第22話
帰り道。
考えていたことはあの人間たちだ。
俺の目がおかしくなければ、間違いなく、人間だと思う。
人間に似ている亜人、と言われればそれまでだが……魔力の反応的にも俺とそう変わらないように感じた。
人間と仮定した場合、あの人間たちはどんな立場の人なのだろうか。
下界にいる人間、とすれば考えてすぐに思い浮かんだのは、犯罪者、ということだ。
下界に送られるのは、主に犯罪を犯した人間だからな。
だから、犯罪者だとすれば合点がいく。
下界に送られた理由はともかくとして、同じく下界に送られてしまったような亜人たちからすれば、一方的に敵対するということもないだろう。
多少、思うところはあっても、下界で生きていくために手を組む、というのは十分に考えられる。
ただ、犯罪者か……。同じ人間だとしても、相手が犯罪者となると少し恐ろしく感じる部分はある。
犯罪者たちは、総じて危険人物たちだ。
それらが徒党を組み、おまけに亜人までも巻き込んで生活を送っている。
彼らの目的は、なんだろうか?
『上でもやれる』。
あの人間は間違いなくそう言っていた。
ということは、安全な下界での生活をいつまでも送っていくというのは考えにくいだろう。
そもそも、下界では亜人同士が争い、他種族を従え、戦力を増やしていっている。
戦力を増やすこと。
上でもやれるということ。
その二つから浮かんだ予想は……復讐。
亜人と人間が手を組んで生活を送るなんて、上界への復讐程度しか思い浮かばない。
復讐を理由にすれば、理不尽に下界へと送られた亜人と、人間が手を組むことだって考えられなくはない。
そして、レイブハルトという名前だ。
敬称をつけて呼ばれていたところから考えるに、あの拠点の首領的な立場であるのは間違いないだろう。
もしかしたら、昨日襲ってきたあのフードの男が、レイブハルトでいいんだよな?
できれば、そうであってほしいものだ。。
レイブハルトが二番手、三番手なんて考えたくはない。
あれほどの強さの奴が、まだまだいるというのは勘弁願いたい。
どちらにせよ、俺はレイブハルトを思い出し、唇をぎゅっと噛んだ。
あのとき感じた魔力。
あれは、今までに感じたどれとも違うものだった。
レイブハルトは、恐らく人間ではないのだろう。
だったら、亜人かといえば、それも違うと思う。
ならば、一体奴は……何者だ?
あの拠点を従えているのが、レイブハルトだというのなら……その目的は?
分からない。すべて、予想することしかできないのがもどかしい。
つかつかと歩いていくと、
「あっ、クレスト様。お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ」
入り口にいた見張りのゴブリンが元気よく頭を下げてきた。
もうかなり歩いてきていたようだ。
村近くにまで来ていた。
それからすぐに門が開けられ、俺は村へと入る。
すれ違う人々から声をかけられ、俺は微笑を返して歩いていく。
しばらく歩いていると、向かいからエリスがやってきた。
「クレスト。無事戻ってきましたのね」
「まあな」
「それで何か情報はありましたの?」
「……あー、そうだな」
少し考える。
夜の会議のときに、各種族のリーダーに集まってもらっているが、そこにエリスは参加させていない。
まだ、彼女を信じ切れていないからだ。
彼女も参加させようか?
そんなことを考え、返事に迷っていると、
「どうしましたの? はっ! まさか、何か怪我でもしましたの? 何かあればわたくしが治療しますわよ?」
心配そうに覗きこんできたエリスに、俺は慌てて首を横に振る。
距離を詰めてきたエリスに、一定の距離を保ったまま警戒していると、彼女は寂しそうな微笑を浮かべる。
「大丈夫だ。エリス。いつも詳しい話は夜の会議のときに行っているんだ。それに参加してもらってもいいか?」
「……いいですの?」
「ああ。ちょっと、今回の件で色々相談もしたいと思ってな」
「本当ですの!?」
嬉しそうに声をあげるエリスに、俺は驚いてしまう。
「ど、どうしたんだ?」
「だって、クレストに頼ってもらえるんですもの。頑張りますわねっ」
無邪気な笑みを浮かべるエリスに、俺はやはり戸惑いしかない。
……以前のエリスとまるで違う。
頭でもどこかに打ち付けておかしくなってしまった、とか言われれば納得してしまうくらいにしおらしい。
油断はできないが、部分的に信用しても問題ない、はずだ。
「それじゃあ、俺は一度部屋に戻るから……またあとでな」
「はい。分かりましたわ」
笑顔のままエリスに別れをつげ、俺は自宅へと向かう。
エリスについては、皆からも話を聞いているが別に悪いことは何も言ってないんだよな……。
むしろ、亜人に対しても分け隔てなく接するとかで評判が良いくらいだ。
エリスの力を、もう少し頼ってみてもいいのかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は夜の会議の準備を進めていった。
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