第3話
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俺たちは村を出発し、大移動していく。
北のワーウルフたちを中心に、森を移動していく。
この場にいるのは、ゴブリン、スライム、ワーウルフだ。
彼らを連れてきたのには理由がある。
元々、北のワーウルフたちは南の地を――つまりは俺たちすべての種族を統一するために、ヴァンパイアから力を借りていた。
ゴブリン、スライム、ワーウルフを村に置けば、分かりやすい証明になるだろう。
森の移動は想像よりも大変だった。
北のワーウルフたちがいる村までは、僅かに坂となっている。
あまり慣れない道、それに大人数での移動というのも枷となっている。
前回の戦いを思いだす。
北のワーウルフの村へと攻め込むような作戦をとらなくて良かったと本気で思った。
逆に言えば、北のワーウルフの村は周囲からは攻められにくい立地でもある。
地形を把握しながら歩いていくと、俺の近くではいまだに元気のない表情のオルフェが視界に入った。
彼と目が合った瞬間、オルフェは俺の方に一歩近づいてきた。
「クレスト。しかし、本当に大丈夫なのか? オレはあまり演技が得意ではないぞ?」
今回の作戦の要はオルフェだ。ヴェールドになりきるということに、かなりの不安を感じているようだ。
「それじゃあ村についたら、演技の訓練の再開だな」
ここ数日。オルフェにはひたすら演技指導を行っていた。
別に俺だって演技が得意というわけではないが、上手いか下手かを判断することは出来る。
「……うぐっ。わ、分かった」
オルフェはがくりとうなだれ、ため息を吐きながらそう言った。
オルフェはあまり嘘をつくのは得意ではない。
俺は彼のその素直で真面目なところが嫌いではなかった。
代わってやりたい気持ちもあるが、オルフェにしか出来ない役割だ。
彼に頑張ってもらうしかない。
もちろん、本番になる前の準備では、オルフェの負担が少なくなるようにしようとは考えている。
例えば、ヴァンパイアからどのような問いかけをされるかとか、そんな予想を立ててみたりだ。
とはいえ、相手が想定外の話をする可能性もあるだろう。
そもそも、ヴァンパイア種がどうしてヴェールドに協力していたのかについては、ワーウルフたちに問いかけても分からないと言われてしまっている。
相手の目的がまったく見えてこない。
今回の目的は、それらの情報を引き出すため、そして肉体を強化する魔石に関しての話を聞くこと。
そんなことを考えていると、
「ここが、村です」
先頭を歩いていた北のワーウルフの声が聞こえ、顔を上げる。
そこには確かに村があった。
外部からの侵入は容易だ。外壁や門などは何もない。
大まかに線のようなものがひかれており、村と外との空間はうっすらと分かる。
中に見えた家は、お世辞にも住みたいとは言えない建物が並んでいる。
仕方ないとはいえ、そこまで上等な建物ではない。
質的なものはあまり良くないが、形になっているだけでも良いのかもしれない。
俺の前で足を止めたオルフェの隣を過ぎると、彼はどこか感慨深そうな顔をしていた。
「オルフェ、大丈夫か?」
「……ああ、いや。すまない」
「別にいいんだ。ここはおまえの故郷なんだからな」
自分の住んでいた場所に戻れたのだから、嬉しいに決まっている。
俺はどうなんだろうか。
もしも上界に戻れたら嬉しいのだろうか?
いや、それはないか。
あそこに戻れたとしても、こき使われるだけだ。
今さら戻ってきてほしいと言われても、もう何もかもが遅いんだ。
村の中へと入り、状態を確認していく。
村の状態は悪くない。すぐにでも暮らしていくことは出来そうだ。
ただ、これまで普通の家に住んでいた俺としては、一度建て直したいところだった。
「やっぱり、クレストさんが造った建物とかってすげぇんだな」
村の中を歩いていると、そんな呟くような声が聞こえた。
確かに、周囲の家々を見てみても、すべてなんとか形を保っているような家ばかりだ。
それこそ、嵐でも来れば破壊されてしまいそうな脆い造りの物が多い。
呟きは一つだけではない。他のワーウルフたちからも声が上がる。
「本当にそうだよな。これが普通の村で、家だもんな」
「またこんな風がビュービュー入ってくる村で生活かぁ」
「いやいや、今回はクレストさんいるし、他にも建築術を持っている魔物もついてきているんだ! 大丈夫だろ!」
そういうことになる。
俺たちがこうしているのは、この村を改造するためでもある。これからはここを第二の拠点とすることも考えていた。
のんびりはしていられないな。今夜を綺麗な家で過ごすには、すぐに動く必要があった。
「みんな、そろそろ作業を始める。木材の調達を頼む」
『分かりました!』
重なるように声が響き、ワーウルフたちが動き出した。




