第11話
次の日の夜。
俺は村内のある場所を目指し、歩いていた。
目的の建物が見えてきた。
外観は他の建物と大きくは違わないが、少し大きい造りとなっている。
そこは会議室として使われている。
各種族のリーダーを集め、何かあった際に話をするための建物だ。
中へと入ると、大きなテーブルがあり、椅子が並んでいる。
すでに各種族のリーダーたちは席についていて、俺に気づくと立ち上がった。
そして、すっと頭を下げてきたものだから、俺は苦笑しながら答える。
「そう、かしこまらなくてもいいって」
「ですが、一応首領ですし。このくらいはさせてください」
リビアがからかうようにそう言ってきて、他の人たちも口元に笑みを作る。
……まったく。
俺はため息を吐きながら席に座り、皆も合わせて着席した。
一応は首領になってしまった手前、苦手とは言ってもこういった反応も認めるしかない。
「それじゃあ、今後のことについて話したいと思う。まず、村の設備についてだが、ゴルガ、報告頼む」
ちらと視線を向けると、ゴルガが立ち上がる。
村の設備関係の管理はゴルガに一任している。
村の設備は、ヴァンパイア、ゴーレム、ドリアードたちで造っていることが多いので、各種族のリーダーに聞いて、じゃんけんによって負けたゴルガの担当となった。
こんな決め方で良いのかとも思うが、今のところゴルガは真面目に仕事に取り組んでくれている。
「あと数日もすれば、外壁は完成する。各建物についても、すでに全住民が暮らせるだけの住居は用意できた。……他に、必要なものがあれば意見が欲しい」
「だそうだ。何かあるか?」
しん、と場は静かになる。
「特にないようだな。ゴルガ、何か意見をもらったら俺にも報告してほしい。みんなも、必要だと思ったものがあれば自由に頼んでいいからな」
そうまとめると、皆がこくりと頷いた
ひとまずこれで、ゴルガの担当は終わり、次にスフィーへと視線を向ける。
「次は……スフィーだな。ポーションの製作はどうなってるんだ?」
スライム種はポーションの製作が得意な子たちが多く、彼らにはそれを任せていた。
スフィーはぐっと親指を立てる。
「うん、完璧よ。こっちも倉庫にたんまり造っておいたからたくさん使って大丈夫よ」
どこか誇らしげな様子の彼女に、俺も安堵する。
今後のことを考えると、ポーションを使う機会もあるかもしれないからな。
「そうか。分かった」
「クレストには、私の愛をたっぷり込めたポーションを用意してあるから、いつでも言ってね?」
「……作ってあるんじゃないのか?」
「口移しであげるわ」
ウインクしてきたので、無視する。
スフィーとまともに取り合っていても時間の無駄になるからな。
これで、とりあえず村についての話は終了だ。
ここから重要になってくるのは、北に着いての話しだ。
「それで、カトリナ。さらに北に亜人が暮らしているって話だけど……」
「うん。私も、木々を伝って情報を集めたけど……亜人がいるのは確か。ただ、あくまでいるくらいの情報しか分かっていない」
……カトリナは名づけを行ってから木々の声をさらに深く聞けるようになったらしい。
ただ、情報を集めるのは中々に至難なものらしく、今までも少しずつ情報を集めてもらっていたが、昨日木からそんな報告を受けたらしい。
「そうか……その情報はどのくらいあるんだ?」
亜人の種族やどんな性格の亜人なのか……。
俺たちに敵対しそうなのかとかが分かれば、今後の対策をたてやすい。
しかし、カトリナは申し訳なさそうに首を振った。
「分からない……。でも、オーガの村からかなり北……島の端のほうを拠点にしている亜人たちがいるって」
「……そうか」
「ごめん。あんまり正確な情報じゃなくて。また何か分かれば、伝えるから」
「いや、十分だよ、ありがとなカトリナ」
そう言って微笑むと、カトリナは照れた様子で微笑んだ。
北の亜人たちが、敵対するかどうかは分からない。
それらを含めて、情報収集をする必要がある。
敵対しないというのなら、それで済む話だ。
……しかし、敵になるというのであれば、なおさら情報は必要になる。
「……そういうわけで、ひとまずは俺が一人で調査を進めようと思ってる」
俺がそういうと、皆から心配するような視線を向けられる。
「ひ、一人でか? いくらアサシンのスキルがあるとはいえ、危険じゃないか?」
アサシンは相手から認識されにくくなるスキルだが、欠点もある。
ある程度、勘の良い相手には気づかれてしまうというものだ。
前回で言えば、ルガーには気づかれてしまっていたからな。