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女という生き物 1

 

(リョウ)ちゃん、ちょっとノインくんと裏の畑の柵を直してくるね。ついでにちょっと稽古してくるよ」

「うん、わかった。気をつけてね」

「コンコン!」

「ぽこー」

 

 (ジン)がカーベルトに下宿するようになり三日が経った。

 行方不明の召喚魔たちを取り戻したあとのフィリックスたちは、怪我人を病院に運び状況の整理を行い、徹夜したらしい。

 翌日はノインとレイオンが召喚警騎士団本部に赴き、署長を引き摺り出して叱咤を行ったそうだ。

 その次の日には貴族街の町長庁へ殴り込むかのように向かい、今度はスラムを潰すと議会決定した町長と議員たちを一喝。

 脅すようにスラム解体を先延ばしにすることを約束させた。

 まずは子どもたちの保護を行うということで、レイオンは自由騎士団(フリーナイツ)の本部に子どもたちを受け入れてもらえるように要請中。

 ノインは外出禁止続行のため、毎日暇そうにしている――と思いきや、新たな下宿生(ジン)(リョウ)とともに召喚魔法を教わっている。

 召喚魔との戦いの経験不足による敗北が、よほど悔しかったらしい。

 (ジン)は召喚魔法師学校で優秀だと聞いていたが、やはり一ヶ月程度の通学では知識不足を否めないため本当に初歩の初歩。

 それでも、なにも知らない(リョウ)とノインからすると十分すごい。

 

「オレもいい加減専属召喚魔と契約したいんだけど……ドラゴンは頭もいいし気難しい子もいるから、もう少し勉強してからの方がいいって言われて」

 

 と、(ジン)には(ジン)なりの悩みもあるらしいが。

 そんな二人だが昨日の昼からは(ジン)の予備の剣で、剣の稽古まで始めた。

 召喚魔法を(ジン)がノインに教え、ノインが剣を(ジン)に教えている――そんな関係だ。

 まだ二日目だが、二人とも真剣に頑張っているので純粋に応援したい。

 (リョウ)は勤務時間外は(ジン)が持っていた召喚魔法の本を読んで勉強を進めている。

 (ジン)たちを元の世界に帰すには、(リョウ)が送還魔法を使わなければならないので。

 翻訳補助があっても、やはり専門用語も多くてとても難しい。

 勉強に慣れていないと、これは放り出したくなる。

 

「リョウ、悪いんだけどちょっと留守番しててくれるかい? 二軒先の奥さんが産気づいてるんだって。様子見て病院につき添ってくるよ。もしかしたら遅くなるかもしれないから、食堂はこのまま閉めていいからね。お客もお断りして」

「わあ、大変ですね。わかりました」

「ノインがいるから大丈夫だと思うけど、レイオンさんは留守だし変な客には気をつけるんだよ」

「はい、わかってます」

 

 多分、(ジン)が拗ねるのはこういうところなんだろうなぁ、と思う。

 それは今朝のことだが、リータさんはレイオンの留守も「ノインがいるからまぁ大丈夫だろう」と言うのだ。

 (リョウ)にはいつものことなのだが、(ジン)は「ノインくんは本当に頼りにされているね」と唇を尖らせる原因になった。

 要はノインと違って(ジン)には実績がないから、リータに頼りにしてもらえない、ということに対する拗ね。

 こればかりは仕方ないようにも思うが、今の(ジン)には「もっと頑張らなきゃ」に繋がるこだわりらしい。

 早くリータに「ノインとジンがいるから大丈夫」と言われるようになりたい、ということのようだ。

 支度をしたリータがカーベルトから出ていったあと、外へ出て立ち看板を店の中にしまう。

 扉の札も『オープン』から『クローズ』にしようとした時、女の子が「ちょっと!」と声をかけてきた。

 振り返ると、見覚えがある少女と女性が二人ずつ……。

 

「あ……え、えーと……」

 

 同じ日に召喚されてきた、(ジン)の同級生と仮装していた中学生。

 そして、OL風のお姉さんたち。

 四人ともわかりやすく敵意を滲ませた表情で(リョウ)を睨んでいた。

 これは覚えがある。

 (リョウ)(ジン)と距離を置き始めた原因。

 

「ちょっと来て」

「す、すみません、仕事があるので……」

「いいから来いよ! すぐ終わるから!」

「っ……」

 

 これは逃げられないやつである。

 札だけ『クローズ』にして観音開きの扉を閉め、四人の後ろについていく。

 本当に、本当に、嫌だなぁ、と思いながら。

 次第に逃げられないように斜め後ろに(ジン)の同級生とOL風のお姉さんが一人、固めてきた。

 元々畑だった場所の荒屋に連れて行かれ、中に入るように言われる。

 これはかなりまずい。

 逃げ場がない。

 肩の二匹が臨戦態勢を取ってはいるが、四人とも腰や背中に武器を持っている。

 おそらく冒険者として登録しているのだろう。

 それでも町の中での武器使用は許されていないけれど。

 

(ジン)くん、いるんでしょ? アンタのところに」

「ええと……」

 

 いる、と言っても、いないと言っても結果が変わらないので濁した。

 いると言えば非難され、いないと言えば「嘘をつけ」と非難される。

 彼女らは難癖をつけたいだけなので、逃げ場はない。

 

「いるんだろ! この女狐!」

(ジン)くんの幼馴染だかなんだか知らないけど、ちょーウザい。なんでアンタみたいなのが(ジン)くんにひいきされるの? むかつく」

「魔力がないあなたにはわからないかもしれないけど、あたしたちは貴族街で貴族たちに薬盛られたり脅されたりしていつ強姦されるかわからないの」

「っ!?」

 

 なんだそれは。

 驚いて見上げると、OL風のお姉さんの一人、パーマをかけている方が険しい表情で「毎日貞操の危機よ」と吐き捨てるように言う。

 

(そういえばスフレさんのお母さんも……)

 

 貴族に『美しいから』と連れて行かれて、そのまま行方不明。

 彼女たちはアスカと同じ異世界人であり、後ろ盾のない状況。

 貴族の男からすると、囲ってしまえとでも思っているのかもしれない。

 召喚魔法師の学校ならば将来的に大多数が召喚警騎士団に入るのだろうし、その時に二属性持ちの彼女たちがいるのは都合がいいのだろう。

 そして、貴族たちにとって手っ取り早く彼女たちを手に入れるのなら手籠にするのがいい。

 確かに、それではとても女性たちだけで学校にいるのは難しいな、と目を瞑る。

 カップルもいたと思うが、彼女さんの方は大丈夫だろうか。

 なんて、自分そっちのけで言葉も交わしたことのない恋人同士の彼女を心配していると、「聞いてるのかよ」と低い声が間近で聞こえた。

 

「き、聞こえてます。でも、それを私に言われても困ります。あの、それよりも……」

 

 そうだ、これを機会に、元の世界に帰れることを彼女たちにも説明しよう。

 元の世界に帰れるとわかれば解放してもらえるし、彼女たちも貴族に追い回されなくて済む。

 それに、ノインとレイオンを紹介すれば貴族たちへの牽制にもなる。

 そう思って顔を上げた途端目の前にナイフを突きつけられた。

 脅しの距離とはいえおあげが肩で「しゃーー!」と威嚇する。

 

「それよりもじゃねーよ! (ジン)くんを返せ!」

「あ、あの、話を聞いてください!」

(ジン)くんはすごいの! 貴族たちも持ってない【竜公国ドラゴニクセル】の適性があって、あたしたちを守れるのは(ジン)くんだけなの! アンタが独占していいわけないじゃん!」

「ねえ、返してよ! あの宿にいるんでしょ!? 元の世界に帰れないのに、あんな場所にいられない! だいたい冒険者ってのも嫌なのよ! なんで怖い魔獣なんかと戦わなきゃいけないの!?」




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