第23話
夜の会議の時間になった。
いつものように各リーダーの集まった会議室に、エリスもやってくる。
一応、皆には先に伝えておいたため、一瞥されるだけだった。
エリスに対しての、皆の評価は決して悪くはない。
俺だけが過敏になっていてなんだかなぁ、という拍子抜けな気持ちがないというのは嘘になる。
むしろ、俺だけが疑ったままだと、他の亜人たちが俺に対して不信感を抱きかねないくらいだ。
「それじゃあ、皆が集まったところで北の亜人たちについて話していこうと思う」
エリスが席についたところで、俺は口を開いた。
まずは、今日一日の俺が分かっていること、考えていることについてを伝えていく。
北に人間がいたこと。
敵の首領の名前が、恐らくレイブハルトであり、俺が苦戦した相手であること。
また、「上でやれる」という言葉。
それらを伝えると、真っ先にエリスが反応した。
「亜人の中に人間がいましたの?」
エリスもやはり驚いているようだ。
彼女の問いに俺は頷いて返す。
「ああ、そうだ。それに、結構親しい感じだったんだよな」
奴隷の首輪をつけていたとはいえ、オーガのところにいた亜人たちよりも扱いは悪くないように見えた。
あくまで、反抗しないように、つけているだけのような感じだったんだよな。
「ということは、クレストが言っているように恐らく犯罪者だとは思いますわ。それらが結託し、上界への復讐を……という予想は十分考えられますわね」
やはり、そうだよな。
エリスをここに誘ったのは、人間側としての判断を聞きたかったからだ。
そこへ、リビアが手を挙げた。
「犯罪者、の方々は確かにそう思っていると思いますが……亜人もすべてがすべて、復讐心で動くというのも考えにくくはないですか?」
リビアの問いかけに、スフィーが口を挟む。
「そうかしら? 私はめっちゃ恨みあるわ。もしも、クレストと出会う前だったら、私も参加してたかも。あっ、今はクレストの妻としてそんなことはしないわよ?」
「妻じゃありませんよ?」
にこにこと微笑みながらリビアがスフィーへと指摘する。
スフィーはしかし、まったくもって聞こえていない様子だった。
スフィーの発言に一部引っかかるところはあるが、彼女の意見も正しい。
確かスフィーは上界から下界に来たと話していた。
そんな亜人たちは、上界に対して少なからず恨みはあるはずだ。
人間に対しての恨みもあるかもしれないが、戦力として妥協して結託しているという可能性は十分にあるだろう。
「スフィー様はともかくとして。私の場合、生まれたときから下界で暮らしていましたからちょっと想像しづらいですね。他の方はどうでしょうか?」
リビアの問いかけに、オルフェは首を横に振った。
そこに、小さく手を挙げたのはヴァンニャだ。
「わしは……恨みとまではいかないけど、ママから良く聞かされていたんじゃよ。上界の人間たちは酷い人たちだと、のぉ。そうやって、親から子どもに恨みが引き継がれる……っていうのはあるかもしれないんじゃ」
ヴァンニャの言葉に、皆も納得している部分はあるようで、何も言わずに見守っている。
リビアもそれに小さく頷いていた。
「そうですか……なるほど。でしたら、亜人と人間が結託している可能性は十分考えられる、ということですね」
「そうじゃのぉ。ありえない、と否定するには少し難しいと思うんじゃよ」
リビアのようにそもそも上界を知らない子もいれば、スフィーのように上界から下界へと落とされた子、そしてヴァンニャのように親から話を聞き、不信感を抱く子もいる、か。
そう考えると、俺がこうして受け入れられたのは、運が良かったのかもしれないな。
一度皆が口を閉ざしたところで、俺は言葉を挟んだ。
「もし、北の亜人たちが俺たちに干渉してきた場合……俺は、何もするつもりはないとだけ答えるつもりだ」
「何もするつもりはない……ですか?」
「ああ。上界へと攻め込むと、誘われても断るつもりだ。ただ、別にそれを妨害するつもりもない。どっちにもつくつもりはないってことだ」
あくまで中立の立場でいるつもりだ。
俺だって、上界に対しては思うところはあるが、強い殺意などはない。
ただ、上界を守るために、レイブハルトたちに敵対するつもりもない。
俺にとっては、今いる仲間たちと
それが今の俺の考えだった。
こちらに視線が集まる中、俺は言葉を続ける。
「そして、もしもこの予想がすべて当たっていて、北の亜人たちが誘いかけてきた場合、各自の判断で参加するかどうかは決めてもらっても構わないと思っている」
俺がそう続けると、皆の注目がさらに集まった。
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