第36話
次の日の朝。
俺は各種族のリーダーたちを集め、作戦会議を行っていた。
内容は潜入についての改めての確認だ。
俺の部屋に全員分の椅子はなかったため、それぞれ自由にしている。
自由にするのは構わないが、スフィー。人のベッドで横になろうとしないでほしい。
リビアがスフィーを止めていて、その隣ではヴァンニャもくつろいだ様子でいる。
数少ない椅子には俺とオルフェが座っていた。
こほんと咳ばらいを一つ。
皆の注目が集まったところで、俺は口を開いた。
「具体的な作戦は以前話した通りだ。俺が潜入を行うつもりだ。今夜行う」
「今夜、か。また急だな」
オルフェの反応に、俺は頷いて返す。
「まあな。ただ少しでも早く、捕まっている亜人たちを解放したいと思っている。皆が考えているよりも、彼らの扱いは酷いみたいだったからな」
俺がそう言うと、視界の端にいたヴァンニャの表情が落ち込んだものになる。
そんなヴァンニャを見て、そっとスフィーが体を抱きしめていた。
「スフィー、そんな気を使わなくてもいいんじゃよ」
ヴァンニャがどこか恥ずかしそうにそういうと、スフィーは笑みを浮かべて首を横に振る。
「ううん、違うわ。ヴァンニャを抱きしめるチャンスだと思っただけよ」
「離れるんじゃ!」
暴れたヴァンニャの攻撃をスフィーはスライムの体でもって受け止めている。
スフィーの本心はともかく、ヴァンニャが元気になったのは確かだ。
「ヴァンニャ、確認したいんだが彼らは奴隷の首輪のようなものをつけていたんだけど、同じものは作れるか?」
「可能じゃな。な、何に使うんじゃ?」
びくびくとした様子でヴァンニャがこちらを見てくる。俺がヴァンニャに使用するとでも思われたのかもしれない。
「ちょっと鍵開けがうまく行くかどうか調べたくてな。同じ構造のものを作ってほしい」
「どういうことじゃ?」
「俺のスキルに鍵を開けるものがあってな。それが通用するなら、彼らを解放する際に鍵を探す必要はないからな」
「……なるほど! 分かったんじゃ。すぐ作るんじゃよ!」
「まあ、そんなに焦らなくても大丈夫だ」
今日の潜入でオーガの村を一通り回る予定だ。
鍵の位置などもその時に把握できるだろう。
こくりと俺が頷いて、それから皆へと視線を向ける。
「というわけで、今夜潜入する。スフィーとヴァンニャは夜活動できるように日中は体を休めておいてくれ」
「分かったんじゃ」
「了解よ。お忍びデート、楽しみにしているわね」
お忍びの意味がまるで違う気がするが、どちらも問題はなさそうだ。
「オルフェとリビアは俺がいない間の村を任せる。何かあったときはオルフェを主導に村のみんなに指示を出してくれ。リビアはその補助を頼む」
「分かりました、クレスト様。お気を付けください」
「了解だ」
リビアは補助の方が向いているだろうと思い、そのようにした。
二人からも特に反対意見などもないようだ。
「それじゃあ、これで会議は終わりだ。それと、オルフェ、リビア。俺も少し訓練をしたい。少し戦ってくれないか?」
「……ああ、分かった。だが、二対一か?」
「アサシンなどの新しいスキルを使っての戦闘になる。たぶん、一人だと対応は厳しいと思ってな」
アサシンスキルをどこまで実戦で活かせるか分からない。
暗躍するのには向いているのは分かっているが、例えば敵に見つかってから対応できるのかどうか。
そういった部分について試していきたいと思っていた。
「……ほぉ、それは楽しみだな」
「手加減はしませんよ、クレスト様」
オルフェもリビアも好戦的に笑みを浮かべる。
さて、どのくらい通用するのか。
楽しみだ。




