第16話
スフィーとともに森を移動しながら、一つのことを考えていた。
それは、スライムの変化についてだった。
「スフィー、さっきスライムがワーウルフの鎧みたいになっていたんだけど……」
「ええ、私たちスライムはそのくらいの変身なら問題なくできるわよ」
「そうなんだな。スフィーも可能なのか?」
「ええ、試しにやってみせましょうか?」
「そうだな」
戦闘の幅が広がるかもしれない。
俺がスフィーに頷くと、スフィーはそそそ、と俺の傍へと寄ってきた。
それから、ぴとり、と彼女は腕に抱きついてきた。
それはまるで恋人同士が腕を組むような感じだ。
「スフィー? これは必要な行為なのか?」
「ええ、もちろんよ」
「そうなのか?」
肩に頭を載せてきたスフィーに疑問を感じた俺が近くのスライムに問いかけると、彼はふりふりと首を横に振った。
「必要ないですね」
「おい、スフィー」
俺が引っぺがそうとした次の瞬間、彼女が俺の体へとまとわりつくように変化した。
俺が身に着けていた服へと変化し、完全に一体化した。
「お、おお」
俺は感動して声をあげる。
自分の服へと手を触れてみる。試しに触れてみたが、ふにふにとした柔らかな感触だ。
「いやん、もうえっち」
「何がだ?」
「いま、私のおっぱい触ったのよ、もうー」
「……」
スフィーがそんなふざけたことを抜かしていた。
どこ触ってもスフィーの感触は変わらないな。
スフィーの分の重みがそのまま服に加わるのかと思ったけど、別にそんなことはない。
これまでと同じような感覚で動くことができる。
「スフィー、その状態で援護するように動くこともできるんだよな?」
「ええ、試しに戦ってみる?」
「そうだな」
俺は感知術を発動し、近くに魔物がいないかを索敵する。
しばらく歩いていると、ウルフを発見した。
こんなところに珍しいな。
ウルフは一体のみで、こちらに気づくと警戒した様子で唸り声をあげる。
俺は剣を構え、それからスフィーに声をかけた。
「それじゃあ、スフィー。援護頼む」
「ええ、分かったわ」
俺がウルフへと迫ると同時だった。俺の服から一部が離れると、ウルフの方へと水玉が放たれた。
凄まじい速度だった。
ウルフも驚いた様子で、横へと跳ぶ。
俺がその背中を斬りつけるように剣を振るう。ウルフはギリギリでかわそうとしたのだが、俺の服から分離したスフィーがウルフの体を掴むように液体を放った。
それがかかって動きが拘束されたウルフを、俺はあっさりと斬ることができた。
なるほど。確かにこれは便利だ。
「どうかしら、クレスト」
「これは思っていたよりも、ずっと凄いな」
ウルフは俺の攻撃に驚いていたが、それもそうだ。
予備動作なく、あれほど攻撃を繰り出されれば、そりゃあ驚くというものだ。
「ふふん。ありがとう、もっと上位のスライムになると宿主の意思をくみ取って、スキルテレパシーのように会話しながら攻撃できるようになるらしいわ」
「そこまでなったら敵なしだな」
「そうね。とりあえず、もうしばらくこの状態で行ってみる?」
「いや、もう十分能力は把握したから大丈夫だ。スフィーは自由にしていいぞ?」
「え? そんなこと言わないでよ。もう少しこうしましょ?」
「……何か意味があるのか?」
「そりゃあもちろんよ。私、こうしてクレストにずっとくっついていられるんですもの! 今度は服の上からじゃなくて、肌の上から変化させてくれないかしら!? そうしたら、クレストの汗とかもいっぱい吸収し放題だし!」
「すぐ離れろ! この変態!」
俺がスフィーの頭部分と思われる場所を掴んで必死に何度も引っ張ると、スフィーはやがて離れた。
不満そうにこちらを見てから、それからむすっと頬を膨らませる。
「もう、いいじゃない別に」
「……良くないっての。ほら、さっさと目的地に行くぞ」
俺はスフィーを警戒しながら彼女の隣に並んで歩き出す。
スフィーも不満そうではあるが、ゆっくりと歩き出した。




