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第3話


 ガチャのスキルについては、別に隠す必要はないのかもしれないが。


 そんなことを考えていると、ちょうど近くの建物からカトリナが出てきた。

 カトリナはじっと俺とエリスを見比べてから、


「……クレスト? そちらの人は?」


 警戒した様子で、問いかけてきた。

 俺はすんなりとエリスに居住許可を与えてしまったが、亜人たちからすれば気になるかもしれないよな。


「俺の……知り合いだ。カトリナ。確か、この家は誰も使っていなかったよな?」


 今後、いつ亜人が増えるか分からないため、家は多めに造ってもらっていた。

 というか、カトリナたちドリアードは家を造るのが趣味みたいなもので、何かしらの仕事を求めていたからな。

 他にも、家具の製作などもお願いしているところだ。


「うん、使ってない。今、調整していたところ」


 カトリナがこくりと頷いたので、俺はエリスへと視線を向けた。


「だそうだ。とりあえずエリスはここを使ってくれ」

「ええ、分かりましたわ。とりあえず、少し中を見てみますわね」

「ああ、何かあったら言ってくれ」


 エリスはカトリナたちに一礼をしてから、建物へと入っていく。

 カトリナがこちらに並んできて、小首を傾げた。


「あの人……もしかして上から何か調査とかに来たの?」

「真意は分からないが……敵対するのも、な。エリスは俺と同じで優秀なスキルを持っている。敵対されたら面倒だ」


 そう伝えると、カトリナは納得した様子で頷いた。


「……なるほど、分かった。利用できるなら、利用するに限るってこと?」

「……まあ、言い方はアレだが、そんなところだな」


 エリスがそんな簡単に操れるような子ならな。

 精々、面倒が起きないことを祈るしかない。

 カトリナたちは次の作業へと向かい、俺もエリスに会うために扉を開ける。


 エリスは家の中を見て回っていた。

 俺に気づくと、玄関のほうへと来て、感心した様子で部屋をぐるりと見回す。


「……とても凄いですわね。家具もしっかりとあって、まさか下界でこんな家があるとは思っていませんでしたわ」

「それは、同感だな。……亜人の人たちは人間とは違う色々な才能を持っているのに、どうして共存できなかったんだろうな」


 人間は人間で、亜人は亜人でできることが違う。

 お互いに助け合っていれば、もっと生活が豊かになったのではないかと思う。


「人は、未知の存在を恐れるものと聞きましたわ。ですから、そういった力を恐れたのではありませんこと? 普通にしていれば、亜人のほうがあらゆる面で力が上ですし」

「確かに、な」


 今もエリスが何を思っているかは分からないからな。

 彼女の発言を、まさに今身を持って体験していた俺は苦笑を返すしかない。


「それでは、クレスト。これからよろしくお願いしますわね」

「……ああ、よろしくな。何か、手を貸してほしいことがあるときは声をかけるからな」

「もちろんですわ。クレストのためなら、何でもしますわね」


 彼女の嬉しそうな微笑に、俺も笑みを返す。

 精一杯、引きつらないようにしたつもりだけど、たぶんきっと引きつっていたんだろうなぁ。

 エリスに慣れるには、まだまだ時間がかかるかもしれない。





 その日の夜。

 俺が部屋で休んでいると、扉がノックされた。


 特に来訪予定もなかったため、俺は首を傾げながら玄関へと向かう。

 その途中で感知術を使用すると、スフィーの魔力と判断できたため、扉を開けた。

 感知術の通り、そこにはスフィーがいた。


「どうしたんだ?」

「エリスの見張りの件でちょっと聞きたかったのだけど……」

「何かあったのか?」


 一応、スフィーにはエリスの見張りをお願いしていた。

 ……スフィー自身が、あまり監視に向かないのは脇に置いておくとしてだ。

 他に頼める人がいなかったため、スフィーにお願いした。


 リビアやオルフェは、訓練所での指導を行っているし、ヴァンニャ、ゴルガ、カトリナたちはそれぞれの種族を活かしての作業を行ってもらっている。

 そうなると、手が空いているのはスフィーくらいだった。


「あの人、クレストの元婚約者、だったわよね?」


 そういうスフィーの表情は少し険しい。


「ああ、そうだ」

「今は特に関係はない?」

「そうだな」


 俺に対して、好意のようなものをもっているからこその質問だろう。

 ただ、スフィーの好意がどこまで本気なのかは俺にも分からない。


「ってことは、私が一番になれるってことかしら?」

「今の一番は、リビアだ。……ていうか、そういう順位付けするような言い方はやめてくれ。報告はそれだけか?」

「それだけよ」


 まったくエリスの監視と関係ないじゃないか。

 気になった俺は、スフィーに質問するしかない。


「……エリスは落ち着いていたか?」


 やはり、気になる部分はそこだ。

 上界にいたときのエリスを知っていると、そこがやはり不安だった。


「え? どういうことかしら?」

「なんかこう、いきなり亜人を捕まえて踏みつけたりしてなかったか?」

「そんなことする人なの? 私、一緒に街の案内とかしていたけれど、別にそんなことなかったわよ?」

「……監視の意味、知ってるか?」

「一緒にいたほうが楽じゃない」


 俺の想定では、陰からこっそりと見てもらうつもりだったんだけどな。

 まあ、仲良くやってくれているのならそれでいいけどさ。


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