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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
4章 新月の夜に捧ぐ聖杯

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21話 強奪と襲撃

「それでは、聖杯の入場だ」


 優勝賞品である聖杯はこれからこの会場に持ち込まれる。

 僕の入って来たゲートから、正装を着た男性が聖杯の乗った台を押しながら入って来た。

 聖杯は台の上でガラスケースの中に入っておりそれを鍵で施錠してある。


 そのまま台は僕の前を通り過ぎガハルドさんの前まで来て停止する。

 ガハルドさんは首元に掛かっていたチェーンを引き出すとそこには鍵が一つ掛かっていた。


 カチャッ


 鍵を使ってガハルドさんがガラスケースの扉を開け中から聖杯を取り出す。

 その瞬間、黒い影が横切った。


「頂いていく」


 聖杯がガラスケースの中から取り出された瞬間。

 黒い人影が現れ、聖杯をガハルドさんの手中から強奪し跳躍。

 空いているコロッセオの天井部分から街の方へと消え去っていった。

 この展開は誰が予想していたのだろうか?

 あまりにも予想外なせいか、会場内は一気に静寂に包まれた。


 聖杯が盗まれた。

 その事実が会場に周知される。

 聖杯を何事も無く回収するためには期日である明日までに奪還しなければならない。


「すいません、僕はここで失礼します」


 ちょっと申し訳なく思い、その一言を残して僕は聖杯を盗んでいった人を追いかけるために同じように天井部分から街の方に抜け出した。





 街に出たはいいものの、初動が遅かったせいで犯人が何処に行ったのかが分からない。

 取りあえず、“花園”でモニタリングしているであろうノイマンに始めに確認を取ってみる為に<念話>を繋げた。


 ⦅ノイマン、今いいか?⦆


 ⦅はい、大丈夫です。ナギ様。

 聖杯の事でしょうか?⦆


 ⦅ああ、分かってるなら話が早い。

 今どこにあるか分かるか?⦆


 ⦅はい、現在は街中の建物の屋根の上を移動し、北上中。

 壁を越えて街から脱出する予定です⦆


 ⦅分かった、ありがとう⦆


 ノイマンから犯人の現在位置が聞き出せたので僕はその方向に向かって周囲を破壊しないようにだけ注意しながら移動を始める。

 近くの建物の屋根の上に飛び乗ると、そこから隣の建物に隣の建物にと北に向かって移動を開始した。


 飛び跳ねながら移動すること数秒。

 街の外壁まで後百メートルという所。

 黒い服を着た人が壁を超えて街の外に出ていくのが見えた。


 ⦅ノイマン、あれか?⦆


 ⦅はい、間違いありません⦆


 確認が取れたので、僕はその場で大きく跳ねると『エアブースト』を発動させ一気に加速。

 街の外、街道を少し外れた森の直前の所で黒い服を着た人の前に降り立った。


「さあ、聖杯を返してもらおうか」


 僕が進路に入ったことで黒い服を着た人は動きを一瞬止める。

 が、間を開けずに懐から黒塗りの短刀を抜き出すと僕の方へと切りかかって来た。

 そこまでされれば実力行使に移るしかない。

 僕は即座に<麻痺の魔眼>を使用した。

 魔眼が発動した瞬間、カランと短剣が地面に落ちる。

 それに遅れて、足元から力が抜けていくかのように黒服の男は前へと倒れていった。


「ふぅ。これでも聖杯争奪戦の優勝者なんだ。

 勝てると思ったんだか?

 痺れて喋れそうにも無いし取りあえず縛らせてもらうよ」


 黒服の人にそう声を掛けると<アイテムボックス>から取り出した紐を使ってきつめに縛り上げる。

 その際、顔を隠していた布を外したのだが黒服の人は男だった。


 それから、これからどうしようか考え取りあえず華奈たちを呼ぶことにし、<念話>を行う。


 ⦅華奈、今、大丈夫?⦆


 ⦅あ、凪!

 今大丈夫だよ。

 聖杯は取り返せた?⦆


 ⦅うん、問題なく回収できたよ。

 それで、今は街の外の森の手前あたりに居るんだけど来る?⦆


 ⦅うん♪⦆


 ⦅分かった。

 じゃあリリィとに頼んでこっちに飛んでくれる?⦆


 ⦅うん⦆


 そうして、<念話>が切れる。

 僕は、足元に転がっている黒服の男を見た。

 と、後ろから。


「来たよ~」


 お気楽な声が後ろから掛かる。

 振り返ると華奈、リリィ、メアリーがもう来ていて朝ぶりの再開だ。


「それが、奪っていった人ですか?」


「うん、そうだよ。

 襲い掛かって来たから返り討ちにしてこれだね」


 三人は僕の足元で縛られている黒服の男を見て盗んでいった人だと理解する。


「よし、じゃあこいつ持って帰ろうか」


 三人に視線で移動することを伝え、足元に居た黒服の男を持ち上げ方に乗っける。

 そうしてもう片方の空いている手に聖杯を持つと、“マティア”の街の門の方に移動しようと街を向いた。

 その瞬間に攻撃を察知した。


「『神域結界』」


 上空から大量の光の矢が僕たちの方に降り注いだ。

 咄嗟に発動させた最上位の結界で問題なく防ぐことが出来たが威力などから考えると上位である聖魔法それの三位~一位の魔法であろう。

 ただ、この世界の魔法レベルを考えるとあり得ないものだ。


「この世界で最も強い人間と言っても神の使徒である私の魔法を防ぐことは出来なかったみたいだね~」


 頭上からそのような声が届いた。

 僕達の周りは未だ先ほどの魔法で飛び上がった砂埃が舞い散っている。

 円形に張った結界の外側を見て見ればドーナッツのような円形に地面が三メートル程抉られていた。


「それじゃあ、聖杯を回収してとっとと帰ろ~う」


 そんな能天気な声がまた聞えてくるのであった。


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