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旭は藍の顔を見ると白藍の姫が手の届く所にいる喜びを感じた。このまま離したくない帰したくない欲望が湧いてくる。だがこの手にした途端、消えてしまうのではないかと臆病にもなった。
「先生のお家は都心の一軒家なんですね。作家さんの家は都心でもマンションの人が多くて」
「ボロ家だよ。でも僕はこの古民家を気に入っている。祖父から受け継いだ家なので大事にしたい」
「古民家って言っても大きなお屋敷ですよ。羨ましい」
「じゃ、一緒に住む?」
「え?もう先生。冗談やめてください。本気にしちゃいますから」
「本気だよ」
「え、先生そんなキャラでしたか。イメージ変わりますよ」
「僕って、どんなイメージ持っているの?」
「えーと、クールでイケメンで何事にも動じない。それに落ち着いて爽やかで」
「へえー、じゃ今の発言でどう思った」
「えーと、ちょっとチャラいかな。なんか気をつけろって感じ」
「何?それ、何に気をつけるの?」
「先生にはまってしまいそうで怖いので」
「僕はそんなに怖い?」
「じゃなくて先生に夢中になることが怖い」
「大林さんは夢中になってくれないの?」
「編集者としては先生の作品に夢中になっていますが、その~恋愛感情はありません。それに私には彼がいますし」
「そうか、彼がいるのか。でも結婚していませんよね」
「結婚はしていませんが、私は先生より5才も上なんで、私は年上が対象で年下はタイプじゃあないんです」
「恋愛に年って関係ある?」
「え、先生はないんですか?」
「僕は好きになった人がタイプなんで」
「じゃあですよ。私がおばあちゃんでもその言葉いえますか?」
「いえるよ」
「もう先生、からかわないで下さい。それうけませんよ」
藍は笑ってごまかした。冷たい影のある印象が藍の感じる旭だった。実際に会って会話をしてみると印象とは正反対な積極的で熱を持った旭が新鮮に感じた。新しい作品が次々と書けるのは意外な一面を持つからだと思った。藍は旭の新作に期待が止まらなかった。
「先生、連載作品の明日のひかりの最終話は締め切り間近ですが、進んでいますか?」
「上手く話を切り替えるね。さすが永田さんが僕に薦めた編集者だ。もう出来ているから今持って帰る?」
「え、いいんですか?さすが先生です。まだ3日もあるのに」
「じゃ、やっぱり3日後にメールで送るよ」
「いやいや、出来ているなら遠慮なくいただきます。今見てもいいんですよね」
「うん、それじゃ入って」
「はい、お邪魔します」
藍は車を旭の家の大きなガレージに止めた




