランコから軽快に降りて母親と姉にしがみつく。
お家に帰ろうという意思表示だったのか、母親はマーちゃんも腕の中に抱き寄せ「帰りましょう」と、優しい声で2人を包み込んだ。
まるで、嵐のような時間だった。八巻は、消えて行く親子3人の背中を眺めていた。
マンションで、ひとり寂しくしているかもしれない奏を想像する。
泣いているだろうか。それとも、もう気にしていないよと、笑っているだろうか。
自分も、もう少し意思表示をしないといけないのだろうな。
曖昧な返事では、伝わらない事の方が多い。だから、不安にさせたのだろう。
奏は、話をただ聞いて欲しいのだ。寄り添って欲しいのだ。
以前はしてくれた事が、何故、今ではしてもらえないのか。
奏は、不思議に思っているのだろう。
しかし、常に奏の事を考えているのだから、寄り添っていると同じなのではないだろうか?
解決の糸口が見えない。
八巻は、奏の好きな甘い物をお土産に帰ろうと、本当にコンビニへ行ってから、奏の待つマンションに帰る事にした。
恋人に嘘をつく事はしない為と、ゴメンの意味も込めて。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
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妄想【愛の劇場】#10「アイドル」




