動き出した春
「将来の夢、大人になったら何をしよう…」
梅本真也は悩んでいた。これでも一応中学3年なんで進路についての話題がもうチラホラ聞こえてくる。かと言う梅本は将来の夢がない、ただ働いて、飯を食っていければいいと言うただ漠然とした目標しか無かったのだ。もちろん小さい頃は大きな、本当に大きな夢があった。だがこうして大人になって行くにつれてその夢に現実味がなくなっていき、いつしか思い出となってしまっていた。
4月7日(火)
今日からがっつり授業が始まり、俺は今日もまた窓際の席で外を眺めながら考え事をしていた。そんな毎日を無駄に過ごしている俺でもたまにふと思う事があるのだ。
“モテたい“
そう。俺には夢も希望もないが願いがある。いつしか最も愛したくなるような女性と出会い、そして、少女漫画のような甘酸っぱくてキュンキュンな恋がしたい年頃なのだ。
といっても出会いの予感も恋の前兆が現れる様子もないのが今の俺、「梅本真也」と言う男なのだ…
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学校も終わり1人茜に染まる空を見ながら梅本は歩いていた。
すると後ろの方から、
「おーーーーーーい!しんくーーーーん!?」
もう声とテンションだけで誰かわかってしまったので、しばらく無視すると決め込んだ梅本さんだったが…
「おーーーーーい!」
…
「おーーーーーーい!?真也????」
…
「……」
あれ、おかしいぞ、、いつものこいつならめげずに俺が振り向くまで声をかけ続けるはずだ…
少しの油断で梅本は後ろを振り向いてしまった、、、そこには
「やっと振り向いたね、真也きゅん♡♡」
満面の笑みでこちらを見つめる木谷がいた。
よく顔を見ると可愛いもんだな、と思いつつ振り向いたことを後悔する俺がいた。
「どうしたんだ、急に」
「理由がなきゃ呼び止めちゃダメなんですかー??
と、少しご立腹の木谷だったがそこは気づかないふりをしてまた前を向き直す。
そして再び歩き出すと木谷は早足で俺の横に並んだ。
こうして2人並んで歩くと周りからはどう見られているのだろうか。なんてことを考えながら、梅本真也は幼馴染との下校イベントなどという幸せを噛み締めながら一歩一歩歩いていた。
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家に帰ると俺を待つのは部屋に置いてある少し憎めない顔の人形のみだ。
梅本家は母親1人と息子の真也の2人で暮らしている。父とは物心がつく前にはもう離婚したらしく、気が付いたらいないものとなっていた。
母親は夜遅くまで仕事があり、基本夕飯は俺1人。まあ何年も1人飯をしてきているのでそこまで苦ではない。
梅本が1人夕飯の支度をしようとすると突然「ピンポーン」とインターホンの音が鳴った。
現在午後八時。梅本家は基本配達者なども頼まず、マンションに住んでいるということもあって、「きっと隣の方と間違えたのだろうと何の確認もせずに、勢いよく玄関のドアを開ける。
そこに立っていたのは、配達員ではなく、ーーーーー
「えへへ、きちゃった」
そこにいたのは木谷春だった。
「急にどうしたんだ…?木谷が来るなんて珍しいじゃん。
「ふっふっふ…しんくん、甘いね。まだ気づいていないのかい?」
木谷はとても満足そうににやけている。
待て、どこか俺は見逃したところがあるのか…?
「まだ気がつかないのかい?しんくん、、、今の私は決定的な何かが違うだろう…?さあ、よく見るのだ私を。そして気が付き歓喜したまえ“cherry boy”」
「なんだと?お前のどこかがおかしいだと…?おかしいところはないはずだ。引くほど美人な顔に、それだけで童貞を殺せそうな巨乳。そしてそれを包むように、だが強調もしてくれている万能エプロン、そしていい感じの太もも、すべすべの肌…何もおかしいところはないはz…っは!?まさか!?」
全てを察した。まさかここまで違和感がないとは…
「ふっふっふ…フゥゥゥはっはっはははは!ようやく気がついたのかね。そうだよ。これから毎日夜ご飯は私が作ります。もちろんあなたの母親公認ですよ♡」
「…ぇ?」
考えた。梅本はひたすらに考えた。なぜこの1日でラブコメ一ヶ月分くらいの超展開が起こっているのか、そして考えた。きっとこれは神様が俺に与えた最初で最後のチャンスなのだと______
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時は流れ4月14日(火)
休み明けの学校にも慣れてきて、またいつものなんん変哲もない生活に戻る…はずだった。
なんと先週から夕飯を作りにくると張り切っていた木谷だが家を往復するのがだいぶ面倒らしくいっそのことうちで暮らすことになったのだ。
もちろん梅本は猛反対をした。親がいるといっても帰ってくるのは深夜の二時や三時なのだ。その間2人きり、梅本も一応は男だ。深夜の一個屋根の下に若い男女が2人きり、勿論なにもない訳がなく___なんてこともあり得るのだ。
だがしかし親の反応は真逆で、「どちらも今までの人生の中で一度も恋人を作ってこなかった娘息子にようやくチャンスが訪れた!今夜は宴だぁぁぁぁぁぁぁ!」などと雄叫びを挙げるほど。
わからない。梅本はもう何が起こっているのか理解ができなかった。
そんな梅本は一言、
「はぁ」
そのため息に全てが詰まっていた。
神様というのは優しいのか厳しいのかたまにわからなくなるな。と梅本は思った。
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4月19日(日)
梅本真也はただ立っていた。
それもそのはず今日は貴重な休日だというのに木谷の買い物に連れ回されているのだった。
買い物くらい友達と行けよ、などといってはいるが自分をそういうのに選んでくれていて内心少しうれしい梅本であった。
「ねー!しんくーん!どっちが似合うーー!?」
2つの服を交互に自分の前に重ねながら純度100%の濁りなき目でこちらに問いかけていた。なんだこの天使やだ無理可愛い。だがしかしそんな事を聞かれても年中ジャージ男の俺に聞かれても…なんて思いつつ適当に俺の好みの服を指さしておいた。
一通りショッピングも終わったらしくだいぶ満足そうな笑みを浮かべている木谷を横目に
「そーいや昼飯どうする?」
「んーーーーーー、しんくんの好きにしていいよ!きゃはっ♪」
お前はどこの女子ウケ狙いポケモンだよ…なんて心の中で突っ込みつつ、無難に学生の味方、サイゲリヤにさせていただいた。サイゲリヤはみんなご存知の通り老若男女から愛される味良しコスパ良しの最強イタリアンファミリーレストランチェーン店である。
別にそこらのシャレオツな店でも良かったのだが、この梅本真也は読んでいた。この女、木谷春は飯代を払う気がないッッ!そして飯を食い終わっていざ会計となった時に「あっ、いっけなーい、買い物でお金使いすぎて無くなっちゃった(T . T)だ・か・ら・ね?♡」なんて上目遣いの萌え声で頼みを入れることを知っているッ!そして逆らいでもしたら態度が一変して女の裏側、触れてはいけない暗黒部分を見ることになることもッ!この梅本真也は全て知っているぞーー!
なんて1人ジョジョ風芝居をしているうちに昼食となる食べ物が来た。俺は柔らかチキンのチーズ焼きで木谷はトマトソースのパスタである。肉クエ肉。
そんな肉食かくしの女は放っておき、朝抜いてきたので余計にお腹が空いてきた真也はチキンを見て唾を飲んだ。そして一口。一口食べてしまったら抜け出せないこのチキンとチーズの奏でるハーモニー。互いの良いところを打ち消さずに、逆に高め合っているこの唯一無二のダブルコンビッッ!それだけでも口内は幸せに包まれ楽園となっているが漢梅本真也はここで終わらないッッ!このまだチキンが残っている口の中に米!コメをかき込むッッ!!!するとなんと朝飯を抜いてきたのもあってか手が止まらない。チキンを口に入れトドメに米をかき込む。そんな単純な作業を24時間働き続ける機械のように正確に、肉食動物が獲物を狩るように豪快に!梅本真也は考えるのをやめ、ただ味を楽しんでいた。。。
「え?」
間抜けな声が出てしまった。もう一度もらったレシートを見る。
「ご、五千五百円…?」
おかしい。いくら腹一杯食ったとしても俺1人では千円を切っている。となると…
真也がギョッと睨みつけると木谷は一瞬肩をビクッと振るわせぎこちない笑みを作っていた。
「キィぃぃぃぃぃタァぁぁぁにぃぃぃぃ!貴様ぁぁあぁぁ!」
「ひ、ヒィぃぃぃいいいいいい!ごべんなさいいいい」
お金がだいぶ飛んでただでさえ冷え切っている真也の懐が豪雪地域のように凍えてしまったが、そんなこともたまにはいいかななんて1人、思っていた。
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4月22日(水)
いつも通りの朝、目を覚まし顔を洗い、いつものようにリビングに向かった。
リビングの扉を開きすぐ“いつも通り“の朝ではないと気がついた。
いつもならいるはずの、毎朝朝ごはんを用意してリビングで待ってるはずの彼女の姿はそこにはなく、テーブルの上に置かれた一通の置き手紙だけがそこには置いてあったーーーーーーーーー
だいぶ前回から時間が経ってしまいましたが、今回も読んでくださってありがとうございます。みるみるです。
さて今回は「動き出す春」ということで色々動かしてみました!笑笑
そしてラストになんと木谷さんが…って訳で前回改善すべき点として取り上げた内容が少なく、薄いという点ですが今回は多少良くなりました!ですがまだまだです…
話はガラッと変わりこんなに投稿の間隔が空いてしまった言い訳をさせていただきますと、ズバリアニメにどっぷりハマっていました!笑笑何のアニメかってまあ皆さんご存知ジョー○ター家のあのアニメです!
そんなこんなで前回から感覚が空きすぎたのと、もう少し内容を濃くするのが今回の反省点なので、次回はバッチリ改善できるように努力をしていくのでどうかよろしくお願いします!!!
ではまた皆さんが僕の作品に興味を持ってくれるのを期待しつつ、今回はここら辺で眠らせていただきます。
目指せ週一投稿!!!!