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第5話



 というのも、今日は久しぶりに一人で行動したいという気持ちがあったからだ。

 けど、よく考えたらエリスを残したまま一人で、というのもそれはそれで不安だ。


 帰ってきたらエリスによって半壊させられていないとも限らないし……。

 だったら、一緒に来てくれたほうが俺としては見張りもできるので悪くない。


「それでは、準備してきますわね」


 上機嫌な様子でエリスがそういって、家のほうへと向かう。

 その後ろ姿を眺めていると、じろーっという視線を感じた。

 振り返ると、リビアがいた。


「ど、どうした?」

「今日は一人で行くのではありませんでしたか?」

「……いや、な。エリスをここに残すのは不安だし、さ」

「……私も同行してよろしいでしょうか?」

「いや、リビアは――」

「私も万が一、があると心配なので。しっかりと見張りをしないと」

「エリスなら、俺一人で大丈夫だぞ?」

「私がいては、何か迷惑でしょうか?」


 笑顔だ。

 だけど、その笑顔は少し怖い。

 俺は苦笑とともに、頷くことしかできなかった。


 リビアも準備のため、一度家へと向かう。

 俺は小さく息を吐き、近くで休んでいた。


「何やら、修羅場のようだな」

「オルフェ……からかうなよ。そういうのじゃないって」


 オルフェがこちらへとやってきて、俺の隣に並んだ。

 先ほどの発言から、どうやら俺とリビアやエリスとのやり取りを見ていたのかもしれない。


「いや……オレも父を思いだすな」

「……父?」

「ああ。首領というのは何名もの女を侍らせるものだったからな。より強い子を生んでもらうために、とか色々理由はあったが……とにかく、それらの対応が大変そうだったからな」

「大変そうって……修羅場になっていたとかか?」

「そうだ。みんな誰が一番かで争っていてな。まあ、正妻、側室など色々とな。オレと……兄は正妻の子だったから、そのまま集団を率いる権利があったが……そっちはそっちで色々と争いもあってな……」


 オルフェの疲れたような表情に、俺もなんとなく想像できた。

 正妻の子を殺し、側室の子が家を継ぐ、なんてのは俺も聞いたことがあったからだ。


 確かに、跡取りの問題などを考えると、やはり一人だけのほうがいいだろう。

 今度、スフィーあたりに絡まれたらそうやり過ごそう。


「まあ、見ている分には楽しいものだな」

「おまえな……」


 オルフェがからかうように笑い、それから何かに気づいたように顔を上げた。


「それじゃあ、オレはそろそろ自分の仕事に戻る。気を付けてな」

「……ああ」


 振り返ると、先に準備へ向かったエリスが来ていた。

 オルフェは彼女に気づいたから、去っていったのだろう。


「先ほどの方はオルフェ、でしたっけ?」

「ああ、そうだ。もうすぐリビアも来るから、それから魔物討伐に向かおう」

「リビアも来ますのね」


 確認するような口調。

 どこか、険のある言い方に、昔を思い出す。

 同時に、少し懐かしいとも思ってしまった。


「ああ。一応な」

「二人きりが、よかったですわね」

「……今はそういう関係じゃないだろ」


 俺はオルフェの言葉を思い出し、そこだけはしっかりと釘を刺しておいた。

 それからしばらくして、リビアがやってきた。


「それでは、よろしくお願いしますね」

「ええ、よろしくお願いしますわ」


 にこりとエリスが微笑み、リビアも同じように笑う。

 ……ただ、どうにもお互いに威圧感があるように思えたのは、俺の気のせいだろうか。


 笑顔の下で、何やら殴り合っているような……いや、きっと気のせいだろう。

 あまり考えすぎても仕方ない。

 俺は二人とともに村を出た。


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