闇と光
この世界の人間は、全員が普通ではない。
中には人を人間と思っていない狂人もいる。
そんな狂人の心の中を少しだけ覗いていく物語。
深淵を覗き込むとき、その深淵もこちらを見つめているのだ。 ニーチェ
この言葉を聞いた時、私は既に深淵の中にいた。
私は中学2年生の時家族と一緒におとぎ話を実写化した舞台を見に行った。
そこで私は、王子様役の白人男性に恋をした。
白い肌、白い歯に高い鼻と青いコバルトブルーのような目。
日本人に持っていない容姿の全てを持ち合わせているこの人種に私は胸を掴まれた。
舞台の後、私は家に帰ってインターネットで好みの白人男性を漁り、その人が出演している映画をずっと見ていた。
そして時は流れて高校2年生の頃、大学進学のため進路を決めて、勉強する時になった。
私は元から大学も学部も決めていた。その大学は中幾大学の英文学部だ。
この大学は大学の一部の資金を使って、アメリカやヨーロッパに留学することができる。
なので私は、この大学に入って海外に羽ばたこうと思っていた。
この大学は中堅大学で、そこそこ勉強しないといけないが、法学部などであれば私はそこまで苦労しないで入学できる。
そして私は2年の冬から3年の冬の間の1年間、受験戦争に身を投じ、耐え抜いた。
しかし結果は、英文学部には不合格で法学部には合格出来た。私は法学部に入ることになった。
「緑〜そこまで落ち込まなくてもいいじゃん!!法学部も結構難関よ?」
そう言って緑こと、私田中緑を励ますのは、親友で同じ大学に通うことになった友中 萌香であった。
彼女は英文学部に合格した…。
「萌香は英文学部に入れたんだからいいじゃん!!私も入りたかったよ…」
「でも、緑の学部も頑張れば海外に行けるじゃん!!」
「その頑張りが…わからないのよ…」
私が落ち込んでいる理由は、英文学部に入学出来なかったこともあるが、法律とはどのような学問なのか全くわからないことが一番問題だった。
「そう言えば、私の友達がアメリカのドラマでシリアルキラーを捕まえるものにハマっていたな〜」
「シリアルキラーって…なに?」
私は萌香にそう問いかけたが、萌香もわからないようである。萌香はスマホでその意味を調べてくれた。
「あった!!なになに…あぁ、日本語にしたら連続殺人鬼のことだね」
「なるほど〜。私も刑事ドラマ好きだし…面白そう。そこドラマの題名メッセで送って!!」
そう言った、他愛もない会話をした後にプリクラや動画を撮って解散した。
そして夜になると萌香からメッセが届いていた。
見てみると、ドラマのURLが送られてきた。そのURLを踏むと、大手有料動画サイトが出てきた。
有料ではあったが、私はバイトを良くしていたので、お金を母に先払いした上で、そのサイトの会員にカードでなった。
その夜さっそく1話目を見ると、犯人の心情や捜査員の葛藤に心を奪われた。
その日から私はこのドラマを見ながら、シリアルキラーのプロファイル本を読み漁った。
そして入学式を終え、大学生活が始まると私はバイトと講義とシリアルキラー調べに友人付き合いと大忙しだった。
そんな中で出会った本が、元FBI捜査官で現在アメリカのスタンフォード大学で研究をしている、コバルト・ケディーの異常者のカーニバルという本であった。
まだ邦訳はされておらず、英和辞典とインターネットで訳して読み切った。
このことがあり私は、英語の勉強に熱を入れた。
更にコバルトの母の生まれ故郷の、フランス語も勉強している。
そのかいあり、TOEICでは700点以上に、フランス語検定でも2級を獲得出来るようになった。
1年後、大学2年生の冬に出されたゼミ論が私の運命を大きく変えることになる。
私のいるゼミは刑法を学ぶゼミで、課題は日本と世界の犯罪であった。
なので私は(日本のシリアルキラーと世界のシリアルキラー)というら論文を提出した。
これをゼミの先生が大層気に入り、コバルトの元で勉強してくることを強く勧められ、コバルト自身も私を気に入ってくれ、私は3年の夏にスタンフォード大学に留学することになった。
このことを萌香に伝えると、「まさかここまでやるとは…しっかりかましてこいよ!!」と熱い言葉を貰った。
そして、アメリカに出発する日、家族や友人との一時的な別れだと思い乗り込んだ飛行機が…永遠の別れになるとは誰にも…もちろん私にもわからなかった。
日本から出発して5時間後、私はあと半分の時間でアメリカに着くことに浮かれていたその瞬間だった。
ブーブー!!と機内に響く警報アラームが鳴り響き、機長の
「頭を下に、落ち着いて」
との声、乗客の怒号や悲鳴が機内に蔓延していた。
そこから、機長は水面着陸に移行するというアナウンスでその場の狂乱は少しばかりか落ち着いた。
しかし神様は私が嫌いらしく、隣の男の人が手荷物で持ち込んでいたスーツケースが首に落下し、骨の首を折って即死した。
その後どれほど寝ていたのかは、わからないほど寝ていた気がする。
突如目が覚めたかと思うと、そこは一面何も無い真っ暗な空間であった。
「ここ…は??どこ…死後の世界??」
そう考えを口に出していると、突然目の前から黄金の光が降り注いだ。そして次の瞬間、黄金の光を纏ったモヤが私に話しかけてきた。
「君は、生きたいかい?」
そう口にした。
「生きたい?そんなのYESに決まってるわ」
私は問いかけたに即答した。
「そうか、しかし君がいた世界では、君は亡くなっている。なのでほかの世界で生きることになるが、いいかい?」
「なんであれ、私は生きたい」
私は強くそう答えた。
「では、今すぐ君を別の世界へ連れてゆくよ」
そう言って、黄金のモヤは黒い渦を作り出した。
その渦に私は飲み込まれた。
この回では、緑が異世界に転生しただけですが、この後のお話から物語は徐々に動き出します。
緑の葛藤や、その周りの人の助け、シリアルキラーの恐ろしさと悲しさをどうぞ、最後まで見届けてください。




