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金毛羊の村 2

 金毛村は広場を中心として円形に家々が立ち並んでいる。

 通常辺境の村では野党や魔物対策として壁や柵があるものだが、この村にはそれが無い。

 周囲の放牧地が金毛羊の縄張りなので、大抵の侵入者は勝手に撃退してくれるのだ。

 その為、隊商が来た場合も周囲で野営ができないので、その場所を提供するために村の中に広場を大きく取ってあるという訳だ。


 荷下ろしや天幕の設営と、忙しなく動き回る人足達の間を抜けると、広場の中心へ出た。

 周囲より一段低くなっており、周りには客席のような物が設置されている。


 そこは見渡しが良く、ただでさえ目立つサンデー達はすぐに見付かった。

 どうやら村のテイマーが金羊毛の群れを集めて芸を見せている所らしい。

 サンデー達はその見物をしているようだった。


「よう姐さん、良い旅路だったかい?」

「ああ、君達もいたのか。護衛の仕事だったかね?」


 サンデーが目だけを軽く向けて言う。エミリーも横で会釈をしている。


「ああ。馬車が多過ぎてどこにいるか分からなくてな、挨拶が遅れちまった」

「構わないさ。それより暇なら君達も見て行くと良い。なかなか見応えがあるよ」


 そう言って顎で前方を指し示す。


 そこは広場の中心で、ちょっとした運動場程の広さだ。周囲を柵で囲んである。


 村の者が金毛羊に向けて太鼓で指示を出している所だった。

 太鼓を打つテンポや回数で行動を仕込んであるようで、10頭程の群れが、指示をされた方向へと隊列を組んで突進していく。金色の冬毛を蓄え一回り大きく見える事もあって、かなりの迫力だ。

 何度か折り返し、最後の指示で観客席の前へと横一列に整列してみせた。なかなか壮観である。


「いや良い物を見せて貰った」


 ぱんぱんと手を叩きながら、サンデーは指示を出していた老人へと近寄って行く。


「おや、これは綺麗な娘さん。そう言って貰えると嬉しいねえ」


 サンデーを眩しい物でも見るように目を細めると、老人はにっこりと笑って見せる。

 先の紹介では、村一番のテイマーであり村長を務めている人物とあった。


「この子達は賢いのだね。私のような素人でも、何か一芸させてくれるだろうか」

「そうさなぁ。あまり他人には懐かんのだが、儂と一緒に同じように指示をすれば言う事を聞くかも知れん」

「体験してみたいのだが、良いかね?」

「ああいいとも。だがこの柵より中には入っちゃいかんぞ」


 村長が柵を示して注意を促す。


「縄張り意識が強いでな。無闇に近寄るのは危ない」

「了解したよ」


 頷きながら、村長と共に柵の近くまで寄るサンデー。


「サンデー様~がんばってくださいね~」


 エミリーの声援に手をひらひらと振って見せると、サンデーは村長の指示に合わせて太鼓を叩き始める。


 奥へ走らせる。

 右へ走らせる。

 左へ走らせる。

 手前へ戻らせる。


 一通り教わったと思われる頃、サンデーが顎に指をやり少し考える素振りを見せた。


「どうしたんだい? 今の所は上々だよ。素人とは思えんわい」


 急に動きを止めたサンデーに、村長が感心しながら声をかける。


「何、少し試したい事を思い付いてね」


 そう言ってサンデーは、悪戯を思い付いた子供のように無邪気な笑みを浮かべた。

読んで頂きありがとうございます。


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