24話 戻らない日々
何代にも渡って繁栄を続け栄華を極めた文明が崩壊した。
それは、即ち配置換えを意味する。
神の世界では、文明の盛隆ごとに管理神の配置換えが行われる。
これは、いくつかの理由があるのだが新人の育成という理由が大きいと思う。
そして、とある世界でも配置換えが行われることとなった。
「僕は、ダイダだ。
別の世界では娯楽の神の下で下級神として仕えていた。
この度、“アラブリア”で新たな管理神として勤めることになった。
よろしく頼む」
そう言って、ダイダ様は手を差し出してきた。
私は、ダイダ様の着任に合わせて神の使徒として生まれた。
種族でいえば、半神と微妙な位ではあるが同じく神の使徒と呼ばれる種族である天使よりは力を持っている。
私は、主の意図を察し握手をした。
「私はダイダ様に仕えさせていただく半神、神の使徒であるミラです。
よろしくお願いいたします」
これがダイダ様との初めての出会いだ。
最初期の文明が起こり始めるとダイダ様と私は二人三脚で世界の管理にとりかかり始めた。
未だ勝手に慣れないダイダ様との作業は大変なものであったがそれはもう充実感のあるものであった。
それからしばらくして文明が発展し始めると私たちも仕事に慣れ余裕を持って管理を行えた。
しかし、そこが始まりだったのだ。
ある日、ダイダ様は休暇として数日間、別の世界へと向かった。
これは、管理者権限の一つに始めから定められているようなのだが詳しい原理は分からない。
ただ、休暇申請の行使を宣言すれば勝手に行き先などの選択肢が出てきてそれを指定すると自動的に転移が行われたようだった。
その数日間は、私が一人で管理業務をおこなった。
初期にダイダ様と一緒に色々とやっていたおかげで何とか数日間の維持が行えた。
そして、早々に数日間が過ぎ去った。
「ダイダ様、お帰りなさいませ」
ダイダ様の帰還日。
私は、ダイダ様を出迎えに行ったのだが。
そこに現れたのは全くの別人とも化したダイダ様であった。
元々はスラッとした美形な感じの体系と容姿なのであったのだが……。
戻ってきたのは小太りで加齢臭を纏ったおじさんのような姿になって帰って来た。
「ん、ああ。お迎えご苦労。
引き続き管理、頼むよ。
僕は部屋にいるから。
あと、夕食少ししたらお願いね」
そんな事を言って気持ちだけは足早に、のっそのっそと自身の部屋に行ってしまった。
それから、ダイダ様は一変してしまった。
管理業務は私に丸投げ。
自身は部屋にこもりっきりで休暇の間に仲良くなったっていう神から送られてくるお菓子なる食べ物を食べながらげーむなる機械をずっといじっていた。
そして私には普段から行っていた身の回りの世話もありすぐに足が回らなくなった。
流石にこれは不味いと思いダイダ様に何度も手伝ってもらうように頼み込みに行ったのだが毎回、イライラしているダイダ様に殴る蹴るをされて部屋を追い出される。
それを気にせず何度も足を運び、遂にダイダ様が折れて本当にヤバい時だけいやいやながら手伝ってくれるようにはなった。
そんなある日。
ふと、私の記憶の中に見覚えの無いようなものがあった。
それは、今と同じように世界の管理を行っている物であるのだが管理画面に映るその景色は私の管理する“アラブリア”にはどこにもないものである。
そこから数日間。
どんどん多くなっていく見覚えのない記憶。
自身には何の問題も無かったので何一つ気にすることなく日々の管理にあたっていた。
また数日が経ち、遂にその記憶の正体を知ることが出来た。
上位神ミラ。
記憶の持ち主の名前だ。
その容姿は現在の私と瓜二つ。
私の前世の記憶が何らかの形で蘇って来たようだ。
過去、別の世界で管理神として働いてきた記憶であったのだが。
その記憶は温かいものが殆どであった。
管理神であるミラとその側仕え。
今のダイダ様と私のような関係ではなく共に支え合うような関係であり、過去の事ではあるが羨ましいと嫉妬してしまった。
だが、この記憶は管理をする上でもとても便利な物でありとても重宝するものであった。
それからかなりの時が経ち、とある不可解な点を管理用モニターで発見した。
画面に映る男の手の中には黄金のグラスがある。
記憶を探った私はすぐにそれが何であるかを把握した。
バグ聖杯。
記憶の中ではそう呼ばれていた。
それは願いを一つ代償無く破壊的手段で叶えるものであり、回収するべき物。
使用されたのであれば最悪、世界の破壊をもたらす物であると記憶していた。
回収の所までの記憶はあったのだがそこからの処理に関しては無かった。
私は少し考えると計画を実行に移した。
モニターに映るのはこの世界では突出した魔法の腕を持った少年がコロッセオで戦っている所であった。
「ダイダ様、少し下界で調整してきます」
そう一言残して私は下界に降りた。
そこから、私は今まで何度かモニタリングしていたとある国の諜報部隊の一人に声を掛けると金を渡し買収。
聖杯確保の算段を整える。
私は沈みゆく夕日を見ながら一人感慨にふけっていた。
その時の私にとって、この後に訪れる成果は思いもよらないものになった。




