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第38話


「ゴブリン種のリーダーであるリビアが、亜人に連れていかれたことは皆も知っているだろう。俺は彼女を連れ戻すため、これから上界へと向かうつもりだ」

 俺の言葉に、皆がこくりと頷いた。

「これは強制じゃない。協力してくれる者はこの場に残ってほしい。戦いが嫌という人たちは、この場から立ち去ってくれても構わない」

 誰も、動かない。

「この戦いは危険なものになる。……死者が出ないとは言いきれない、危険な戦いだ。それに何より、上界へと向かう必要がある。強制じゃない。ここから立ち去る者を、責めるつもりもない」

 そこまで言ったが、誰も動かない。

 しばらく待っていると、痺れを切らしたかのように声を張り上げる。

「オレたちはクレスト様に付き従います!」

 一人が叫ぶと、それに続くように次々と言葉が飛び交う。

「それに、リビア様だってオレたちに優しく接してくれました!」

「もっと強く言ってくれて構いません! オレたちは、あなたの指示に従い、戦います!」

 ……どうやら、皆の気持ちは同じようだ。

 彼らの声を聞き、迷いは消えた。

 俺は顔を上げ、彼らへと声を返す。

「ありがとう、皆。これから、二手に分かれて作戦を実行する! すぐに準備をしてくれ!」

 俺が叫ぶと、村全体が揺れるほどの雄たけびが響いた。

 作戦は事前にオルフェと話していたものだ。

 北の亜人たちがいない今を狙い、北側にいる新種の魔物を仕留めるというものだ。

 俺たちはすぐに二手に分かれて、動くことになった。

 まず、北の地に向かい、新種の魔物を倒す者たちだが、そちらはゴルガ、ヴァンニャ、カトリナたちにお願いすることになった。

 戦力を二つに分けた理由は簡単だ。

 北にいるかもしれない新種の魔物が、強力な可能性もあるからだ。

 残っていたメンバー――オルフェ、スフィーを中心にゴブリン、ワーウルフ、スライム種たちを引き連れ、俺は上界へとつながる門を目指して移動を開始した。

 上界へと繋がっているとされる門は、南にある。

 道中の誘導はエリスにお願いし、俺たちはまっすぐに進んでいく。

 魔物に襲われることはまったくない。

 先行していたレイブハルトたちが討伐していたのもあるだろうが、魔物たちも馬鹿ではない。

 彼らの異様な迫力を見て、恐らくは逃走したのだろうと考えられる。

 そして、わざわざ俺たちの集団を襲おうとする魔物もいないのだろう。

 そうして、南へと到着すると、上界へと続く洞窟が見えた。

「ここから、上界へと上がることが可能ですわ」

 エリスの案内の通り、洞窟内へと入る。

 上界へと続いているため、緩やかな坂が続いている。

 内部には、魔石による明かりこそあったが、薄暗い。

 俺が光魔法を放ち、それを明かりとして先へと進んでいくのだが。、

「……門が」

 エリスが驚いたように声を上げる。

 坂の先、明かりが見え始めたそこには、ひしゃげた門があった。

「元々は、壊れてないんだよな?」

 俺の問いかけに、エリスはゆっくりと頷いた。

 レイブハルトたちが上界へと向かったのは、これで確定だろう。

 門の外へと出ると、眩しい光が差し込んできた。

 久しぶりの上界だ。下界よりも光がより強く差し込んでくるその景色に懐かしさを覚えている暇はなかった。

「……っ」

 一斉に息を飲む声が聞こえた。

 門を潜り抜けた先には、下界の監視者たちが利用していたと思われる建物があったのだが、そこも全壊に近い状態だったからだ。

 かろうじて、壊れた建物が残ってはいたが、とても人が生活できるような状況ではない。

 崩れた建物の中には、下界の監視者と思われる人たちの姿もあった。

 と、建物の奥にて、魔物の姿を発見した。

 ウルフだ。

 ウルフはこちらに気づくと、そそくさと逃げ出した。

 洞窟付近に魔物がいなかった理由は、上界に魔物が流れてきているのもあるようだな。

 すでに、門はなく、下界の監視者たちもいないとなれば、魔物たちを阻む者は何もない。

 倒れていた下界の監視者が生存しているかどうかを確かめる。

「……エリス! まだ息があるっ! 治療を頼めるか!?」

「分かりましたわっ」

 何人か見ていくと、その内の一人まだ脈があったことに気づいた。

 俺がすぐにエリスを呼ぶと、彼女は駆け寄ってきて治療を始める。

「クレスト様! こちらの人間もまだ息があります!」

 俺と同じように人間たちを確認していた亜人の一人が声を上げる。

「そうかっ! エリス。治療をお願いしてもいいか?」

「ええ、もちろんですわ」

 エリスにお願いし、一人ずつ治療を始める。

 ……もちろん、すべての人間が生きているわけではない。

 運ばれてきた人々の治療をエリスにお願いしていき、その様子を見守っていると、スフィーがこちらへとやってきた。

「クレスト、あの人意識戻したわよ」

「そうか」

 最初に治療した人が意識を取り戻していたようで、そちらへと向かう。

 亜人たちに囲まれているからか、その男性はそれはもう怯えた様子であった。

 恐らく、俺たちとレイブハルトの軍勢を一緒のものだと誤解しているのだろう。

「少し、いいか?」

「ひぃぃ!? な、なんだ……!? こ、これ以上何も情報はないぞ!」

 怯えた様子で半ば発狂気味に叫ぶ男性を落ち着かせるように、声をかける。

「落ち着いてくれ。……あっちにいる女性は分かるか?」

 今も怪我人たちの治療を行っているエリスを指さすと、彼は驚きながらもそちらに視線を向ける。

 そこで、彼の目が見開かれる。

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