第42話
皆様のおかげでハズレスキル「ガチャ」二巻が何とか発売できそうです!
ありがとうございます! ここまでで二章終わりになります!
三章も出来上がり次第投稿していこうと思います!
コミカライズ版もスタートしています! ↓よかったら読んでみてください!
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リビアの言葉に、俺は笑みをうかべてしまった。
それは自分自身への嘲笑ともとれるものだ。とにかく、リビアの言葉は現実離れしすぎている。
「冗談はよしてくれ。俺に何ができると思う? 無駄に命を奪いたくないと思ってから、どれだけ殺してきたと思っているんだ?」
今日だけでも何人かのワーウルフを、そして兄を殺している。
俺は以前、自分で言ったように無駄に殺したくはなかった。
今回だってそうだ。俺にもっと力があれば、スライム種を押さえつけ、あの殺害を止めることだってできただろう。
「……あの場面では他に皆が納得できる方法はありません。クレスト様も、色々と考えての行動でしょう?」
もちろんそうだ。考えもなしに誰かを殺すのは、殺人鬼の証拠だ。
でも、あれこれ考えた結果。誰かを殺すというのは、結果として同じく――。
「何かあっても、殺したことに変わりはない」
「あそこで彼を生かすという手段はもしかしたらあったかもしれません。ですが、それには長い時間がかかります。その末で、結局殺すという選択をとることになった可能性もあります。もちろん、オルフェさんの兄です。オルフェさんのように仲間になってくれるかもしれません。ですが、仲間を殺され、苛立っているスライム種がいるのも事実です。……そして、あの場にはほかにもワーウルフがいました。すべてを納得させ、力を証明するにはあれが最良の判断であったと私は思います」
リビアは真剣な表情だった。慰めでもなんでもなく、心からそう思っているようだった。
「あの場でクレスト様が迷っていれば、私が斬っていました。そうでなければ、他の者たちもクレスト様に不信感を抱くと思いました。クレスト様も、そう考えてのものだったのではないですか?」
「……ああ、そうだな」
リビアの言う通り、俺はあの場で咄嗟に判断を下した。
……少しでも迷えば、俺についてきたいと言っていたワーウルフやゴブリンたちの信頼も揺らぐと思ったからだ。
だが同時に俺は以前の自分を否定する行動をとってしまった。
以前俺は「殺すつもりはない」といって、オルフェを生かした。
……状況はもちろん違う。オルフェはまだ誰かに恨みを抱かれてはいなかった。
だが、俺の発言と行動は前後で変わっている。それによって、ワーウルフやゴブリンたちの信頼がなくなる可能性も危惧した。
しかし、それでも俺はあの行動を選択した。
「正しいとは思っていない」
「それなら、私が殺す判断をだしたと思ってくれて構いません。クレスト様は私にいいましたよね? 間違えていたと思ったら止めてくれ、と」
「……そうだな」
「私はあの場面でのあなたの行動が間違いだとは一切思いませんでした。ですから、あの行動は私の意見でもあります」
俺は一度息を吐いた。リビアにすべてを押し付けて逃げる選択肢もある。
だが、俺がそれを選ぶつもりはなかった。
「これは俺の選んだ道だ。他人に押し付けるつもりはない」
「……そうですか。選んでいたら、私はあなたを嫌いになっていたかもしれません。でも、あなた一人の責任ではありません。私も同じく背負っていますから」
ほっとしたようにリビアが言って微笑んだ。
……リビアのほうが俺よりずっと王に向いているな。
「オルフェの兄だ。できるのなら、助けたかったさ」
「その優しさはこれからも抱き続けてください。すべてを救うのは難しいですが、可能な限りは救いに動くべきですから」
……そうだな。
俺はため息とともに天井を見た。……難しいな生きるってことは。
「クレスト様。殺すことは悪いことではありません。……そうしなければならない状況もあります」
「……ああ、分かってるよ」
「ですから、そう気に病まないでくださいね」
「そうだな。もう大丈夫だ」
いつまでも落ち込んでもいられない。
北のワーウルフたちがくれた情報から、近いうちにヴァンパイア種と会う予定があると聞いていた。
それに向けての準備が必要だ。
今日はさっさと休み、明日からの準備に備えたい。
……それに、ガチャだってもうすぐ終わってしまうからな。その前に、何とかして上げたいスキルもあるしな。
オルフェの兄に名前を与えた人物について、現状は何の情報もなかった。名前を得ていたというのも、オルフェが直接聞くまでほかのワーウルフたちでさえ知らなかったらしい。
名前を本当に持っていたのかどうか。そこから考える必要があった。
やることは多い。いつまでも休んではいられないだろう。
「それじゃあ、そろそろ寝るか」
俺がそういって部屋の明かりを消した時だった。
リビアが俺の服の裾を掴んできた。
「リビア?」
俺が振り返るとリビアは顔を真っ赤にしていた。
「クレスト様。お慕いもうしています」
「……それはいつも言ってくれているだろう」
リビアの様子がおかしかった。
何だろうか? 具体的な言葉で言い表せないが、何か変だ。
「違います。異性としてです」
「え……?」
それって、どういう意味だ?
俺のことが男性として、好き、ということなのだろうか。
「私、魅力ありませんか? ……確かにその、人間ではありませんし、お胸もそこまで大きいわけではありませんが」
「……そんなわけないだろ。毎日一緒にねて、こっちはかなり困っていたんだぞ」
「……そう、だったのですか? ……こ、これまでまったく襲ってくる様子もなかったですし、その……私異性として見られていないのではと」
「……襲ってもらうために来ていたのか?」
俺が問いかけると、リビアは頬を赤くしたあと、にこりと笑った。
「期待は、しておりました」
リビアのその言葉と表情は――たまらなく愛おしく可愛いもので。
俺の中で何かがはじけた。
俺はぎゅっとリビアを抱きしめる。そのまま、ベッドへと彼女を押し倒した。
「リビア……俺はおまえのことが好きだ」
「……はい。私もですクレスト様」
リビアは嬉しそうに微笑み、俺を抱きしめ返してくれた。




