第41話
北のワーウルフたちは全員が俺たちの配下に加わると話した。
基本的に魔物というのは実力主義的な考え方が多いようで、強い者の下につく、というようだ。
別に、強制的に俺たちの仲間になれとは一言も言っていないし、個人で行動したいのなら自由にしてくれてもいいとは言ったが、皆ついてきた。
まあ、皆が内に何を秘めているかは分からないが、ワーウルフキングは恐怖によって縛り付けていた部分も多いようだった。
とにかく、あとの管理はオルフェに任せている。
村へと戻り、全員の治療をした後、俺は村の中央に魔物たちを集めていた。
ゴブリン、スライム、ワーウルフ……総勢200名ほどの集団だ。
すでに、スライムたちへの名づけは終えている。最後に、皆の前でスライムクイーンへの名づけを行うところだ。
「スフィー、でいいんだな?」
「ええ、スフィーでお願い」
……もちろん、名づけに関しては基本的には魔物たちに考えてもらって行った。
だって、俺が全員分をやるのは大変だからな。そんなにぽんぽん他人の名前は思いつかないからな。
「それじゃあ、今日からおまえはスフィーだ」
俺は彼女に名前を与えた。
そうすると、スフィーのステータスも確認できるようになった。
スフィー(スライムクイーン)+1
主:クレスト
力294
耐久力343
器用250
俊敏187
魔力289
賢さ80
……かなり高ステータスだ。ただ、やけに賢さが低いのだけが気になっていた。
「どうしたのかしら?」
「……いや、なんでもない」
まあ、賢さはこちらの言葉を最低でも理解できるだけの知能があるということだからな。
そこまで気にする必要もないだろう。
これまでの言動からスフィーが馬鹿、とも思うことはない。
たぶん、ステータス的な部分でのミスなんだろうな。
そんなことを思いながら、俺は握っていたコップを持ち上げる。
「この村の新たな始まりだ! 盛大に祝おうじゃないか!」
勝利を祝して、新たな仲間たち……。それらをあわせての宴が始まった。
〇
……まだ外では騒いでいる人たちもいたが、俺は一人で考えたい事があったので部屋に戻っていた。
ベッドでごろんと横になりながら、俺はポーチにしまっていた魔石を取り出した。
それは、リオンが連れてきていた下界の管理者が持っていたものだ。
……あれから、色々といそがしくてゆっくり調べる暇はなかったからな。
その鑑定をしようとした時だった。部屋がノックされた。
「リビアか?」
「はい、クレスト様。来ちゃいました」
後ろ手で扉を閉め、中へと入ってきたのはリビアだ。
……また今日も一緒に寝に来たのかもしれない。
リビアにその気はないのだろうが、こう毎日抱き着かれて寝られると色々と大変だった。
体を起こすと、リビアが申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「……もう、お眠りになられていましたか?」
「いやまだだ。これから色々と考えようと思ってな。だから、まだ寝ないんだけど大丈夫か?」
「はい」
「そうか」
隣にリビアが腰かける。
「それで……そちらの魔石はもしかして、北のワーウルフたちが使ったものですか?」
「ああ」
「……すでに、すべてなくなっていたと思いましたが」
北のワーウルフたちに事情を聞いたが、あの戦闘ですべて使い果たしてしまったそうだ。
「これは、俺の兄が持っていたものだ」
「お兄様が持っていたものですか?」
「ああ。元、だけどな。今は家族でもなんでもない。……南に人間がいるって話があっただろ? それが俺の兄で、これを使って魔物化してしまったんだ」
「……人間が使うには、危険な代物ということでしょうか?」
それを確かめるために、俺は鑑定を使用する。
肉体強化の魔石
強力な魔力が封じ込められており、体内に取り込むことで一時的に肉体を強化することが可能。
……特に、魔物化するという情報はない。
「……リビアのいうとおりかもしれないな。この製造者に聞くか、実際に使用して確かめてみないことには分からないな」
「……なるほど。そうですか。使用したワーウルフたちも、別に体がおかしくなっていることはありませんでしたよね?」
「そうだな。だから、これを製造した可能性のあるヴァンパイア種は、これを純粋な肉体強化として使用している可能性もある」
「……今後の戦いでは、この魔石による肉体強化をされた物たちと戦うかもしれない、ということですね?」
「……そうだな。北の魔物がここまで攻め込んでくるかどうかも怪しい話だけどな」
「――来るはずです」
リビアがはっきりとした口調で断言した。
……珍しいな、と思うと同時、何か確証があるのかもしれないと思った。
「……何か知っているのか?」
「母から、聞いた話です。……いずれ、この世界には大いなる災厄が訪れる、と」
「……災厄、か?」
……そういえば、リオンも何か言っていたな。
俺のスキルは世界の危機を救うとかなんとか……。
エリス、ミヌもまた……似たようなスキルを持っている、と。
「はい。その大いなる災厄に打ち勝つには、皆の力を合わせる必要がある、と」
「……だから、魔物たちは抗争し、仲間を増やしているのか?」
「そうですね。もちろん、自分の安全を守るためだけに戦っている者もいます。ですから、より強者の下につくというのはとても自然な考え方なのです」
……みな、野生的な生活をしていたからではなく、きちんとした理由があるようだった。
それにしても、大いなる災厄、か。
エリスは確か、聖女……関係だったか? ミヌは勇者の名前がついたスキルだったような……。
どちらも、俺とはまた違った意味で……凄いスキルだったはずだ。エリスが祈れば、たちまち人の傷は治療され、ミヌが剣を振れば大地や空が裂けるほどだったはずだ。
ガチャは確かに便利で優秀だが、それだけだ。
――だが、仮に神が俺たち三人が協力して世界を救えるように力を分配したのならどうだろうか?
エリスが人を癒し、ミヌが敵を討伐する。そして俺が、その他の足りない部分を補っていく。
だと仮定すれば――まだ、災厄が訪れるまで時間があるのも確かだろう。
でなければ、こんなガチャのように月替わりでの能力付与は行わないはずだ。
……まあ、神はすこしおっちょこちょいな部分もあるからな。俺の能力のポイント部分について触れなかったし。
いや、それ自体もわざとで、俺を下界に送らせるために――まあ、これ以上は考えても仕方がないだろう。
「なら、下界を統一して、皆の力を結束させない限り……どうなるか分からないんだな」
「……はい。そして、私は……下界すべての王になられる方が、クレスト様だと思っています」
頬を赤く染めたリビアがこちらを見てきた。
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