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海と水着と女子会

 一時間程が経過しただろうか。


 アルトは散々着せ替え人形にされ目を回していた。

 今はもう抵抗する気も無くなり、布の意味を成さない紐としか言えないような物を着せられている。


 人間の街へ出てきてから、こんな風に色々な服を着ることなど無かった。冒険に必要な分の服があれば十分だと考えていたからだ。

 しかしそれでも女心というものはアルトにも多少はある。それはファッション誌を購入していた事からも明らかだ。


「ふふふ、女子会というのは楽しい物だね」

「そうでしょう~今度はスイーツも交えてやりたいですね~」

「確か領主君から、チーズが特産の村を教えて貰っていたね? 次はそこに行くとしようか」

「賛成です~」


 ビニールシートに寝転がりながら、二人の会話を聞くともなしに聞くアルト。


(そうか。女子会ってこんな感じなんだ)


 冒険者の仕事とは基本的には荒事だ。やはり男性の割合が圧倒的に多い。加えてアルトは人見知りだった事もあり、女性の冒険者仲間と呼べる者は少ない。

 大抵相棒と一緒に国中を依頼で駆けずり回っていたので、普通の女性達のようにゆっくりお茶会なんてしている暇も無かった。

 冒険塗れの人生は自分で選んだものだし、それはそれで充実している。

 しかし一方では、こういった女子会のような華やかな事にも憧れがあったのだと自覚する。


「そっかー……これであたしも女子デビューなのかな……?」


 思わず呟くと、耳ざとくサンデーがニヤリと笑いながら寄ってくる。


「ふふふ、どうしたんだね。感傷に浸っているのかね?」

「あ……いえ……私、こうやって女性だけで遊ぶのって慣れてなくて……」

「それは勿体ない。ならばもっと盛り上げようじゃないか」


 羽扇を振り振りエミリーに促すサンデー。


「そうですね~。女子会トークと言えば、やはりコイバナでしょう~」

「コ、コイバナ!?」


 アルトががばっと起き上がる。


「そ、それって誰が好きだのどういうのがタイプだのってお互い告白し合う伝説の拷問じゃ……!?」

「どうやらアルトさんは思った以上に残念女子のようですね~」

「可愛らしいのに勿体ない事だ」


 エミリーとサンデーが可哀そうな者を見る目をしている。


「だだだだって今までほとんどナインとつるんでたしあのデカブツがいると男女問わずあまり寄ってこないしそれはそれで都合良かったしってあたし何言ってんの……」


 わたわたと怪しい踊りを披露するアルト。


「それで。どうなのかね?」


 サンデーがばっさりと切り込む。


「ど、どうって何が……?」

「惚けるのは無しですよ~。ナインさんの事をどう思っているかに決まってるじゃないですか~。

きゃ~」


 両頬に手をやって黄色い声を発するエミリー。


「はぁっ!? 何を言い出すの!?」

「男女がペアになって行動していて何も無いのかね?」


 狼狽えるアルトに畳みかけるサンデー。


「な、何も……ある訳ないでしょ! あいつの好みはサンデーさんみたいな大人の女性だし……」

「それはナインさんの好みですよね~。アルトさん『が』ナインさんをどう思っているのかが知りたいんですよ~」


 エミリーがアルトの脇を突きながら追い詰める。


「嫌いなはずは無いね。常に一緒にいるそうだから」

「それは、まぁ……」

「では好きですか~?」

「すっ……いや待ってそんな男女の関係とかよく分からないしまだ早いって言うか好きは好きでも愛とは違うって言うか……」


 再びわさわさと奇妙な動きを見せるアルト。完全に玩具にされている。

 ふと、サンデーとエミリーが言葉を止めてアルトを見詰める。


「な、なに? 急に黙って……」

「残念ながら、女子会はここまでのようだね」


 サンデーが指差す先には、アルトの服のポケットからはみ出した通信機が、消音モードで振動していた。

読んで頂きありがとうございます。


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