第14話
例えば、上界でも一部の力を持つ貴族は正妻や側室などが認められている。
特に王が顕著だ。王は多くの子どもを産んでもらう必要があるため、女は二桁に上るほどいることだって珍しくはない。
男としてハーレムというのは一度は夢見るものだけど、あくまで夢見るだけだ。
別に実行しようなんて思ったことはない。
一人の女性を愛し愛してもらえれば、それだけでもかなり幸せなことだと思っていた。
今はその相手として、リビアがいる。他の女性を異性としてみるつもりはなかった。
そんな俺の決意を否定するように、リビアは首を振った。
「いいのです。別に、思うこと自体はいいのです。首領たるもの、複数の女性を愛せるだけの力を持っているのはむしろ大事なことです。より多くの子孫を残すには、一人の女性ではやはり大変ですからね。わ、私は頑張りますよ?」
「い、いや、そんな宣言しなくてもいいから……っ」
突然のリビアの言葉に俺は顔が熱くなる。
何を言っているんだリビアは……。
俺が何か口を挟むより先に、びしっと指を突きつけてくる。
「とにかくです。思うこと自体はいいのです。ですが――その中で一番は私ですからね!!」
リビアは顔を真っ赤にしてそう叫んだ。
その姿があまりにも愛おしくて、俺は思わず抱きしめていた。
「く、クレスト様」
「悪い、滅茶苦茶可愛かったから」
「……あ、ありがとうございます」
リビアが嬉しそうに目を閉じ、俺の胸に耳を当ててきた。
「クレスト様の心音を聞いていると安心できます……」
「……そういうものか?」
「はい」
俺には良く分からない感覚だ。ゴブリン特有のものなのだろうか?
しばらく目を閉じていたリビアが、ぽつりと声を漏らした。
「そういえば、ヴァンパイアの方々を助けるのですね」
「……不満か?」
「もしかしてクレスト様、あのような幼い体型の子が好みなのでは……と考えていました」
「そんなことないから! 今の俺の理想はリビアだ!」
「……」
「……」
お互い顔が赤くなってしまった。
リビアがぎゅっと抱きついてくる。
「今……嬉しくて口元がにやけてしまっていますので、こちらを見ないでください」
「……あ、ああ」
俺もそういわれて口元が緩んでしまいそうになる。きっとだらしない顔をしているんだろう。見られたくないのは俺も同じだ。
「私は、ヴァンパイアを助けることに賛成です。しかし、クレスト様はのんびり生活したいと言っていましたよね?」
「そうだな」
ただ、しばらくその生活は送れそうにない。
ヴァンパイアを助けたとしても、まだ北の地の魔物たちがいるのなら戦う必要はあるだろう。
落ち着けるまで、もうしばらくはかかりそうだ。
「ですから……もしかしたら、関わらないのかもと思っていました。私としては仲間が増えることには大賛成ですから。どう説得しようかと考えていました」
「そうだったんだな」
「はい、意見が合致してとても嬉しく思います」
確かにそうだな。
「オーガ種は、とても強い魔物のようだ。だから、村を強化し、さらにみんなを鍛えていく必要がある。リビア、手伝ってくれるな?」
「はい。それに、みんなだけではありません。クレスト様自身も強くなる必要があります」
「確かに、そうだな」
ただ、俺はもうすぐガチャの更新もあるし、皆が強くなれば俺だってその分強くなれる。
やはり大事なのは、全体の強化だと思っている。
「そのためにも、この村を中心に周囲の状況を調べましょう。スライムたちに聞いてみたところ、この近くには以前スライムが暮らしていた湖があるそうです。そちらの案内はスフィー様が行ってくれるようです」
ちょっと不満げな言い方ではあるが、リビアはスフィーの名を出す。
「そうか」
「二人きりがいい、とスフィー様は言っていました。……気を付けてくださいね」
「分かってるよ」
「な、何かされたら言ってください! 誘惑してくると思いますが、断ってくださいね! 私が同じことをしてあげますから!」
「わ、分かったから!」
スフィーが増えてからというもの、リビアは暴走するようになった気がする。
……まあ、その姿は可愛いんだけどな。何より、俺を思ってくれてのことが多いため、俺としてはまったく悪い気はしなかった。
「とりあえず、明日湖を見に行ってみるか。新しい魔物が発見できるかもしれないしな」
「そうですね」
明日からやることが多くなりそうだな。
まずは南で待機している魔物たちを呼ぶ必要があるしな。
その後は、魔物たちの指導をオルフェに頼み、村自体の建物なども造っていく必要がある。
大変だけど、頑張らないとな。




