第30話
俺の計画を話し終えると、リビアが考えるような視線をヴァンニャへと向ける。
「ヴァンニャ様。ドリアードやゴーレムの方々は私たちに協力してくれると思いますか?」
リビアの問いかけに、俺も視線を向ける。
先ほどの計画はあくまで希望的観測に基づいてのものだ。
ここで、ヴァンニャに「協力してもらえるはずがない」と言われれば、計画はまた変更となる。
「大丈夫、じゃと思う。あの者たちも奴隷扱いされる現状に苛立ちを覚えていたんじゃ。救出することを伝えれば、味方してくれるはずじゃ」
まあ、捕らえられている亜人たちに不満が溜まっているのはヴァンニャの様子で予想はできていた。
「一度目のときは俺、スフィー、可能ならヴァンニャの三人で乗り込もうと思っている」
「ヴァンニャ様もですか?」
「ああ。彼女がいた方が捕まっている亜人たちも話を聞いてくれると思うんだ」
だからこそ、先ほどスフィーとヴァンニャにアサシンのスキルが影響するかどうかを確認していたんだ。
「ヴァンニャ大丈夫か?」
「うむ。大丈夫じゃ」
「どちらにせよ。具体的な実行はもう少し先だ。俺のアサシンスキルをもう一段階強化してから挑みたい。だから、新種の魔物を見つけるために皆にも協力してもらいたい」
「ん? 新種の魔物とやらを見つけると、おぬしはスキルを獲得できるのか?」
「まあ、そうだな。詳しく説明すると――」
俺は自分のスキルについてヴァンニャに説明する。
説明の途中から彼女は目を見開き驚きっぱなしだった。最後まで話をすると、
「な、なんじゃそのふざけたスキルは! ずるいぞおぬしのスキル!」
「そう言うなって。今は皆を助け出すために活用できてるんだからさ。というわけで、ヴァンニャ。この辺りで魔物とか見なかったか?」
「うーむ……どうじゃったかな。色々と魔物は見ておるからの」
「そうか。まあ、それは後で教えてもらうとして……とりあえずはこんなところだな。何か質問はあるか?」
「私からいいかしら?」
すっと手を挙げたのはスフィーだ。
「なんだ?」
「潜入したときの私の役目は何かあるかしら?」
「いや、もしものためについて来てもらうだけだから、余計なことをしなければなんでもいいけど..」
「私、これでも毒水とか作れるけど、どう? 潜入するのなら、かなり使い勝手いいと思うんだけど」
「毒水か。確かにそれはいいかもしれないな」
オーガたちをまとめて仕留めるという点で言えば、彼女の技は使えるな。
「ヴァンニャ。もしも、オーガのリーダーを仕留めれば他のオーガたちは俺たちに従うと思うか?」
大事なのはここだ。
ヴァンニャや、他の亜人たちの心境はともかくとして、俺としては仲間を増やせるのならその方がいいと思っている。
「……どう、じゃろうな。奴らは欲望のままに生きておる。少なくとも、わしらが協力関係を申し出たときは無視されたんじゃ。その後、戦って敗北してわしらは降伏したんじゃが」
「……そうか。スフィー。毒に関してはいつでも出せるのか?」
「毒を使う魔物の素材があれば用意できるわね」
「それならポイズンスネーク辺りの素材を準備しておけばいいか」
前にいた拠点周辺なら、ポイズンスネークも出現する。
素材の準備に関しては問題ないだろう。
「それじゃあ、話し合いはこのくらいにしよう。皆夜遅くまで付き合ってくれてありがとな」
そうまとめると、オルフェたちは立ち上がった。
オルフェ、ヴァンニャは部屋を出ていったが、リビアとスフィーは残る。
「スフィー様。戻らないのですか?」
「ねえ、クレスト。私も一緒に寝るわよ。今日は疲れているでしょう? 私が癒してあげるわ」
「私が癒しますから大丈夫です」
「でも、ほら。私自由自在に体作れるから。リビアじゃ満足できないようなこともできるわよ?」
「私だけで大丈夫ですから」
「ほんと? 私、胸とか大きくできるのよ? ほら、リビアって無いじゃない?」
「ありますけど……?」
リビアの頬がぴきっと引きつったのが分かった。
スフィー、あんまり挑発しないでくれ。
「ほら、スフィーも早く戻って休んでくれ」
「もう、恥ずかしがり屋ねダーリン」
「あなたのダーリンではありませんが?」
リビアがスフィーの背中を押して家から追い出した。
ほっと胸を撫でおろしたのも束の間、リビアが振り返る。
「……クレスト様。やっぱり大きい方が良いのですか?」
やっぱりってなんだ。
「別にそんなことはないって。リビアが一番だ」
「そ、そうですか? 嬉しいです」
リビアが嬉しそうに微笑み、俺へと抱きついてきた。
……ほ、本音を言うと大きい方が好きなことは、胸の中に留めておこう。