捜査開始の狼煙
女王とエリックにより、緑はシリアルキラーを捕まえる組織を作ることを許可された。
しかし、捜査員は自分ただ一人で奮闘することになる。
最初に緑が目を付けた事件は、美男美女行方不明事件であった。
その事件の捜査をテリーザという付き人と行うことになる。
~翌日~
今からローク城に向かうわよ!!」
そう高らかに宣言したのはエミリーだった。
私はある一つの考えをアシュリーに打ち明けた。
「もしかしてエミリーって、女王のこと…」
「う~ん…たぶん違うよ。崇拝でもないし…たぶん親愛だよ」
「親愛?」
「そう、エミリーの親友に女王と同じ雰囲気の子がいたらしいんだよ。」
成程、エミリーの親友に似ているのか。
それなら少しだけわかるような気がする。
「そこ!!聞こえているわよ!!」
「げっ、エミリーの地獄耳!!」
そんな軽口を叩きながら私達は城に向かって歩き出した。
その後数十分で私達は城に到着した。
そして今は、玉座の間に三人で待っている。
すると、舞台袖から男の人が出てきた。
彼は金髪碧眼のマッチョのナイスガイであった。
「あら、エリック久しぶりね。」
「うわ~2か月ぶりだね~」
彼はエリックと言われた。
「緑、この人は私達と魔王を倒した時の勇者だよ。」
そうアシュリーは言った、確かに言われてみればそんな感じがする。男前でいかにも勇者みたいな風格。
「君が、彼女達の言ってた緑か~。シリアルキラーを専門に扱っているんだね。」
「はっ…はい、えっと...」
なんだろう…彼はどこか威圧的で息苦しい。
「そんなに固くならないで!!俺女の子に悲しい顔されるの凄く嫌なんだ。」
そう言って彼は、誰もが惚れ惚れするような笑みを浮かべた。私も勿論魅了された一人である。
「はい!!えっと…エリックさん。」
「あはは、そんなに固くならないで!!気楽に~気楽に。」
彼はそう言って手をひらひらとさせた。そうこうしているうちに女王が玉座に座られた。
そして女王は私の顔を興味深そうに、嘗め回すかのように眺めたかと思うと、途端に興味を無くしたような顔になった。
「そなたは、エリックやエミリー達のように異世界から参ったという者か?」
女王はそのどこかさめざめとした目で私に質問をしてきた。
「はい、日本という国からです。」
私がそう答えると更に女王は興味を無くしていった。
「そうか、この国とそなたの国は文化なども全く違うがそれでもこの国を満喫していってくれ。」
そう言って女王は愛想笑いをし、エリックに何かを言い出した。
「そうですか、なら。緑、女王が君の犯罪者に関する膨大な知識を生かして、この国にFBIの行動分析課みたいなものを作ってほしいんだって。」
やっぱりか…まあ、人員がいれば、まだなんとか。
「その組織には何人の人員が?」
「何を言っておる?おぬしただ一人であるぞ?」
女王はきょとんとした顔で話した。
「そうだよ~大出世!!そして組織に拠点は…今はこの城の庭園の端の資料小屋になるけど、お願いね!!」
そう有無を言わせない言葉使いで、エリックは言った。この国で生活するためだ…そう思うと断るすべはない。
「わかりました。それではこれからの人員に関することは私が決定権を持つことと、捕まえる決定権も私が持つ。その後の身柄は貴方達の警察などの部隊に任せることにします。」
これは私が映画で見たワンシーンをまねて言った言葉だ。
「おぉ~手慣れてる感じ!!どうしますか女王。」
「あぁ、良いぞ。この国の治安維持を任せよう、異世界からの執行人よ。」
こうして私は晴れて組織のトップに就任した。しかしこんなことを言ってはなんだが、とんでもないことだ。
だって私は、ただのシリアルキラーオタクで捜査なんか一度もしたことがない。
そして捜査知識もドラマ知識で、この国の国民の気質もよくわかっていない。
そんなことを思いながら私達三人は帰路に着いた。
「うわ~すごいね緑。私なら多分あんな交渉できないよ。」
「本当に、よくやりましたね。私もあんなこと言うことできないわ。」
「そっ…そうかな。私は映画知識で話しただけだよ。」
この二人が捜査員として入ってくれるなら百人力なのに。
でもこの二人も役職ある地位なんだ、わがままはいけない。
「本当は、二人もいてほしいのに」
私は自然とそう口に出していた。
「うはぁ!!うれしいな~そんなこと言ってくれるなんて」
「そこまで私達に親しみを持ってくれてとても嬉しいわ!!けど私達には私達の仕事があるから」
二人は私と本気で仕事しようと考えてくれていた。たった三か月ではあるが、私としてはとても充実していた。
「ありがとう、でも明日から徐々に仕事してこの国の凶悪犯罪者を取り締まるよ。」
にかっと笑ったら、二人は私の頭をわしゃわしゃ撫でてきた。
くすぐったいが自然と不快感は無かった。
「そうね、貴女にはこの国の異常者をぜーーんぶ捕まえてもらわないと!!」
「うんうん、緑はこの国最高のプロファイラーになってもらわないと~」
「でも私、調査も捜査もしたことないよ?」
「確かに、今は右も左もわからないかもだけど、そのうち慣れるわ。私達も剣なんて数年前は握っていなかった。」
彼女達は数年前は普通の一般人だったのだ。私も今は一般人だが、この後なんとしても羽化しないと。
私は青虫ではないけど、まだ蝶でもない。だが知識を蓄えた蛹だ。はやく動ける蝶にならないと。
「すっごい悩んでるね」
アシュリーはこの後ぽっりと何かをこぼした。
翌日、男の子の召使に連れられて庭園の端の資料小屋に案内された。
そこはこじんまりとしており、小屋というより納屋であった。
「ここが資料小屋になります。お好きにお使いください。」
少年はそう言い残すとぺこりと頭を下げて、そそくさと歩いて行ってしまった。
(そういえばここ、美男美女の少年少女しかいないけど...女王の趣味かな?)
そんな不敬とも取られることを考えていたら、ある資料を見つけた。
~美少年及び美少女失踪事件~
これだけ見ると何の変哲もないただの失踪事件だ。だが、だいたいがこの城を出た直後に行方不明になっている。
それだけで15人もの少年少女がこの城からいなくなった。しかも見目麗しい男女のみ。
「何なのかなこの事件?」
コンコン、コンコン二回ノックされた。
「すみません、緑さん。俺テリーザと言います。エリックさんの命で緑さんの付き人になりました。」
そう言ってきた彼は、かなりの美少年だった。しかし服のすそが汚れており、ズボンの裾が左右少しずつずれており、タイもすこし崩れている。
「あの…なんですか、そんなにジロジロ見て。」
「あぁ、ごめんね。ねえテリーザ、庭でもいじった?」
「はぁ!!えっ、なんで分かったんだ?」
そう言って彼はきょろきょろと自分の格好を見て回っていた。その姿がどこか小動物に似ている。
「ズボンの裾の汚れからだよ。あとテリーザってそんな服着なれないの?」
「えっ…どこまでわかるんだよ。こえ~」
「せっかく綺麗に使っていた言葉取れてるよ。もしかして、イースの出身?」
イースとはこの国のスラム地域に位置するところだ。そしてこの失踪者15人全てがイース出身である。
「出身までわかるのかよ!!まぁ…そうだよ。俺はイースの2番地出身。」
「なら、この15人に見覚えがある?」
そう言って私は捜査資料に載っていた名前を読み上げた。そして最後の、マイロンに反応を示した。
「マイロンは俺とおんなじ庭園掃除をしていたんだ。綺麗で聡明な女子だったよ。」
「話したことあるんだ。ねぇ、テリーザ実はこの事件の捜査を手伝ってほしいんだ。」
そういって私はテリーザに捜査協力をお願いした
今回でようやく、事件の頭だけ出てきました。
新キャラのテリーザ君のことも暖かい目で見てください。




