第19話
唖然としてしまうほどあっさりと家が建った。
扉や、木の窓もしっかりとある。
……砂を集めれば、ガラスも作れると建築術が自己主張してくれている。
……いやいや。
いやいやっ!
俺はその木の家に何度かタックルしてみる。
まったく、びくともしない。この土の上にどんと、木の家を置いただけにしか思えないが、かなりしっかりとした基礎の家みたいに頑丈だった。
風魔法を強く放ってもびくともしない。家の中に入ってから、水魔法を雨のように落としてみたが、雨漏り一つしない。
木の窓を開けて、外を見る。何もかも完璧だ。
……いや、マジかよ。
こんなあっさりと家が建つなんておかしいだろ。
このスキル便利すぎんだろ……。
それから、建築術を確認し、家の中に家具を設置していく。
といってもそれほど大きな部屋ではないので、タンス、テーブル、椅子、ベッドだけにとどめた。
俺の家は二時間ほどで出来上がってしまった。
……すべて自分で集めたものであるそれにわずかな感動をして、俺は何も敷かれていないベッドで横になった。
ようやくベッドで寝られる……と思ったが、ベッドに敷くための布団などは作れない。
素材がないからだ。まあ、雨風しのげるのだけでも全然違うんだが。
とりあえず俺はそこでわずかに満足していたが……まだだ。
4月中にもう何度かガチャを回したい。
あるいは、次のガチャを期待してポイントを残したい。
どちらにしろ、魔物を倒してポイントを稼ぐ必要がある。
俺はその家から出て、魔物を探すため地図を広げた。
……今日はミツベアーから先の地域を見て回ろう。
もしかしたら、新しい魔物がいるかもしれないからな。
ミツベアーがいる地域についた俺は、そこで感知術を発動する。
周囲にいる魔物の情報がわかる。……向こうにミツベアーがいるが、無理に狩る必要はもうない。
そんなことを考えながら、さらに北へと進んでいく。
時々、感知術を用いて周囲の魔物を確認する。
……ミツベアーが増えてきたな。もう少し南だと、ミツベアー、ポイズンビーばかりなのだが、この辺りはほとんどがミツベアーだ。
もう少し進んだら何か別の魔物が出るだろうか?
そんなことを思いながら、俺はさらに進んでいく――と。
……モコモコの獣が現れた。
鑑定で見てみる。
ファングシープ
……羊種の魔物か。
滅茶苦茶鋭い牙で、何かの肉を食らっている。……こいつら、肉食か。
目つきも非常に悪い……。結構強そうな魔物だな。
初めてみる魔物だ。ファングシープは群れで行動するのか、この場に三体いた。
確か羊の毛って服や布団の材料になったよな?
そう思った俺は建築術で調べる。
……おお、ファングシープの羊毛を使って布団が作れるようだ。
……これなら、ここでこいつらを狩ろう。ポイントも稼げるしな。
そう思い、剣を構える。
剣に魔力を込めた瞬間だった。ファングシープがこちらを向いた。
……魔力への反応が速い!?
驚きながらも、すぐに俺はファングシープへと斬撃を放った。
と、ファングシープはその羊毛を使って俺の斬撃を防いだ。
どうなっていやがる!?
驚いている暇はなかった。ファングシープがこちらへと突進してきた。
数は三体だ。
……まずい!
一体だけを狙って手を出すべきだったか。俺はすぐに剣を構え、ファングシープの突進をかわした。
ファングシープたちはブレーキをかけ、こちらへと向き直る。
……もう一度斬撃を放つが、ファングシープはその場で再び斬撃を受けた。
……マジか。斬撃が効かない? 武器が弱いのか、スキルレベルが低いのか。
……まずいまずい。思っていたよりも強いぞ、こいつ。
俺はファングシープが食べていた死体を見て、ふと気づいた。
見覚えのある爪じゃないか、と。
そこで俺は、まだある程度残っていた肉を鑑定する。
ミツベアーの肉
……ま、マジかよ。ファングシープたちの餌はミツベアーなのか!
三体がこちらへと迫ってくるのを、俺は横にかわした。
……ただ、動きは見切れる。動きも単調だ。
ミツベアーとファングシープ、どちらが強いかは分からないが、個の力では明らかにミツベアーのほうが上だと思えた。
あの羊毛に攻撃が防がれることは分かった。
ならば、羊毛のない顔を狙うしかないだろう。
突進してきたファングシープをぎりぎりまでひきつけ、一体の顔に剣を突き刺し、横に転がる。
俺が剣を突き刺した一体は、悲鳴をあげながら大地を転がっている。
すぐに近づいて、その体から剣を抜く。
とどめを刺すように剣を振り下ろして、一体を仕留めた。
……やはり、一体で見ればミツベアーよりわずかに弱いといったところか。
ファングシープが突進してきて、俺は一体に斬撃を放つ。
と、一体は足を止め、俺の一撃を羊毛ではじいた。
……やはり、そうか。
俺の攻撃を受けるためにファングシープは踏ん張る必要がある。何度かうって分かったが、ファングシープの足元の土に強い跡が残っていた。
これで、突進してきたのは一体だ。そうなれば、怖くはない。
先ほどと同じように突き刺し、よろめいたところで仕留める。
残るは一体。
ファングシープが激昂した様子で突撃してきたが最後の一体になれば怖くはなかった。
突進に合わせ、剣を突き立てる。
動かなくなったファングシープを確認し、俺は息を吐いた。
……感知術を使う。近くに魔物はいないようだ。
……ファングシープの素材を回収しようと考えたが、さすがにこの量を運ぶのは難しいな。
ここで布団を作ってしまったほうが楽だが、できるのだろうか?
ひとまず、ファングシープの羊毛を集める。
それから、建築術を発動する。
……建築術でも対応しているが、仕立て術でもできるようだな。
敷き布団、かけ布団の両方が作れそうだ。
俺はスキルを発動すると、どこに設置するのかどうかを指定される。
……ああ、なるほど。
眼前に常にその文字が出ていて、とても邪魔だが……これで持ち運びができるな。
……ただし、今はほかのスキルは使えないようだ。
とりあえず、一度拠点に戻ろうか。
ファングシープの肉も持てるだけ持って、俺は拠点へと戻った。




