衝撃的な夜食(状況)
「うおおおおおおおお!!!!!」
俺は深夜の道路を全裸で走っていた。
ぶいいいいいいいいいんんんん。
ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり。
「へいへい、どこに逃げようって言うんだ」
「そろそろ体力の限界なんじゃないのか!?」
「そろそろ解体されてもいいだろ?楽になろうぜ!」
後ろからは日本人とは思えないような連中がチェーンソーや鋸を持って追いかけてくる。
俺は全力で走ってそれらから逃げる。
「止まったら死ぬだろうが!」
俺は少しでも言い返したくて言葉を発するが、それは後ろの奴らを楽しませるだけだ。
「一瞬だから痛くないって!心配すんな!」
「そうそう、1日もあれば終わるからよ!」
「無駄にはしないから、な!?いいだろ!?」
「いい訳ねえだろ!」
俺は必死で走るが、相手は数が多いし武器も持っている。せめてもの救いは相手が乗り物に乗っていないことだけか。チェーンソーを持って走っているのに、後ろの彼らは疲れた様子がない。どうしよう。俺は素足でアスファルトを走ってもうボロボロなのに。
「そろそろやめたらどうだ!?」
「そうだぜ、ここは山奥。助けなんか通らねえ!」
「人里のいるところに行くまで5時間はかかるんだぜ!?さっさと大人しくしろや!」
「そんなこと言われたって諦められるものかよ!」
俺は必死に足を動かす。ここで止まれば死ぬと言われたのならそれ以外の選択肢なんてない。
「燃えろ俺の闘魂!修〇!俺に力を貸してくれ!」
彼がいることによって日本の気温を2度は上げている彼に祈る。
すると、後ろの方からスクーターの様な音が聞こえて来た。
「もしかして助けが!」
「ああ!?な訳ねえだろうが!」
「ぶっ殺すぞてめえ!」
「はく製にしてやろうか!」
「すんませんでした!」
はく製にされるのはマジで勘弁してほしい。それなら燃やして草原にでも撒いてくれ。
「お前らは後ろから来る奴らをぶっ殺せ!」
「おうよ!」
「ばらばらにしてやるぜ!」
彼らの内の二人が立ち止まり、後ろから来る誰かを待ち構えている。
俺は後ろの人に悪いと思いながらも速度を上げた。
「てめえ!逃げんじゃねえ!」
ぶいいいいいいいいいんんんんんん!!!!!
後ろからはチェーンソーを全力で吹かせまくった奴が追いかけてくる。よりによって一番嫌そうなやつだった。
「ヒャハアアアアアアア!!!!そこで命を置いてきな!」
「解体するぜえ!バラすぜえ!細切れにしてやるぜえ!」
後ろの方から叫び声が聞こえる。後ろのスクーターが近づいてきたに違いない。そして、もう少しという所で、
ドガッ!
バギッ!
「うげえ!」
「げはっ!」
というさっきの男2人の声が聞こえた。
「どうした兄弟!」
チェーンソーの男も後ろの悲鳴が聞こえたのか足を止めて後ろを振り返る。
「うごお!」
ドン!
という音が聞こえたかと思うと。スクーターのぶううううんという音が近づいてきた。
俺は必死に逃げるが人の足が機械に勝てる訳もなく並走される。
「止まって」
「はい・・・」
俺は色々と諦めて止まり、声の方を見るとヘルメットを被った大学生くらいの金髪の女性がいた。想像以上に綺麗でドキリとした。
「え?あ・・・」
「ほい」
「え?あ、ありがとうございます」
彼女は俺に何かの黄色い箱を投げ渡した。
俺はそれを何とか受け取り凝視するとそれはカロリ〇メイトだった。
「え?あの。これは」
「それ食べて頑張んな」
「え?あの、ちょっと!」
彼女はそれだけ言うとスクーターを走らせさっさと先に行ってしまった。
「ええ・・・。乗せてってはくれないのか・・・」
そう思って少し黄昏た所で今の状況を思い出す。
後ろを見るとそこにはアスファルトの上に倒れ伏す3人の姿が。
俺は彼らが目を覚まさない内に急いで逃げないと!
俺はその場から走り出した。
それから数時間後。
「腹減ったな・・・」
あいつらは人里に行くまで5時間はかかるといっていた。一向に人里の明かりなどは見えてこない。後ろから彼らが追いかけてくる可能性もあるのに俺は歩いていた。既に足の裏もボロボロだからだ。
俺はもっとお腹がヤバくなってから、と思っていたが、我慢の限界だった。
手に持っていた箱を開け、2つある内の一袋を破る。
中には2欠片のクッキーの様な物が入っている。最近食べていなかったから、ちょっと懐かしい。
そのうちの一つを手に取り口の中へ。
「うん、やっぱり美味しいな」
ちょっとしっとりした感じでクッキーなのに口があんまりパサつかない。水がないと厳しいと思っていたが、これなら何とかなりそうだ。
一個目をあっと言う間に食べてしまう。一個食べたらもう一個も・・・と口に頬張る。その味は美味しく、さっきは夢中で食べたため味が分からなかった。だから今度はゆっくり味わって食べる。
歯に少し力を入れただけでほろりと崩れ落ちる。手で持っている部分はしっかりしているのに、口の中だとこうまで違うのか。それを噛み締めるとチーズの仄かな香りが鼻孔をくすぐる。その香りは普段は嗅がないが、こうやって嗅ぐと食欲をそそる。
噛めば噛むほど柔らかく、優しい味になっていく。口の中の唾液と合わさり、少し違った味わいに。俺は何度も何度も味わい、完璧に溶けてなくなるまで噛み続ける。
「ああ、旨い。もう一本」
俺は独り言を呟いて、もう一本を食べようとしたところで、既に箱には一本も残っていなかった。おかしい。4本入っているはずなのに。どこに消えてしまったんだ。
ほんの数分前の記憶を思い出しても、あの味わいが舌の上で踊っているようで涎が湧いてくる。それは素晴らしい記憶で、ここ最近では一番美味しかった食事の記憶かもしれない。
俺は無事に帰ったら、絶対に箱買いすると決め、足を必死に動かすのだった。
Fin
カロリ〇メイトの回し者ではないか。と疑問に思った方はブクマと評価をお願いします。