第21話
鍵術には二つの方法があった。
鉱石を用いて物の鍵を作る方法と、魔力で無理やり開ける手段だった。
鍵術については上界でも聞いたことはあったが、具体的にどのようなものなのかまでは知らない。
まずは試してみよう。
俺は少し興味を惹かれ、玄関の扉へと向かった。
そこにはかんぬきがある。俺はそこに手を触れ、鍵術を発動する。
それなりに魔力を消費したところで、かんぬきが開いた。
「……なるほどな」
「鍵術も便利そうですね」
「ああ、思っていたよりも使い勝手がいいかもしれない」
開かない扉などを魔力を用いて無理やり開けることができる。
ただ、レベル1だとその魔力の消費量が多いようだ。
魔力でのみ開く鍵を、上界では魔力錠と呼んでいたな。
鉱石を用いた方では、よくある鍵穴用の鍵などを製作できるようだ。こちらを物理錠と上界では呼んでいた。
こちらは今のところ使い道はない。
上界ならば、各家に物理錠か魔力錠のどちらかが設置されているものだが、それはあくまで空き巣などの被害があるからだ。
この村では、別にそんな犯罪が起こるような村じゃない。仮に犯罪が起きたとしても、犯人なんてこの村以外に逃げ場はない。よほどの愚か者でない限り、そんな行動には出ないだろう。
「クレスト様、どうされましたか?」
「鍵術では、物理式の鍵か、魔力式の鍵を作ることができるんだけど、今のところわざわざ作る必要性はないと思っていたんだよ」
「確かに鍵は外敵から身を守るために作るものですよね。この村のみでいえば、そこまでのことをする必要はないと思いますが、一応武器倉庫や食糧倉庫には作っておいた方がいいかもしれませんね」
「……あー、確かにな」
万が一、という可能性もある。
リビアの言う通り、その辺りには作ってもいいのかもしれない。
「あの、私も物理式の鍵は見たことがあるのですが、魔力式の鍵についての知識は持っていないんですけど、それってどのようなものでしょうか?」
「魔力式の鍵っていうのは、通称魔力錠とも呼ばれている。登録した魔力に反応して扉が開くようになるものだな」
俺は鍵術を発動し、玄関の扉に手を触れる。
魔法陣が浮かび上がった。
さらに鍵術を使用し、俺は自分の魔力を登録する。
一度かんぬきを外してから、扉を押し開けようとするが、扉は開かない。
「扉、開かなくなりましたね」
「この魔法陣に、登録した人間の魔力を込めれば開くんだ。そうだな。リビアの魔力も登録したいから魔力を込めた手を触れてみてもらっていいか?」
「こうですか?」
リビアが少し力を込めたのが分かった。彼女の可愛らしい顔は、力がこもったこともあってか少し赤らんでいる。
俺は鍵術を発動して、リビアの魔力も登録する。
一度手を離してもらった後、リビアを見る。
「それじゃあ、もう一度魔法陣に手を触れてみてくれ」
「分かりました」
リビアが手を触れると、魔法陣が光を放つ。
それから、扉にあった施錠されていたときのような圧力はなくなり、リビアが扉を押すと自然と開いた。
「なるほど、こういうことですか」
「ああ。重要な場所には、この物理錠と魔力錠を用いて作られることがあるんだけど、そこまでする必要はないよな」
俺が知っているところだとやはり金庫とかだ?
あとは、危険な犯罪者をぶち込んでいる牢獄なども、この二段階式の鍵が採用されている。
ただ、厳重になる分管理する側も大変になるため、二段階式の鍵はそこまで使われることは少ない。
この鍵術は今の段階でも十分すぎるほどに使えるな。
レベル1以上上げる必要は、魔力の消費を抑えるためには必要なのだろうが、そもそも鍵を作る場面自体が魔力に余裕があるときだろうし、そこまで問題ではないよな。
やぱり下界で使うようなスキルではないと思うな。
俺の作った鍵であれば、破壊は自由にできる。
先ほどの魔力錠は必要ないので、とりあえず破壊する。
とりあえず、これで鍵術の確認は終わった。
「次は罠魔法について調べてみるかな」
「そうですね。確か、込めた魔法を発動する魔法ですよね? どのように使うのでしょうか?」
「いくつか、考えはあるんだ。試していってみよう」
俺は早速罠魔法を作ってみる。
まずは罠を設置する場所の選択からだ。
ある地点を決めたら、そこにどのような罠を設置するかを決めていく。
踏み抜いたら起動するように条件付けを行う。
それから、罠に込める魔法だな。そよ風程度の風魔法にしようか。
それを俺はある地点に設置する。起動回数は一度のみにしておいた。
設置した瞬間に魔法陣が一瞬だけ生まれたが、すぐに消えた。
「罠魔法、見えませんね」
「……そうだな。ただ、魔力を目に込めると見えるな」
「え? 私は見えませんね……」
「そうなのか? どうにか見えるようには――」
リビアにも見えるように。
そう意識してみると、
「あっ、見えました」
「良かった。それじゃあそこまで歩いてみてくれないか?」
「え? ど、どんな罠を設置したんですか?」
「そよ風程度の風が吹くようにしているんだ。たぶん、怪我とかはしないと思うけど」
「分かりました」
リビアは少し緊張した様子でその罠魔法に近づいていく。
俺が指定した場所まで歩いた瞬間だった。魔法陣が浮かびあがる。
「きゃ!?」
分かっていたとはいえ、リビアは少し驚いたように声を上げる。
「こ、これは見えていれば何とかなりますが、少し驚きますね」
「そうだな。使い道は色々ありそうだけど、とりあえず外敵に向けて門とかに設置してみるのもいいかもな」
門といっても、木製のものだ。
壁にしたって、村の周囲は加工した木を埋めただけの物しかない。
ただ、何もしないよりはマシだろう。
「そうですね。条件付けってどのようにできるんですか?」
「かなり何でもできるみたいだ。条件が複雑になると魔力の消費量が格段に上がるけど、まあ許容範囲内かな」
例えば、仲間以外とかもできる。仲間、とは具体的に俺が魔名を与えた者以外が敷地内に入ろうとした瞬間に発動する、とかだ。
こうすれば、外敵に先制攻撃を仕掛けることができるはずだ。
色々と妄想が膨らむな。
「……クレスト様ってガチャスキルはもちろんとっても凄いですが、一番の才能はその魔力量ですよね」
かもしれない。
これは生まれ持ってきたものが良かった証拠だ。
ただ、結局スキルがなければ魔力なんて宝の持ち腐れだ。
次で、最後だ。
いよいよ、アサシンのスキルについて調べてみよう。




