第45話
俺はアサシンと忍び足術を発動したまま、一気にオーガの一体へと迫る。
そのままの勢いを乗せるようにして、俺は剣を振り下ろした。
「があ!?」
「う、腕が――!?」
腕を切り落とすと、オーガは悲鳴を上げていた。
残っていたオーガたちが周囲を警戒するように見ていたが、彼らは俺たちに気づけていない。
アサシンのレベルが上がったことや、この暗闇にいる状況が彼らの目を欺いてくれているようだった。
それだけの隙があれば、残っていた三体のオーガたちを仕留めるのなんて容易だった。
一瞬で四体を仕留めた俺は、それからスキルを解除する。
こちらに気づいたドリアードたちの驚いた顔と目が合う。
「俺は亜人たちを救助にきた人間のクレストだ。カトリナから話は聞いているか?」
「え、ええ……き、聞いています」
少し戸惑った様子ながらも、ドリアードたちは俺の言葉にうなずいてくれた。
「それなら話は早い。全員の首輪を解除する、少し触れるぞ」
ここからは時間との戦いだ。
一方的にそう言って、俺はドリアードたちの首元へと振れる。首輪へと触れ、鍵術を使用してすべての鍵を解除した。
「みんな、すぐに亜人たちが使っている家に向かってくれ。そこで作戦が始まるまで待機しているんだ」
「わ、分かりました」
今のところ、周囲にオーガの気配はない。
結構な状況ではあるが、まだオーガたちは襲撃されていることに気づいていないようだ。
これで、作戦の半分以上は遂行できた。
俺は予定通り、魔法を空へと打ち上げた。
ここからは、戦争だ。
火魔法が空へと打ちあがると同時、外から雄たけびのような声が響き渡った。
同時、亜人たちが使っていた建物からも魔物が飛び出してくる。
俺はアサシンを発動し、黙って様子を眺めていた。
戦場は、優位に進んでいる。
この状況で俺がやるべきことは――敵の首領を仕留めること。
それまで、不用意に目立つつもりはない。
じっと待ち続け、奴がやってくるのを待つ。
家から出てきていたオーガの一体が、ゴルガに殴り飛ばされ、気を失った。
そのオーガと入れ替わるように現れたのはオーガの首領、ルガーだ。
「てめぇら! なんで首輪がないんだ!」
怒鳴りながら現れたルガーはすぐに周囲を睨みつける。
彼はまだ無事なオーガたち数名と連携しながら、近くの亜人へと切りかかる。
彼の力は本物だ。
亜人たちを次々に切り、蹴りつけては進んでくる。
それに抵抗するように、ゴルガが拳を振りぬいた。
ゴルガの一撃に、ルガーが合わせる。ルガーは持っていた剣を勢いよく振りぬき、ゴルガの攻撃をはじいた。
ゴルガが険しい表情を浮かべる中、ルガーは笑みを濃くした。
「はっ! その程度で反逆のつもりか? 全員、また首輪をつけなおしてやるよ!」
ルガーがそう叫び、ゴルガへととびかかる。
ゴルガの体は硬化させられるようだったが、それでもまったく無傷というわけではない。
ゴルガを助けるように他の亜人たちが動く中、俺はルガーが隙を見せるのをじっと待ち続けた。
そして――その時が来た。
俺が一気にルガーの背後から迫る。
そして、剣を振り下ろした瞬間。彼は横に跳んだ。
攻撃をかわされた? ルガーは眉間を寄せながら、じとっとこちらを睨みつけてくる。
「てめぇが……こいつらを裏で引いている奴なのか?」
ルガーの問いかけは、確実に俺に向けてだろう。
一度アサシンを解除し。ルガーとにらみ合う。
「まさか、気づかれているとは思わなかったな」
気配は完全に殺していたが、ルガーのような強者が相手となると気づかれてしまう部分もあるのだろう。
「はっ、ここにいるような奴らならともかく、オレ様くらいになればな。てめぇは……そうか。南の魔物たちか。……まさか、人間が率いているなんてな」
ルガーは俺とそれからゴブリン、ワーウルフ、スライムたちを睨みながら剣を構えた。
「てめぇの目的はなんだ?」
「奴隷として使われている亜人たちの解放だ。……それをしてくれるのなら、ここで戦うつもりはないが」
俺がそういうと、ルガーはけらけらと笑い出す。
「はっ! それが無理だと分かっているから、てめぇはこうやって強硬策に出たんだろ? 当たり前だが、拒否に決まっている! てめぇを殺して、南の魔物どももすべて、オレの奴隷にしてやるよ!」
叫んだルガーは、その勢いのままにとびかかってきた。
彼の一閃を、俺も剣で受けとめる。
重い一撃だ。
だが……返せないほどじゃない。
腕に力を籠め、はじき返した。




