作中最強のお助けキャラに転生するも、女主人公にストーカー扱いされた件~俺の事をわからないとか、つまりはお前(女主人公)、にわかかよっ!!~
久しぶりの投稿です。
リハビリであり、短編ですがプロローグみたいなものです。
「ようこそ、徳高き者よ。歓迎します」
老衰で死んだはずの自分が目覚めると、そこは楽園……天国としか言えない場所で、目の前には女神様としか思えない女性が立っていた。
「ふふふ、確かに私は女神ですし……ここは天界なのですが、あなたのような徳高き者にそのような目で見られると、少々恥ずかしくなりますね……」
「えっ? あっ、すみません。あまりにもここが美しくて、あなたが神々しかったものでして……」
「ありがとうございます。ですが私から見れば、あなたもまた……とても美しく見えますよ?」
そう言うと女神様は微笑み、私の頭を撫でてくる。
「さてと、色々と疑問もあると思いますが……あなたには今、二つの選択肢が存在します」
「二つ? それは察するに、このままここで過ごすか……輪廻へと送られるかでしょうか?」
「まぁまぁ、素晴らしいですね。少しだけ当たっていますよ? では今言った二つの選択肢ですが、一つはこのまま……この天界で過ごし、徳を高めて神へと至る道。もう一つは再びどこかの地上世界へ趣と赴き、そこで徳を高める道ですね……」
「ふむふむ、なるほど……それは両方とも素敵な道ですね。ですがその、私はあくまでも普通の人間です。そんな私が徳を積んでも、神へは至れないと思うのですが?」
確かに私は、なるべく人を助けられるような生き方をしてきたが……それでもこのような選択ができるほど、素晴らしい人間ではなかったと思う。
「ふふふっ、そこでそのように答えられ……考えられるという時点で、あなたが素晴らしい人間だという証なのですが……」
「誉めていただけるのは嬉しいですが、自分がそのように素晴らしい道へと進める権利は……未来があるにも関わらず、閉ざされてしまった子供……つまりは病気や事故などで死んでしまった、不幸な子供に与えて欲しいです……」
私は本心からそう思う。
このようなじじいではなく、輝かしい未来とは子供にこそ与えられるべきだと。
「うーん、そうですねぇ……ではこうしましょう、あなたが子供の頃に大好きだったゲームのキャラに……例えば『ルーク』になれると言えば、興味をもってもらえますか?」
「っ!? るるる、ルークにですかっ!? それはつまり……あの世界に、あのゲームの世界に行けると!?」
「えぇ、もちろんです。それにようやく……老衰で亡くなったあなたではなく、魂となったあなたの言葉が聞けたようですね?」
「あっ……これは失礼しました。ですがそうですね、確かに先程よりも、心が……精神が、若い頃のように漲っている気がします……」
実際先程までの自分ではなく、まるで先程伝えられたゲームを遊んでいた当時のような……そんな子供の頃のような、ワクワクやドキドキで胸がいっぱいになっている。
「そしてもう一つ、あなたが気がねなくその世界へと赴けるように話をしましょう」
「少し待ってください、先程は確か……あなたはこう言っていたはずです。このままこの天界で過ごして徳を高めるか、地上世界で徳を高めるかと。つまりは私には、このままこの世界に残る選択肢もあるのでは?」
「まぁまぁ……まぁまぁまぁっ、残ってくださるのですか? それはとても……とてもとても嬉しい選択です。ですがその、昔はそちら一択だったのですが……昨今増えてきた転生物? という物語のせいか、この世界ではなく転生を望む者ばかりなのですよ……加えて言うなら、その転生と言うやり方じたいが……その物語を読んでいた者たちが望み、新しく作られた制度なのですがね?」
「な、なるほど……そういうことでしかたか。つまりは最近では、その転生を望む者しかいないために……選択肢として提示しつつも、除外していたわけですね?」
「その通りです。ですが今回に限っては、実は私も……転生を選んでいただきたかったりします」
「それは何故?」
「先程の話に戻るのですが、あなたが転生を望むとしたら……先程言ったルークになると思います。そして実は先程ですが、その世界に主人公として転生をしたいと望む少女がいまして……彼女の助けとなってほしいのです」
「な、なるほど……そう言う理由ならば、否と答えられる訳がないですね。ルークが存在すると言うことはつまり、その世界はエクストラハードに近いはず。成長の仕方や選択肢を少しでも間違えれば、あのモードは詰みますからね。是非もなしと言うやつです……ルークへ転生をお願いします」
「ありがとうございます。では早速、ルークとして転生させます。同時にあなたは神への修行者……つまりは天使のような者になります。そしてあなたの担当は、このまま私です。上司のようなものとなるので、報連相があればメッセージを飛ばしてくださいね?」
「了解しました、では行って参ります」
「えぇ、あなたの二度目の人生に幸あれ……」
こうして私はルークとなり、大好きだった世界へと降り立つのだった。
「ここは……? 街の中のようだが、どの街だ……? いやいら、ルークとして転生したらならば……最初にルークが主人公と出会うシーンのはず。って、それはそのまま主人公の大ピンチってことだろ!?」
『カンカンカンカン』
「モンスターだっ! モンスターの大軍だぁぁぁっ!!」
「避難所へ急げっ! 逃げ遅れたら死ぬぞっ!!」
『カンカンカンカン』
「とりあえずは状況の確認だ。この街で一番高いところ……って、まどろっこしい。とりあえずは屋根にのぼって、そこからジャンプすれば見えるだろっ!」
まだステータスなどは確認していないが、女神様は確かに自分をルークへと……作中最強のお助けキャラである、ルークへと転生させると言った。
ならばその力は主人公以上……なにも恐れることはない。
「んじゃま、路地裏からジャンプして……っととと、軽く力を入れただけでこの高さ。さすがは最強キャラってやつだな?」
軽い気持ちでジャンプすると、視界は一瞬で屋根の上へ。
そのまま外壁へと走りながら、まずはステータスを確認する。
「ステータス」
この世界がゲームだった頃ならば、思考操作でもステータスは開けた。
しかし今は確実に表示するためにも、あえて口に出して表示する。
「どれどれ? うん、確かにルークに転生できてるし……ステータスも同じだな。それにスキルも変わらないし……っと、これが女神様が言っていた……連絡手段かな? 後で試そう」
ステータスと口に出しで現れたのは、半透明の板のようなものであり……そこにはこのように書かれていた。
────────────────────────────
名前 ルーク
性別 男
種族 ???
年齢 ???
HP ───
MP ───
攻撃力 9999
防御力 9999
速力 9999
魔法力 9999
運 9999
所持スキル
心の心得 技の心得 体の心得 魔の心得 人の心得 報連相
────────────────────────────
「戦闘用のスキルは戦いながらでも確認できるだろうから、補助系や特殊系を先に試そう……まずは、フライ!」
そう口に出すと、足が地面からはなれ……体が空へと浮き上がる。
「んじゃ次は、テレポート!」
次にそう口にすると、視界が瞬時に変わり……外壁の上空へと切り替わる。
「これも成功か。って、もう戦闘始まってるじゃん!? 幸いなのはまだ……死人が出ていなさそうなのと、敵の本隊がまだ到着していないことだな……」
上空から見渡していることで、戦場すべてを俯瞰している今。
ここらなら確実に、味方全員へとバフをかけた上で……敵にはデバフをかけられるはず。
「んじゃやりますか……範囲と対象を味方に指定して、神の祝福……今度は敵を指定して、女神の悪戯と悪神の誘惑と弱体化を附与っと。これで味方に死者はでないはずだし、敵をかなり弱ったはず……」
味方にかけた神の祝福は、全ステータスを上げるだけでなく……死亡時にそれを無効とし、安全地帯へと転送する。
そして敵にかけた女神の悪戯は、敵の運を大きく下げ……悪神の誘惑でこんらん状態をあたえ、弱体化で全てのステータスを下げた。
「って、ちょっと待て……主人公たちが見当たらない? まだ到着していないのか? それとも、もうやられている……? いやいや、さすがにそれは無いはずだ……って、こう言う時はこれだ……サーチ!」
サーチの魔法は、指定した対象の居場所を探してくれる。
現状自分には主人公の情報が……転生した少女の情報がまったくないが、唯一知っていることがある。
そう……少女が主人公に転生しているならば、必ずその職業についているはず。
すなわち……勇者へと。
「いたいた、反応発見。って、この場所は……敵の本隊近くぅっ!? バカなのか!? 転生少女はバカなのか!?」
このゲームが自分の想定通りなら、難易度はエクストラハードであり……このイベントはかなり序盤に起こる、いわゆる負けイベントなのだ。
具体的に言うならば、○ターン生き延びろと言うものであり……つまりはルークが来るまで生き残ることが勝利条件。
ルークが現れた時点で、先程自分がしたような支援……つまりはバフとデバフが入り、ようやく敵と勝負になるようなり……敵が撤退するターンまで、レベル上げができると言うステージなのだ。
にも関わらず、主人公たちは敵の本隊近くにいる。
「待て待て待て、ちょっと待て。このステージをスキップするには、事前の選択肢で正解する必要がある。本隊を先に叩くために、主人公パーティーだけで敵の本隊がいるだろう場所を選択……そこへ斥候を出して確定させ、突撃して殲滅する」
しかしこれは、このゲームを本当に知っているプレイヤーならば……絶対にとらない選択肢だ。
何故ならルークの初登場イベントはレベル上げに最適なため、スキップする意味がない。
その上敵の本隊は、レベル上げで戦う敵とは別格の強さを誇る。
しかしこれがエクストラハードではないのなら、敵の本隊は倒せないレベルではない。
だが、ルーク……つまりは自分がいると言うことは、この世界はエクストラハードルート確定だ。
何故ならルークが登場するのは、エクストラハードだけであり……先程の戦場で戦っていた敵の強さも、エクストラハードの敵と同じだった。
「ってことは何か? このままだと確実に、主人公たちは殺されて……この世界はゲームオーバー? けど今は、ゲームじゃなくて現実な訳で? ゲームオーバーってことは、そのまま世界滅亡かよ。ふざけんなぁぁぁっ!!」
フライの速度を上げ、全力で主人公たちの所へかっ飛ばす。
「間に合え間に合え間に合えっ!!」
俺はサーチの魔法でとらえた反応めがけ、全力を出すのだった。
side 転生少女
「どうやらまだ、気付かれていないようですね……」
パーティーの頭脳たる魔法使い、オズがサーチの魔法で確認する。
「当たり前でしょ? アイテムで姿を隠してるし、気配だって消えてるはずだもの」
転生者にして主人公。
女勇者ショウコが胸をそらし、自分が買ってきたアイテムの効果を自慢する。
「でもよ? 奇襲が効果的な作戦の一つだってわかってはいても、なーんか卑怯な感じがするんだよな……」
パーティーの壁……タンクである騎士、デオがそう言い……不本意そうなしかめっ面をつくる。
「いいえ、卑怯などではありませんよ? 敵はモンスター……つまりは神敵です。神の敵を倒すことに、正義以外は存在しませんっ!」
そのデオの言葉に対し、過激な発言をしたのはエル。
パーティーの回復をつとめる神官であり、教会から勇者であるショウコのサポートとして派遣されている。
「っと、そろそろですよ。後少しで狙撃ポイントです」
「あいよ、んじゃ準備に入るぜ?」
「では僕は、全員にリジェネレートを……」
「私はアタックアップを……」
「私はいつも通り、勇者の加護を……」
「そんで俺は、ディフェンスアップをっと」
それぞれが奇襲前の準備を行い、配置につく。
「ではいきますっ! ファイアーレインっ!!」
オズが呪文を唱え、敵陣に炎の雨を降らす。
「おらおらっ! 全員まとめてかかってきなっ!!」
続いてデオが楯を鳴らし、敵のヘイトを自分に向ける。
「邪悪なるモンスターよ、聖なる光で浄化されなさい! ホーリー!!」
デオに敵の注意が向かった隙をつき、エルの光魔法が敵を包む。
「さすが皆。それじゃあ私も……ブレイブスラッシュ!!」
勇者の標準技である、飛ぶ斬撃をショウコが放ち……敵陣で大爆発が起きる。
そのまま周囲に爆煙が広がり、敵の視界か奪われたことを確認した四人は、そのまま距離を詰めるために走り出す。
「ブヒヒッ、わかっている奇襲は……奇襲とは言わないんだなぁ」
「「「「!?」」」」
四人が後少しで敵陣に突入する距離まで近づいた時、敵陣から声が響き……風が吹き荒れる。
同時に爆煙が晴れると、そこには無傷の敵たちがおり……中央には敵将であろうオークがいた。
「そんなバカな!? 無傷だなんて!?」
「僕の魔法が防がれたなんて!?」
思わずオズとエルが叫び、致命的な隙を見せる。
「ナイトハウルっ!!」
その隙を埋めるために、デオは再びヘイトを集め……同時に飛ばされた敵からの攻撃で地に伏せる。
「そんなっ、デオ!?」
デオが一瞬で倒されたことにショックを浮けたショウコは、敵から目を離して駆け寄ってしまう。
「戦場をなめてるブヒか? 隙だらけブヒよ?」
「がっ、はっ」
敵将だろうオークが、ショウコのことを蹴り飛ばす。
「「ショウコっ!!」」
蹴り飛ばされたショウコは、地面を数回バウンドし……意識が絶え絶えになってしまう。
「弱い、弱すぎるブヒ。これが勇者? 笑わせないでほしいブヒ」
オークがブヒブヒ笑い出すと、まわりのモンスターたちも笑い出す。
「僕はショウコを回復するから、オズはデオをショウコの近くにっ!」
数秒動けないでいたエルだが、はっと気付くとオズへ指示を出す。
「わ、わかった……出し惜しみせず、テレポートを使うっ!」
オズはその言葉で我に返り、エルをショウコのところへテレポートさせ……続いて自分とデオをショウコのところへテレポートさせる。
「テレポートが使えるブヒか、レベルだけはそこそこあるようブヒね?」
ブッヒッヒとまた笑い出したオークたちだが、ふと良いことを思い付いたとばかりに提案する。
「弱すぎるお前たちに、慈悲をあげるブヒ。お前たちの中から一人だけ、助けてやるブヒよ。今から三秒数えてやるから、一斉に指を指すと良いブヒ」
そう言い放つとオークは、指を一本ずつ立てていき……三秒数える。
「ブヒっ、ブヒヒヒっ! 愚かブヒなぁ?」
結果は三人とも、勇者ショウコを指差していた。
その結果を見て、更に笑い出すオークたち。
「何がおかしいっ!?」
「勇者を逃がすのは倫理的に当然でしょう!?」
「ショウコを選んで何が悪いんだっ!?」
三者三様に怒りを見せ、三者三様に叫ぶ。
「笑うなと言う方がおかしいブヒ。いくら勇者とは言え、この場で一番弱い者を選んだブヒからなぁ?」
オークたちは笑いをやめず、そんなオークたちを回復したショウコが睨む。
「威勢だけは良さそうブヒが、睨むだけじゃ何も変わらないブヒよ?」
四人が悔しさに涙を流す。
その時だった、オークの後ろから悪魔としか言えない男が現れる。
「まぁまぁ、まちたまえ。さすがに弱くとも、勇者を見逃す手はないだろう?」
「「「「っ!?」」」」
悪魔がそう口にし、ショウコたちに目を向ける。
たったそれだけでショウコたちは、息もできないほどのプレッシャーにおそわれる。
「あぁ、すまないすまない。この程度すらダメだったか……これならば確かに、君の言うように逃がしてしまった方が面白いかもしれん」
そう言うと悪魔は、オークの方をポンポンと叩く。
「ありがたきお言葉」
そう言ってオークは、悪魔へとかしずく。
「ちょ、ちょっと待って? そのオークは将軍じゃないの……? いいえ、将軍じゃ無いとしても……名持ちじゃないの?」
ショウコが指摘したのは、モンスターの階級についてである。
モンスターには種族によるランクと、レベルによる強さが存在する。
しかし、そこに加えて名持ちかどうかと言う特殊な分類が存在し……モンスターは名持ちとなることで、名持ちとなる前の数倍~数十倍強くなるのだ。
「ブヒっ? ブーヒブヒブヒっ」
ショウコがそう聞くと、モンスターたち全員が再び笑い始める。
「勇者が名持ちに関して知っているのは驚きだが、残念ながら私もこいつも名を持たぬ。と言うよりも……今回動かされたものたちの中に、名持ちは一人もおらぬよ」
「えっ?」
悪魔が告げたその言葉に、ショウコは絶望する。
何故ならそれが意味しているのは、単純なレベル差だけでこれだけの開きがあると言うことだからだ。
「理解してくれたかな? では約束通り、勇者以外はつれてい……」
「ちょーーーーっと待ったぁぁぁっ!!」
ズドンと言う音と共に、その場になにかが落ちてくる。
それは人間の……中年の顔をしており、その顔は最近ショウコをつけ回していた……ショウコの知らないキャラであった。
side end
なんとかギリギリで間に合ったようだ。
それが俺の最初の感想だった。
何故なら勇者パーティーであろう四人は満身創痍で、敵であろうモンスターには傷一つなかったからだ。
「って、勇者パーティーよっわ……弱すぎて弱すぎて何も言えんわ」
ルーク初登場イベントをスキップするくらいなのだから、さぞ強さに自信があるのだと思っていた。
転生者が少女と聞き、イベントをスキップしたバカだとわかっていても……少しだけ期待していたのだ。
もしかしたら転生チートで、どうにでもできてしまうのではないかと。
「その結果がこれかぁ……最悪じゃん」
先程バフとデバフをかけてきた戦場程度の戦力差ならば、敵のモンスターと勇者パーティーに同じようにバフとデバフをかけて……勇者パーティーに倒させることができた。
しかし、鑑定で見た勇者パーティーの平均レベルはたったの40。
敵であるモンスターたちの平均レベルは80である。
「これはさすがに無理ゲーだし、トドメだけささせる介護プレイは……双方のプライド的にもあれだろうし、今後の影響的にも無しだろう」
戦場のど真ん中で……それも勇者パーティーとモンスターたちとの間に立ち、ブツブツと呟き続けている俺を見て……両陣営は戸惑っているようだったが、俺はそれを無視して考えをまとめる。
「んじゃそゆことなので、モンスターたち……ここは引いてくれないかな?」
俺は今日の天気をたずねるように、軽くモンスターたちへと声をかける。
「はっはっはっ、いきなり現れたと思えば……言うに事欠いて引かないかだと? 笑わせてくれるっ!」
俺の言葉に怒ったのか、モンスターたちからプレッシャーが放たれる。
「んー……今のは敵対行動って認識して良いのかな? それともただの威嚇? 弱い犬が吠えただけってことに、今ならまだできるよ?」
どこまでも落ち着いた、平常通りの俺を見て……モンスターたちは更にプレッシャーを強めてくる。
「そっかそっか、仕方ないかなぁ? それじゃあとりあえず……死んどけ」
俺はスキル、死の眼のレベル1を発動。
敵対行為をしてきたモンスターたちへ視線を向けると、対抗できなかったモンスターたちが一斉に倒れる。
「んー、意外と残ったね? それじゃあもう一度……引いてくれない?」
先程と同じ問いかけ方だが、今度はプレッシャーも同時に放つ。
「「「「っ!?」」」」
しかし今度は先程と違い、モンスターたちはその場で尻餅をつく。
「へーんーじーは?」
その姿を見た俺は、再びモンスターたちへ問いかける。
「わ、わわわ……わかった」
「よろしい。んじゃさようならっ!」
引くことに同意したモンスターたちへと、俺はリターンホームの魔法をかける。
その魔法の効果によって、モンスターたちは自らのホーム……つまりは魔王城へと送られたはずだ。
「さてと、終わったよ。君たちも一緒に帰ろう?」
俺は勇者パーティーへそう告げると、彼女たちを完全に回復させ……フライをかける。
「あぁ、ちなみにだけど……兵士たちはもう勝ってる頃だよ。だから兵士たちと合流して、凱旋だね」
フライでの移動中、俺は勇者パーティーへと声をかける。
「「「「…………」」」」
しかし、勇者パーティーからの返事がなく……俺は振り返って確認する。
「って、気絶してるじゃん!?」
どうやら勇者パーティーは、俺の出す速度に恐怖を覚え……気絶してしまったようだった。
「仕方ないけど、外壁の手前になったら起こせばいいか……」
俺はそう呟くと、勇者パーティーを寝かせたまま……フライでの移動を続けるのだった。
side ショウコ
「と言うわけで、戦いに疲れはてたようだった彼女たちを送り届けてきたわけです……」
「なるほどなるほど、そう言うことでしたか……感謝いたします」
「んっ、んんぅ……」
誰かの話している声が聞こえ、目が覚めてくる。
「どうやら目が覚めたようです。では眠気覚ましに……リフレッシュ」
誰かわからない声が二つ。
その片方が自分にリフレッシュと唱えた瞬間、私の意識ははっきりと目覚める。
「……はっ、ここはどこ? モンスターたちはっ!?」
「ここは砦です。こちらの方が、勇者様たちを運んでくれたそうですよ?」
目覚めて最初に目に入ったのは、石の天井。
同時に私を覗き込む人の顔が見え、よく見るとそれは……私達を送り出してくれた、総隊長のものだった。
「おはようございます、勇者様。お気分はいかがですか?」
「悪くはない、と思うけども……あれ? 私達はたしか、モンスターの本隊へと奇襲を……」
そう、そのはずだ。
私達は高価なアイテムを使い、モンスターの本隊へと奇襲をかけた。
確かそこで負けそうになって、負けそうになって……? それから何があったんだっけ?
「やはり混乱しているようですね、どうやら勇者様はあの場にて……仲間が倒された怒りから、暴走してしまったそうなのです……」
暴走、暴走……そうだっただろうか?
「しかし、その暴走させた力によってモンスター本隊を殲滅し……力を使い果たして倒れていたところを、この旅の方が発見……ここまで連れてきてくださった訳です」
「そう、そうなのね……ありがとう、旅の方……って、あなたはっ!?」
「どうも初めまして、私……ルークと申しま」
「街中で私をつけてたストーカーっ!!」
「へっ?」
助けてくれたと言う旅の男の顔を見て、私は思わず叫んでしまう。
何故ならその男は数日前から、私の事をこそこそつけ回し……観察するように見てきていた男だったからだ。
「ちょちょちょ、待った待った! 何か誤解されてるような!?」
「いいえ、誤解でもなんでもないっ! 数日前から私の事を……つけ回しで観察してたでしょ!? そう言うのを私の故郷で、ストーカーって言うのよ!?」
ストーカーに慈悲などいらない。
「助けてくれたのは本当かもしれないけども、あなたが私をつけ回していたのもまた事実。だから隊長さん、この人を今すぐ捕まえてっ!!」
私は隊長さんへと指示を出すと、男の方へと走り出す。
「なんでこうなる!? 俺はルークだぞ? この名前がわからないのか!?」
「おあいにくさま、そんなキャラは知らないわ! って……その言い方、あなたも転生者なの!? ますます逃がせないわね……確保ーっ!!」
私はルークと名乗る男を角まで追い詰めると、じりじりと詰め寄っていく。
「あぁもう、仕方ない……一時撤退だっ! ワープ!」
「えぇっ!?」
後一歩のところで男にワープを唱えられ、私は男に……ルークに逃げられるのだった。
side end
「と言う訳なんですが、彼女は本当に……この世界、このゲームを知ってるんですか? 知った上でこの世界の主人公に転生したんですか?」
勇者から逃げた俺は、そこそこ高い……鍵付きの個室がある宿で、女神様へと連絡を取っていた。
「もちろんですよ。ですが、少しあなたの認識が違います。何故なら彼女は、ショウコは自分を……乙女ゲー? の主人公と認識していますからね……」
「はっ? はぁっ? 乙女ゲーというのは、あの乙女ゲーですか?」
乙女ゲー……つまりは女性向けのギャルゲー。
しかしおかしい、私が大好きだったこの世界……このゲームは乙女ゲーではなく、ファイ○ーエ○ブレムのような……シミュレーション系のゲームのはず。
「あぁ、そこが勘違いの根本でね。確かにこの世界はそのゲームと同じ世界なのですが、彼女が望んだのは……そのゲームのキャラクターを使って作られたリメイク? のようなゲームで、そのゲームが乙女ゲーなのですよ」
「? ……?? はぁぁぁっ????」
まさかそんな、あのゲームのキャラクターを使った乙女ゲーなんて……私の前世に存在したのか?
「んーと、あなたが知らないのも無理ないですよ。確かえっと、アプリゲー? とか言うやつの……かなり最近のやつですからね」
「それは確かに、知るはずがないですね……」
病院でゲームと言えば、主にリバーシや将棋やチェスだったし……乙女ゲーなど見向きもしていない。
だがしかし、それでもルークを……最強のお助けキャラを知らないなんて、そんなことが?
「あぁ、それなら簡単です。その乙女ゲーで、ルークは実装されてないからですね」
「なんですとぉっ!?」
何故? ワット? ホワイ? どうして?
「だってスマホゲーですよ? 作中最強のお助けキャラでも、プレイアブルになるわけで……そんなのゲームが壊れちゃいますよ?」
「た、確かに……」
その通りだ、つまりはルークが実装されてしまうと……もうルーク一人でいいんじゃね? 状態になってしまう。
「なので彼女はルークについて知りません。そして先程言ったように、乙女ゲーだと思っています……」
「なるほどなるほど、そう言うことですか。ですが女神様、私さっき……彼女にストーカー認定されてしまったのですが?」
「まさかこんなことになるとは、私も思っていませんでした。なので彼女の方には後で、あなたがストーカーでは無いことを伝えておきますね?」
「よろしくお願い致します。では今回はこの辺で、また何かあったら連絡します」
「彼女のこと、よろしくお願いします……」
「もちろんですよ、主人公を助けてこその……お助けキャラですからね?」
女神様にそう伝えると、俺は女神様への通信を切る。
「それにしても、乙女ゲーか……そっかそっか、なら仕方ない……何て誰が言うかっ! ルーク知らないとかにわかかよっ!!」
気に入ってもらえたら、ブクマやいいねやポイントをお願いします。
また、感想もどしどし募集してます。
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