愛の行方 1
藍には旭の家の玄関は広く田舎の祖母の家を思い出させた。キョロキョロ見回す藍の様子が旭には面白くてからかいたくなる。
「この家を気に入った?」
「はい、懐かしいです」
「じゃ、一緒に住む」
「先生、その冗談まだ続きますか?」
旭は藍の怒った顔が可愛く感じて笑ってしまう。白藍の姫の全身で表現するのは少しも変わっていない。生まれ変わっても性格は残るものだと思った。実際、旭自体も変わらず白藍の姫を愛しているからだ。
「先生、何笑っているんですか?」
「カラカイがいがあるから」
「もう、仕事モードになっているのにやめて下さい」
「悪い。じゃ、こっちが書斎」
旭の後をついて行くと図書館みたいな書斎を見てびっくりした。参考資料としての本や好みの小説を色々と揃えていた。藍が好きな小説ばかりでテンションが上がっていた。
「先生ここは宝の山ですね。私の好きな本ばかりです。絶版の本もある。これ読みたかったんです」
「そう、好きな時に来ていいよ。好きに本を読むといい」
「本当ですか。嬉しい。あ、仕事忘れてしまうとこでした。あの最終話の小説は?」
旭は奥にある大きい机のパソコンの横からプリントアウトした原稿を取り出し渡した。受け取った藍は近くにある椅子に座り読み始めた。そんな藍をパソコン越しに座って見ていた。ずっと見ていられると旭は思った。現に読み終わるまで見ていた。
「先生凄いです。悲劇だけで終わると思ったのに、次に繋がる望みがあります。この続きは?続編ありますか?この次は続編を連載しますか?」
「まあ、落ち着いて。この続きは書かない」
「えー!勿体ない」
「これは作者が決めてもいいよね」
「まあいいですけど。でも読みたいです。この続き」
「ありがとう。でもこの続きを書かないのは読者に考えてほしいから。決めつけずに自由な発想で想像してほしい。僕が考えた作品だけど読者にも考えて自分だけの物語にしてほしいと思っているから、続きは読者の心が書くものです」
「へえー凄い。先生の作品が人気なのは、そんなところなんですよね。私も好きです」
「もう一度言ってください」
「先生の作品が人気なのは」
「じゃ、なくて。最後の言葉」
「私も好きです?」
「何で質問になるの」
「先生それ趣味悪いですよ。そこだけ抜き取って聞き出すの、親父っぽい」
「親父って!」
「嘘嘘、冗談です。本気になって怒っています?案外、子供なんですね」
「そう子供かもね」
旭は藍を立ち上がらせ本棚に寄せて体で逃げ道をふさいだ。ゆっくりと藍の唇に旭の唇が近づいた。時間が止まったように藍は動けなかった




