第22話
リビア、オルフェに剣の指導を行っていく。
体内の魔力を変化させる訓練だが……意外にも二人とも感覚だけは掴むことに成功した。
それに驚いていたのは、リビアだった。
「……私、魔力変化については聞いたことがあったのですが、そのときはうまくいかなかったんですよ」
……そうだったのか。
しかし今のリビアは、水剣流の基礎は掴んでいる。
彼女の身体から感じられる水属性の魔力は、まぎれもなく本物だった。
「もしかして、名前を与えたからなのか?」
「……最近あった大きな変化は恐らくそれですね」
……俺が彼らを使役したことで、魔力の感覚をつかみやすくなったのかもしれない。
水剣流は敵の動きの先を読み、集中力を高める流派だ。
リビアの居合いは一撃必殺だ。彼女の戦い方と合っているだろう。
ちらと俺はオルフェを見た。
彼は苦戦していた。
オルフェは両こぶしを固めながら、体内の魔力を制御していく。
だが、それは一定時間で解除されてしまう。おおよそ一分程度だ。
「……はぁはぁ」
オルフェは何度か荒々しく息を吐き、それから再度体内の魔力を調整していく。
……リビアは比較的才能があったのかもしれないな。
「オルフェ、そうりきむな」
「分かっているさ……それでも、兄に勝つための力を手に入れられるためにも、なんとしても習得したいからな」
そういってオルフェは再び魔力を変化させる。
……彼の魔力は火属性に適性を示した。
彼の力強い戦い方に合っている魔力だな。
オルフェを眺めていると、リビアがやってきた。
「そういえば、クレスト様はどの属性の才能を持っているんですか?」
「一応全部だな」
「え!? 全部ですか!?」
「といっても、そこまで得意じゃないんだ。相手に合わせ、有利に立ち回らないとダメなくらいにはな」
器用貧乏、と俺に剣を教えてくれた人は言っていた。
「それでも凄いです」
「そうでもない。……ま、今は助かってるな。こうしてみんなに基礎的なものは教えられるんだからな」
ただ、あくまで基礎的なものだ。
力をつけていくのなら、そこから先は独学で学んでいってもらう必要がある。
それから俺たちは、昼が過ぎるまで剣の訓練を行った。
〇
昼食のあと、俺は集めてもらった木材を眺めていく。
……かなりの量だ。おかげで、周囲が開拓され、幅広い範囲が見渡せるようになっていた。
これなら、木々に隠れて敵が近づいてくるということもないだろう。
次はこれらを用いて防壁を造らないといけない。
俺は建築術を使い、最適の防壁を探していく。
ただ、やはり材料として使うなら、石のほうが良さそうなんだよな。
まだ、そこまで大規模な防壁は作れない。
今はひとまず、木の壁を建築していこう。
村と外との境界線を定める。そこにスキルを発動し、木の壁を製作していく。
それを円周になるよう、移動しながら製作していく。
「す、すげぇな……あっという間にできていくな」
驚いたように声をあげたのはワーウルフたちだ。
……確かにそうだな。
高さ二メートルほどの木の壁はかなり強固で、揺らしてみても動かない。
これならば、生半可な魔物ではまず突破できないだろう。
ワーウルフたちは俺のあとをついてきて、出来上がった壁の頑丈さを確かめていく。
そうして……俺は必要な木材を使い円状に壁を製作していった。
あとは、櫓を造れば完成だな。
俺は最後に木材を使い、現状危険と考えられる北側。そして東側に一つ櫓を作った。
……念のため、スライム族が襲ってこないとも限らないからな。
「す、すげぇ! 高い建物だ! ちょっと登ってみようぜ!」
ワーウルフとゴブリンが仲良くはしごを使って上へと上がっていく。
それをちらと眺めてから、俺は防壁を見た。
かなり、立派だろう。
木の壁には東西南北と四か所の門ができている。普段はかんぬきで閉じられているため、やすやすとは侵入できないようになっている。
欲を言えば、これを石で造れれば良かったんだがな。そうすれば、防衛能力は格段に上がっただろう。
それでも、一日の仕事量でこれは十分すぎるだろう。
戦闘面ではそこまで活躍しないが、この建築術はかなりのものだった。
「クレスト様……凄いですね。まさかこんなあっさりと造ってしまうなんて」
「本当にそうだな……オレたちワーウルフたちが何十日もかけてあの程度の村しか作れなかったというのに、おまえはこんなにあっさり作ってしまうんだな……」
リビアは素直な様子で、オルフェは驚きと喜びが同居した複雑そうな顔でそう言ってくる。
俺が凄いというより、皆が素材を集めたことのほうが驚きだ。
これだけの量があっさり手に入ったんだからな。
「ひとまず、これで村らしくなったな」
「村らしく、というか……そこらの村なんて目ではないほどのものが出来上がったぞ? やはり、おまえについてきて良かった」
オルフェが苦笑している。
俺も皆に続いて櫓に上って外を眺める。
……うん、問題なく見えるな。櫓から弓矢による狙撃も可能だろう。
「武器の製作もしていかないとな……。そういえば、北のワーウルフたちはどの程度の武器を持っているんだ?」
「皆、オレが持っていた剣と同じくらいだ。クレストが造ってくれたような立派なものは持っていない」
「……つまり、武器を変えるだけでもかなりの戦力アップになるってことだな?」
「ああ。なるだろうな」
それが聞けて良かった。
「とりあえず、アイアン魔鉱石をもっと集めたほうがいいな。みんなの武器をグレードアップさせながら、俺たちも強化しないとだ」
「分かった。明日からはそれらの回収に重点を置かせよう」
「ああ、頼む」
綺麗な夕陽を俺たち三人は眺めていた。
……この景色がいつまでも見られるように頑張ろう。




