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第24話


 俺は今まで、オーガについての話題は極力避けていた。

 救出する、とは話したが具体的な策は何も思いついていなかったからだ。


 少しずるいだろうが、話題にしないことでそのことを先延ばしにしてきていたのだ。

 しかし、昨日のガチャによってその方針を定めることができた。


「魔道具についてはさっきの話でいいとして、オーガの拠点についても聞きたいんだ」

「オーガ、じゃな。して、何を聞きたいんじゃ?」


 ぴくりとヴァンニャの眉尻が上がると、その表情が真剣そのものになる。

 ヴァンニャの仲間たちを助け出すための作戦だ。そうなるのも当然だ。


「捕まっているヴァンパイアはどのくらいいるんだ?」

「全部で九名じゃ」

「……九、か」


 それなら、こっそりと連れ出すというのは難しいな。

 アサシンのスキルを使用すれば、内部への潜入は容易なものだろう。

 だからこそ、こっそり全員だけ連れ出して救出してしまえば? とは思ったが、さすがにその人数は厳しい。

 一人くらいなら、どうにかなりそうなんだけどな。


 俺が色々作戦を練っていると、


「それと、他にも捕まっている種族がいるんじゃ」

「なんだと?」


 ヴァンニャから予想もしていなかったことを言われた。


「他に、どんな種族がいるんだ?」

「わしが脱出したときはドリアードとゴーレムもいたんじゃ。」

「それらの規模はどのくらいか分かるか?」

「ゴーレムは確か十じゃったな。ドリアードは……けっこういたからわからんのじゃ」

「……ヴァンニャのように逃げ出した者や、外に同種族がいてオーガに敵対している人たちはいるのか?」


 いれば、こちらも事情を話すことで仲間に引き入れることができるかもしれない。

 協力関係を結べれば、オーガともやりあうことは可能だろう。

 しかし、ヴァンニャは首を振った。


「そちらは、いないと言っていたんじゃ。ゴーレムとドリアードの首領たちに聞いたから間違いないんじゃ」

「……そうか」


 それなら、仕方ない。

 攻め込む場合は、俺たちだけでやるしかないな。

 ただ、ゴーレムとドリアードたちがどのような状況になっているのかは確認しておきたい。

 オーガに対して、敵意を持っているのか否か。


 持っているのならば、ヴァンパイアたちの救出に合わせて手を貸してもらうことも可能かもしれない。

 そうなれば、今回の作戦の成功率はぐんと高まるはずだ。


「オーガの拠点はどのあたりにあるんだ?」


 大まかに北の方、とは聞いていたが正確な位置に関しては分かっていない。

 俺の作戦を実行するにも、今後のことを考えるにしても一度現地を見ておきたかった。


「ここからちょうど北の地になるんじゃ」

「……そうか」


 他にもオーガたちの暮らしている状況がどのようなものなのかは聞きたいことであったが、それは直接確かめればいいだろう。


「今夜、遠くから様子を見に行ってみたいと思っているんだが、大丈夫か?」

「わ、分かったんじゃ」


 ヴァンニャが僅かに言葉に詰まる。

 その表情は少し青ざめている。体も、恐怖だろうか。震えていた。

 彼女がこれまでどのような扱いを受けていたのか。そのすべてを理解することはできないが、酷い扱いなんだったのだろうことは想像できた。


「不安なのか?」

「……不安というか、少し怖いんじゃよ。けど、助け出すためには必要なことじゃしの」

「ああ、そうだ」


 怖がっているところ悪いが、彼女しかオーガの拠点は知らない。

 ヴァンニャに協力してもらうしかない。

 俺だって、別に意地悪したくてこんなことを言っているわけじゃない。


 ただ、協力してもらう以上、少しでも彼女の不安を取り除くことが必要だ。


「ヴァンニャ。何かあったら俺たちが守る。心配するな」

「……クレスト」

「今は一人で戦う必要はないんだ。俺たちを頼ってくれ」


 俺がそう答えると、ヴァンニャはこちらをじっと見てから、微笑んだ。


「ありがとうクレスト。おぬしが皆に慕われている理由が分かったんじゃよ」

「……別に。俺は俺が正しいと思っていることをしているだけだ」

「ふふ、そうじゃな。おぬしと出会えて、わしは本当に良かったと思うんじゃよ」


 これで、今夜の予定は決まりだ。


「夜まで、ゆっくり休んでいてくれ。魔道具についても急ぎじゃないんだしな」

「大丈夫じゃよ。ヴァンパイアは睡眠が少なくとも生きていける種族じゃからの」

「そうなんだな」

「それと、じゃ」


 そこで一度言葉を区切ったヴァンニャが真剣な眼差しとともにこちらを見てきた。


「もしも何かあったときはわしが盾になる。わしはこの命、惜しくはない。だから、わしが死んだとしても……おぬしにはみんなをたすけだしてほしいんじゃ」

「……分かった。けど、おまえだって死なせない。またみんなで普通の生活に戻る。いいな?」

「もちろんじゃ」


 とりあえずは、オーガの拠点の様子を伺う。

 それからどうするのかについては、その後で確認すればいいだろう。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 同じ展開の繰り返しで飽きてしまいました。今後も繰り返すのでしょう。 すっきりする展開もないし残念。
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