第33話
村を出て北へと進む。感知術を使いながら周囲の魔物を索敵していると、目的の魔物を発見することができた。
「ワーウルフが言っていた通りだな」
俺はわざと声に出してそう言ってみた。
今は忍び足術を発動しているからだ。しかし、目的の魔物は一切反応していない。普通なら聞こえているのだろうが、しっかりとスキルが発動しているんだろう。
目的の魔物は、もこもことした可愛らしい魔物だ。
愛くるしい表情をしており、雑草を小さな前足で掴んで食べていた。
倒すのにすこし躊躇いが出るほどに可愛い魔物だ。ペットとして飼いたいくらい。
鑑定を使用すると、魔物の名前が分かった。
モクモクシープと呼ぶようだ。
一応、扱い的には羊でいいのか。しばらく、アサシンと忍び足術を維持したまま俺はモクモクシープを追いかけていく。
歩き方まで可愛いな。よちよちと小さな足を動かして移動している。
ただ、ワーウルフたちから聞いていた通り、見た目よりも随分と素早く動くな。
しばらく歩いたのち、モクモクシープはぴたりと足を止める。俺が顔を上げると、そちらにはレッドウルフがいた。
ルフナの毛色を赤色にしたようなそいつは、二体で行動していた。
レッドウルフは200ポイントの魔物だったな。すでに、ゴブリンやワーウルフたちが討伐済みなので、わざわざ狩る必要はない。
そんなことを考えていると、モクモクシープはレッドウルフへとゆっくり近づいていく。
おいおい。レッドウルフなんかに近づいたら食べられてしまうのではないだろうか?
そんな不安から止めに行きたいと思っていたのだが――モクモクシープは愛くるしい顔を恐ろしいものへと変え、レッドウルフへと一気に迫った。
思わず声にならない悲鳴が漏れてしまうほどの、衝撃があった。
「が!?」
驚いている間には、レッドウルフの一体が悲鳴を上げている。
モクモクシープが一瞬で迫りレッドウルフの首元へとかみつき、引きちぎったのだ。
なんつー攻撃だ。
唖然としてしまう。
もう一体のレッドウルフが逃げようとしたが、瞬く間にモクモクシープは迫り、噛みついた。
骨をばりばりと砕く音。耳障りともいえるその音が、モクモクシープの顎の強さを物語っていた。
あっさりと二体のレッドウルフを仕留め、それらを食べ始めたモクモクシープはそれまで通りの愛くるしい顔になっていた。
近づいてみていた俺は、
「お、おお……」
あまりの変化に声がもれてしまう。
忍び足術の効果は完璧で、今モクモクシープとの距離はかなり近いのだが声が聞こえている様子はない。
モクモクシープは恐ろしい魔物だな……。あの見た目に騙される人も多いのではないだろうか? 俺だってその一人だっていうのに。
というか、下手したらワーウルフたちだって危険だったかもしれない。
村に戻ったら皆にきちんと教えないといけないな。
俺はアサシンと忍び足術を使用し、それから弱点看破も使用する。
弱点看破によって、モクモクシープの弱点が分かる。
人間と同じく、喉や心臓。それ以外に、負担のかかっている部位などもあり、どこを狙えば効率よく倒せるのかが分かる。
モクモクシープの心臓の位置を把握した俺は、剣を握りしめ仕留めるために距離を詰める。
手が届くほどの距離まで近づいても、気づかれることはない。
そして俺は、剣をモクモクシープへと突き刺した。
「ぎゅ!?」
ふわふわとしたモクモクシープの毛をかいくぐり、剣はすっと心臓まで届いた。これも弱点看破のおかげだ。
モクモクシープは驚いた様子で、ゆっくりとこちらに顔を向けたが……やがて、その目から光が消えた。
そして、ポイントを確認してみると……400!?
これまででもっとも多いポイントに俺は驚いていた。
確かに、あの戦闘能力の高さと厄介な脚力を考慮すれば、この数値も妥当か。
この死体はオーガたちに見つかっては面倒なので、すべて土葬させてもらった。
土魔法を使い、完全に死体を埋める。
まあ、臭いにつられてウルフたちが掘り起こす可能性もあるが、ウルフたちが死体を見つける分には構わない。
それなりに深い位置に埋めたので、問題ないだろうと思う。
とりあえず、こいつらを二十五体見つけて狩っていこうか。
それから数時間かけて、モクモクシープを仕留めていった。
すでに夕方だ。
俺の獲得したポイントは合計で10000ポイントだ。
滅茶苦茶ポイントを稼げたモクモクシープだったが、やはりこれまで通り二十五体までしかポイントは入らなかった。
残念だ。
とはいえ、ガチャ二十二回分だ。
拠点に戻ってからガチャは回そうか。
そんな時だった。感知術を使用していると、これまでとは別の反応があることに気付いた。
……なんだ?
アサシンと忍び足術を発動し、俺はそちらへと近づいていった。
「おい! てめえら! いい加減魔物は捕まえたのかよ!?」
「ご、ごめん……にげ、られた」
「ちっ! とろいんだよ! クソが!」
オーガと思われる角のある大男は、手に持っていた鞭のようなもので大柄な男を殴りつけた。
大柄な男……恐らくゴーレムだろう。ゴーレムはぶたれた部位を一時的に石のようなものに変化させて受けていたようだが、それでも痛みはあったようで顔を顰めていた。




