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第47話


 すべての戦いが終わり、俺たちは村に戻ってきた。

 事前に話していた通り、ヴァンニャ、カトリナ、ゴルガの三名とその種族の亜人たちが、この村の一員となった。

 オーガに生き残りはいないため、新しく増えた仲間は彼らだけだ。


 ひとまず、皆にはそれぞれ出来ることを教えてもらい、それぞれの作業を行ってもらっていた。

 ドリアードのカトリナは、木材の加工が得意なのだそうだ。

 スキルとは違い、それぞれの種族の固有能力とでも言おうか。


 とにかく、カトリナや他のドリアード種たちには家の建築と修復を行ってもらっていた。

 俺のスキルで作る家よりも立派なものが出来そうで、とても期待している。

 ちょうど作業をしていたカトリナが俺に気付くと、嬉しそうに微笑んだ。


「それにしても、この村はかなり出来が良い。家を造るスキル、とても便利」

「……そうだな。でも、カトリナたちの家の方が凄くなりそうだな」

「頑張る。クレストに助けてもらった命、全力で使う」


 カトリナがそう言うと、他の子たちも少し怖いと思えるほどの熱意とともに声を上げる。


「カトリナ様の言う通りです」

「この命、クレスト様にすべて注ぎます」

「はい。この心、この身……そのすべてを――!」


 ドリアード族の子たちは、ちょっと怖い。


 俺に対して妄信しているというか……。

 いや、きっと気のせいだろう。

 あまり深くは考えない。

 俺は愛想笑いだけを返し、その場から逃げるように立ち去った。

 次に向かったのは門だ。


 そこでは、ゴルガたちゴーレム族が作業をしている。

 彼らは石の加工が得意だ。

 また、自分の体内で石を製作して何かを造れるそうだ。

 彼らの体自体が、一つの工房のようになっているらしい。


 鉱石を加工し、体内で作って、それを取り出せるそうだ。

 口から剣を取り出して見せた時は、驚かされたものだ。

 とにかく彼らは鉱石などに関しての加工技術に目を見張るものを持っていた。

 だから、鍛冶工房や外壁、門などをゴルガたちには手掛けてもらっている。


「クレスト、どうした?」


 こちらに気づいたゴルガが首を傾げる。


「いや、作業の進捗はどうかと思ってな」

「問題なく、進んでいる。……もっと速くした方がいいか?」

「いや、大丈夫だって。今のところ外敵はいないんだし、負担にならないように進めて行ってくれればいいさ」


 そんな急いで作ってもらわなくてもな。

 彼らにとって、負担が軽いようにしてもらえればそれで構わなかった。


「……分かった。立派なものを、作ってみせよう」

「ああ、期待してるよ」


 ゴルガが微笑み、俺も微笑を返す。ゴルガ含め、皆真面目な性格をしているため、放っておいても彼らなら良い物を作ってくれるだろう。

 次に向かった家は、魔道具工房だ。

 カトリナたちが作ったそこでは、ヴァンパイア族が活動している。


「おお、クレスト。どうしたんじゃ?」


 中へと入ると、ちょうどヴァンニャがいてこちらに笑顔を向けてきた。


「調子はどうだ?」

「問題ないんじゃよ。それに、今日は曇りだしの! 昼から元気じゃ!」


 ヴァンニャ含め、皆は確かに元気だ。

 ヴァンパイア族は、ヴァンニャを中心に生活に使えそうな魔道具を製作してくれている。

 ……だいぶ、皆で作業の分担が出来るようになってきたな。


 畑仕事などは、ゴブリン、ワーウルフを含めた皆で行ってもらっている。

 スライムたちには水分の確保を中心に、ポーションなどの製作を行ってもらっている。

 オーガとの戦いで、死者が出なかったのはスライムたちのポーションがあったこともあるだろう。

 そして、残りの手の空いている人たちは魔物狩りなどをして、自分自身の鍛錬を積んでもらっている。

 これで、ひとまず平穏な日常だ。


 俺ものんびり自分のやりたいことでもしようかな。

 やりたいこと、か。

 ひとまずは、強くなりたいかな。

 ここにいる皆と平穏を守れるように。

 よし、外で魔物でも狩ってくるか。


「リビア、少し外に出てくる」

「そうですか? では、私も同行してよろしいですか?」

「ちょっと魔物狩りに行ってくるだけだぞ?」

「たまには、一緒にいたいと思いまして……駄目、でしょうか?」


 そう言われたら、断ることは出来ない。

 リビアに苦笑を返し、俺は彼女とともに村の外へと出た。

 まさに、その時だった。


「に、人間が一体何の用だ!?」


 南門から、怒声のような声が響いた。

 に、人間!?

 門の外から響いた声に、俺とリビアは顔を見合わせてすぐに外へと出た。

 また、ハバースト家から迎えに来たのだろうか?


 そんな俺の考えを塗り替えたのは、美しい金色の髪だ。

 下界にいることなど、本来ならばありえないような女性。

 俺にとって、よく知ったその女性を見て、体が強張った。


「……クレスト!? ここにいましたのね!」


 こちらへ嬉しそうに微笑むのは、俺がもっとも苦手だった元婚約者――エリス・リフェールドだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今更何しにきやがったんだこいつ
[一言] さて、 書籍ではああでしたが、こっちではどうなるか。
[一言] ついに来た!
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