第12話
これに関しては、まだまだ俺の能力が低いのが原因なのかもしれないが、完璧なスキルではないのは確かだ。
もしも、北で暮らす亜人がオーガたちよりも優秀ならば、気づかれる可能性は高い。
だとしても、だ。
「まあ、そうだけど……万が一相手が格上でも逃げるのに徹すれば、どうにかなるとは思う。その場合、俺一人で行動したほうが良さそうだしな」
俺一人なら、何とかなる可能性のほうが高い。
「……それはそうだが」
俺の発言に、オルフェもひとまずは納得してくれたようだった。
まだ、言いたいことはあったようだが、代案が思いついたわけでもないようで、口を閉ざしていた。
それは、オルフェだけではない。
とりあえず、無理やりな形ではあるが、納得させられたようだ。
「とにかく、交戦する可能性もあるんだ。リビアやオルフェは、皆の能力の底上げを行ってくれ。ゴルガたちは、村の防衛力を少しでも高められるようにしてくれると助かる」
俺がそう答えると、皆は心配そうにしながらも頷いた。
「それじゃあ、これで話し合いは終わりだ。わざわざ集めてしまって悪かった。ゆっくり休んでくれ」
あまり無駄にだらだらと話していても仕方ないだろう。
俺が解散を宣言すると、皆が席から離れていく。
彼らとともに外へと出ようとしたところで、声をかけられる。
「クレスト、あんまり無理をしないで」
去り際に、カトリナがそういうと、ゴルガも頷いた。
「クレスト、何かあれば相談してくれ。必ず、力になるから」
「そうじゃぞ。以前助けてもらったんじゃからな。いつでも協力するんじゃよ」
ゴルガに続け、ヴァンニャがそう言った。
「そうよ。それにアサシンの状態だと私なら、くっついていても問題ないし、調査する場合もついていくわよ?」
「分かった。ただ、今はとりあえず一人で行動しようと思っているんだ。また何かあれば相談するよ」
「ええ。必ずしてね。二人きりで、話を聞いてあげるわ」
何か相談する場合は、他の亜人がいる場面でしようと思った。
ただ、スフィーが言うように彼女ならばくっついていても大きな問題はない。
しいてあげるなら、変なことをしてくるかもしれないということか。
スフィーの手が空いているときは、協力してもらうのもありかもしれない。
「本当に、無茶をなさらないでくださいね?」
リビアは心配しながらも、明るい表情とともにそう言った。
皆に頷いてから、俺は笑顔で口を開く。
「大丈夫だ。何かあればすぐに相談するからな」
確かに、北の亜人たちがどのような存在か分からない以上、皆が心配するのも当然だ。
一人で行動したほうが気楽ではあるけど、もう俺一人の身ではないしな。
俺としては、必要があれば無茶もしたいと思っているが、それを行うと周りを心配させてしまうんだよな。
難しい立場だよな。
昔に戻れれば気楽でいいが、でも……悪い気もしない。
次の日。
俺は一人オーガの村まで来ていた。
昨日話していた通り、北の地を調査するためだ。
オーガの村周辺まできたところで、感知術で周囲を観察していく。
魔物の気配はちらほらとあるが、それ以外は感知できない。
まだ、この辺りにまでは来ていないのだろうか?
とりあえず、アサシンと忍び足術を発動し、調査を開始する。
一人での行動は、動きやすいがその分周囲への警戒も強める必要がある。
新種の魔物を探しながら、北の地を歩いていく。
途中、魔物を見つけたが、新種ではないので討伐はしない。
わざわざ討伐してもその処理が大変だしな。
下手に死体を残すと、北の亜人たちに見つけられた時に面倒だからな。
感知術によって、周囲を調べながら進んでいく。
魔物はいるが、亜人の反応は未だ見つからない。
亜人たちがいるというのなら、どこかしらに拠点もあるはずだ。
カトリナの話では、最北端辺りにいるという話ではあったが、今のところ反応はない。
何もいないのならそれが一番なんだがな。
カトリナの勘違いで終われば、俺たちはこの下界でそれぞれの生活を楽しんでいけばいいだけなんだしな。
そんなことを考えながら歩いていると、浜辺へと出た。
……海か。
たまに塩を作るために料理術を持った亜人たちが海へと向かっているが、俺はもうめっきり見ていなかったな。
久しぶりの海を眺めていたのだが、そのとき感知術に反応があった。
海のほうからだ。
魔物ではない反応だ。
亜人?
そう思った俺はすぐに近くの茂みに身を隠す。
アサシンと忍び足術は発動しているよな?
ちゃんと発動しているのを確認してから、海を眺める。
海のほうから一人の亜人が姿を見せた。
一瞬、魔物かと思ったがぞくぞくと彼らは姿を見せる。
……リザードマンだ。