第39話
「え? ……え、エリス様?」
良かった。エリスのことを知っているようだ。
それならば、彼女の立場を利用したほうが良いだろう。
「ああ、そうだ。彼女は聖女の加護を持っているエリスだ。おまえたちも、名前くらいは聞いているよな?」
「え、ええ……まあ。下界にクレスト様という方を探しに行って――」
……俺のことも知っているのか。
そういえば、エリスは名目上は俺を連れ戻すために下界に降りたと言っていたな。
「そのクレストが俺だ」
「え……!? そ、そうなのですか!?」
「ああ。ここにいる亜人たちは、俺とエリスの味方だ。だから、そう怯えなくてもいい」
「は、はい……」
そうは言うが、いきなり落ち着くというのも難しい様子だ。
とはいえ、彼を落ち着かせるためにここに来たわけではない。
「恐らくだが、ここを亜人たちが襲ったはずだが……どちらに向かったかは分かるか?」
「……それは、恐らくですが王都に向かったと思います。上界の地図と、現在地について聞かれ……答えましたので」
「そうか」
上界を潰すならば、まずは王都を破壊するのが手っ取り早いだろう。
俺たちも王都へと向かう必要があるが、そのために足が必要だ。
「ここを襲った亜人たちは、そのまま王都を目指して歩いているのか?」
「え、ええ……ですが、途中にある街を襲う可能性は、考えられます」
「……そうか。馬などはここでは管理していないのか?」
足を手に入れなければ、レイブハルトたちに追いつくことはできない。
「……はい」
そうなると、いつまでも俺たちがレイブハルトに追いつける可能性は低い。
……何より、彼らの先回りをする必要がある。
俺たちだけでレイブハルトの軍勢に合流するのは、危険だからな。
そうなると、どこかで足を手に入れ、レイブハルトたちより先に王都へと向かう必要がある。
「王都に向かう途中にある街は……いくつあるんだ?」
「一つ、ですね。多少進路を変えれば、もっとあるとは思いますが……」
「……そうか」
レイブハルトたちが、街を経由しながら王都を目指すだろうか?
……マールナスから聞いた話では上界の亜人たちを解放するようなことを言っていたが、無理に経由するとは考えにくい。
それらは、王都を落としてから行う可能性も高いよな。
「この近くで馬を貸してくれそうな領地はあるか?亜人たちよりも先に王都へと向かいたいんだ」
「そ、それでしたらここから東の地にいるビットール領に向かえば……貸してくださるかもしれません。確か、リフェールド家に関係する人が管理していたと思いますが……」
それなら、エリスに確認してみようか。
俺は男性から離れ、怪我人の治療をしているエリスへと近づく。
「エリス、ビットール領については知っているか?」
「ええ、知っていますわよ。どうかしましたの?」
「そこで馬を手に入れて、王都に先回りしようと思っているんだ。エリスなら、交渉できないかと思ったんだが……」
「できると思いますわ。それほど遠くはありませんし、王都に先回りするには悪くないと思いますわ」
「……そうか。分かった。治療を終えたらすぐにビットール領に向かおう」
「分かりましたわ」
さすがに、ここをこのままにはしてはおけないからな。
それから意識が回復したものには、スライム種にお願いしてポーションを用意してもらい、一通りの治療を終える。
もう、大丈夫だろう。
あまり長居もしていられないので、俺たちが出発の準備を終えていると、下界の監視者の代表者がこちらへとやってきて、すっと頭を下げた。
「あ、ありがとうございます……クレスト様、エリス様。おかげで、何とかなりました」
「俺は別に何もしてないよ。お礼はエリスに」
「わたくしも、クレストの頼みがなければ助けていませんわよ。お礼はクレストに言ってくだされば結構ですわ」
俺たちがそんな話をしてしまったせいで、下界の監視者は少し困惑している様子だった。
「とにかく。俺たちは急いで王都に戻る必要がある。魔物が周囲をうろついているかもしれないから、それは自分たちでどうにかしてくれ」
一応、治療の合間に襲ってきた魔物くらいは討伐しているが、それでも殲滅したわけではないからな。
俺たちの言葉に、代表者はぶるりと震えたが、ゆっくりと頷いた。
「わ、分かりました。クレスト様とエリス様も、どうかご無事で。この国を、お守りください」
「……ああ」
この国を、か。
別に、そんな使命感のために上界へと戻ってきたわけではない。
俺はただ、リビアを助けるために来たのだ。
ただ、そんな本音を伝える必要は別にないからな。
短い返事の後、俺たちはビットール領を目指すため、少しの休憩を挟むことにする。
俺はその間にガチャポイントを確認してみると、ガチャポイントが10000ポイントになっていた。
下界で、皆が上手くやってくれたのかもしれないな。
皆に心の中で感謝をしつつ、俺はガチャを回していく。
なんとしても、ここで暗黒騎士を強化する必要がある。
そんな思いとともに二十二回分のガチャを回した結果、暗黒騎士が二つと黒ノ盾が出てくれた。
これで、暗黒騎士のレベルはMAXになった。……まあ、一つ余ってしまったがそれはもういい。
黒ノ盾のレベルも上がったので、これでレイブハルトに万全の状態で挑むことができるようになったな。
ガチャも終わり、皆の体力も回復したようだったので、俺たちはビット―ル領を目指して歩き出した。
《銅スキル》【力強化:レベル9(1/9))】【耐久力強化:レベル8(4/8)】【器用強化:レベル7(1/7)】【俊敏強化:レベル7(6/7)】【魔力強化:レベル7(5/7)】
《銀スキル》【剣術:レベル5(2/5)】【短剣術:レベル3(2/3)】【採掘術:レベル3(1/3)】【釣り術:レベル3(1/3)】【開墾術:レベル3(1/3)】【格闘術:レベル3(2/3)】【料理術:レベル2(1/2)】【鍛冶術:レベル3(2/3)】【仕立て術:レベル2(1/2)】【飼育術:レベル2(1/2)】【地図化術:レベル4】【採取術:レベル2(1/2)】【槍術:レベル2(1/2)】【感知術:レベル4(1/4)】【建築術:レベル4(1/4)】【魔物進化術:レベル3】【回復術:レベル4】【忍び足術:レベル3】【鍵術:レベル2(1/2)】
《金スキル》【土魔法:レベル5(3/5)】【火魔法:レベル6(4/6)】【水魔法:レベル5(3/5)】【風魔法:レベル4(2/4)】【付与魔法:レベル4(1/4)】【光魔法:レベル2(1/2)】【罠魔法:レベル3(2/3)】
《虹スキル》【鑑定:レベル3(MAX)】【栽培:レベル3(MAX)】【薬師:レベル3(MAX)】【召喚士:レベル3(MAX)】【魔物指南:レベル3(MAX)】【魔物使役:レベル3(MAX)】【アサシン:レベル3(MAX)】【弱点看破:レベル2(1/2)】【変身:レベル2(1/2)】【暗黒騎士:レベル3(MAX)】【影術:レベル3(MAX)】【黒ノ盾:レベル2(1/2)】
《余りスキル》【鑑定:レベル1】【薬師:レベル1】【召喚士:レベル1×3】【暗黒騎士:レベル1】
見えてきた城塞都市の門へと近づいていくと、固く閉ざされた門と外壁。
一切の侵入者を許さないという造り。
それが、ビット―ル領の領主が暮らしている場所だそうだ。
そんな建物を観察しながら、俺は安堵の息を吐いた。
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