第11話
「この魔石は知らないんだな?」
再確認のために、俺は持っていた魔石をヴァンニャの眼前へとかざした。
するとヴァンニャは目を見開き、体を震わせるようにして俺から離れる。完全に怯えている。首をぶんぶんと左右に振っている。
「そんな物騒なものを近づけるでない! 知らないんじゃよ!」
「これは上界からやってきた人間が落としたものなんだ」
「な、なんじゃと……? しかし、これほどの物を作れるとは相当に長く生きている者しか無理じゃな」
「なるほど……」
上界でも、誰かしらが動いている。それは確かだが、俺に悪影響を及ぼさないのなら、別に構わない。
「ヴァンニャ、一つ確認したいんだけど……ヴァンニャっていうのは魔名なのか?」
亜人たちは呼び名とは別に魔名を与えることが出来る。
誰でもは無理なようだが、俺はその魔名を与えられる。
「いや、ただの呼び名じゃよ」
「それなら、魔名を与えようか? 少しは強化されると思うが」
「な!? ま、魔名じゃと!? だ、誰が与えられるんじゃ!?」
「俺だ」
「なんじゃと!? おぬし、それほどの力をもっているのか!?」
驚愕といった様子でこちらを見てくる。
「……まあ、一応な」
「凄い! 凄いんじゃ! ぜひともわしにも魔名をくれ! そうすれば、わしだってあんなオーガたちなんぞ、殴り飛ばせるかもしれぬ!」
……かもしれないな。
「名づけは、みんなの前で行おうと思う。そのほうが、味方になったというのも皆に伝えられるだろうしな」
「分かったんじゃ!」
ヴァンニャはウキウキとした様子で席を立った。
無邪気な子どものような笑顔だ。
なんだか、拍子抜けするな。
ちらとリビアたちを見る。彼女らもどこか力の抜けたような表情をしていた。
……俺とたぶん、考えていることは同じだろうな。
ヴァンパイア種――最悪交戦することも考えていたのだが、ひとまず大きな事件に発展しなくて良かったな。
ヴァンニャたちとともに家の外へと出ると、すぐ近くにワーウルフたちの姿があった。
俺たちの様子が気になっていたようで、皆待機していたようだ。
皆、武器を構えており、いつでも飛び込めるようなそんな状態だ。
それだけの物騒な状況を見て、ヴァンニャの方が頬を引きつらせている。俺の後に怯えた様子で隠れたヴァンニャの背中を叩き、前に出す。
それから、ワーウルフたちを一瞥し、声を張り上げる。
「みんな、聞いてくれ!」
俺はまず叫び、ヴァンニャの手を掴んだ。そして、思い切りあげる。
身長が小さいため、ヴァンニャは背伸びをするような態勢となる。
「俺たちは同盟を結ぶ! これより、ヴァンパイアたちは俺たちの仲間になる! 彼女はヴァンニャ! ヴァンパイアたちの首領だ!」
俺の宣言に皆が驚いている様子だった。
皆は一度顔を見合わせた後、こくりと頷いた。それからすぐに、拳を突き上げる。
「「「おおお!」」」
歓声が上がった。ヴァンパイアと同盟を結ぶことを拒絶する者はいない。
それにほっと胸を撫でおろす。
それから俺はヴァンニャの手をおろし、彼女と向かい合う。
「それじゃあ、これより魔名を与える。彼女の名前はヴァンニャだ!」
俺が宣言をし、スキルを発動する。
すると、彼女のステータスがすっと表示され、そこに彼女の名前が刻まれるのが分かった。
『ヴァンニャ(ヴァンパイアロード)+1 主:クレスト 力430 耐久力430 器用401 俊敏402 魔力467 賢さ55 【魔道具製造術:レベル10】』
凄まじいステータスだった。というか、ヴァンパイアにしてもヴァンパイアロードなのか。
彼女のステータスを見て、初めてその事実を知った。
ヴァンニャはとても満足そうにしていた。
「力が、湧き上がってくるんじゃよ。これまで以上の魔道具が作れそうじゃな」
「それなら良かった」
魔名を与えたことで、多少ステータスの上昇もあったのかもしれない。
どちらにせよ、かなり貴重な戦力であることは確かだ。
同時に思うのは、ヴァンニャほどのステータスがあってもオーガ相手にはどうしようもないという事実に不安もあった。
俺は改めてワーウルフたちの方へと視線を向ける。
「これで、ヴァンニャは俺たちの仲間となった。これより、彼女らに協力し、今捕らえられているヴァンパイアたちの救出にあたる! 詳しい話は、それぞれのリーダーから聞いてほしい」
皆が納得した様子で頷いたのを確認し、俺はリビア、オルフェ、スフィーに視線を向ける。
こくり、と彼女らが頷いてくれた。
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