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7 コレクターは語りたい

 社会人になって間もない頃、当時はバス通勤をしていて車窓から見える古書店がいつも気になっていました。

 その古書店は開店してから間も無くて、看板には古銭の文字が。


 父親が古銭や記念コインを集めていた影響もあって、当時の自分も記念コインや古銭を趣味程度に集めていたのです。

 余談ですけど、今の記念コインは普通に金貨・銀貨が多いですね。

 金額も額面以上なので、素敵なお値段だったりもしますけど。

 なので、現在はコレクションをほとんど手放して集めていません。


 それはさておき。

 その気になっていた古書店に会社帰りに寄ってみる事にしました。

 恐らく、今だったら絶対に入らないだろうなって感じの店構えと店主の風貌でした。

 その当時は若さもあって、好奇心が上回ったのでしょう。


 店自体は開店したばかりで小奇麗だったのですが、古書店という割にはあまりにも本が少ないし、どうでもいい様な本ばかりでした。

 店主は、スキンヘッドで口ひげの厳つい男で、場違いな若造が何しに来たんだと、あからさまに不信感を出していました。


 普段だったら、そこでさっさと失礼する所ですが、古銭が気になって仕方が無いお年頃。

 思い切って店主に古銭の事を聞いてみたのですよ。

 すると、店主が一瞬驚いた顔をした後にニッコニコの笑顔になるじゃないですか。


 よくぞ聞いてくれた! みたいな感じでコインアルバムを取り出すと自慢げに見せながら色々と説明してくれたのです。

 その大量のコレクションの全ては覚えて無いのですが、旧一円龍銀貨が年代毎にきちんとコレクションされており、壮観だったのを覚えています。

 今でこそ、偽物が出回る人気の古銭ですけど、当時はそこまで入手困難じゃなかったですし、製造年を選ばなければそこまで高くは無かった記憶。


 そのコレクションに目を奪われていると、店主は気を良くしたのか、とっておきのを見せてやると言って、奥から別のコインアルバムを持ってきました。

 そのコインアルバムの中身は幻の近代金貨や小判が数枚収められてました。

 流石に手に取って見せてもらえる訳も無いし、何よりも幻の近代金貨なので、恐れ多かったのは覚えています。


 その後、財務省から近代金貨がそれなりの枚数放出されて一時的に価格が落ちた事もあったみたいですが、おいそれと入手出来る金額じゃなかったはずです。


 ちなみに店主は、バブル時に三百万で買ったけど今は半額になったとぼやいておりました。

 その当時の話なので、今現在ではまた価値が上がってると思います。


 そんな話をしていて、店主が気を良くしたのか何故か年齢を聞いてくるじゃないですか。

 当時は二十二、三歳だったので、そう答えたら若干ガッカリした表情。

 何かと思えば、『うちの娘は二十八なんだよな……』とかおっしゃる。

 おいおい、まさか初対面の男に娘を紹介するつもりだったのかよ!?

 流石にその頃の自分も二十八の女性は随分と大人に思えたし、紹介されても困ったと思う。

 店主もそれは分かってたみたいで、それ以上の話はしませんでした。


 その後、店主がコレクションはまだ沢山あるので、今度持ってくるからまた店に寄ってくれと言ってくれました。

 それは是非、と自分も答えてその場を失礼したのですが、妙にグイグイと来る店主の事を考えると中々行く気が起きなくて、そうこうしているうちに古書店が閉店してしまいました。

 それから自分も転職したりして、結局その古書店がどうなったのかは分かりません。


 今更ですけど、『また見に来ますね』と言っておいて、約束を守らなかったのを未だに引きずっているというお話。

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