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数多の世界で紡ぐ物語~秘されし神の皇は数多な異世界を渡りその崩壊を防ぐ~  作者: 灯赫
4章 新月の夜に捧ぐ聖杯

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20話 黄昏に終結する

 フィールド上に一本の光の柱が立った。

 その柱は十秒ほどエネルギーを放ち続けた後に、フッと力が抜けるかのように一瞬にして消え去る。

 柱が立っていた後の地面は黒く焼け焦げている。


 気になるアルヴァ―ンさんの状態であるが……。

 黒く焼け焦げた地面の奥。

 柱の範囲外だった場所で立っていた。

 紅のマントは所々焼け焦げ黒い煙を立てており、面積は二分の一ほどに。

 また、着ていた黄金の鎧の方も色々なところが欠け、黒く焦げた個所が多数見受けられた。

 しかし、アルヴァ―ンさんは状態でも未だ二本の足でしっかりと立っている。


「この魔法、ヤバいな。

 俺でも最後まで食らっていたら一発だったな」


 その感想も最はだ。

『エレメンタルバースト』は“アルメア”でグレイルと決闘した時に使った『穿つは天地』の大本の魔法だ。

 基本的には、威力・範囲を出せる上限を超えて上げたのが『穿つは天地』でありどちらとも魔法としては同一のものと言って問題ない。

 それを使った時に『死せるもの無き決闘領域』の結界を抜いてしまった事から今回こちらを使った。


「どうです?

 降参しますか?」


「いや、皇帝としてそれは出来ねぇな。

 最後まで戦うさ」


 時刻は大体四時ごろ。

 太陽がかなり傾き地平線へと刻々と進みゆく。


 空は夕日によって金色に染め上げられ、僕たちの居るコロッセオにも例外なく金色に照らし出す。

 そう、この時間帯。

 黄昏時と言えば黄昏の魔法だ。

 威力と範囲、そして観客の目を楽しませる上でこれほど良いものは無いだろう。


「もう日没が近いですね。

 空がもう染まってきている」


「あ? まあ、そうだな」


「僕はとある場所で【黄昏の焔(サンセット)】と呼ばれていたんですよ。

 それが指すのは今の時間帯」


「あ?」


「まあ、簡単に言ってしまえば……。

 これで終わりにする、ですかね」


 突然の話題変換。

 アルバーンさんはいまいちついてこれていないようだ。

 だが、もう終わらせる。


「『陽は沈みいき金色の錦広がる。

 散りばめられし星々は煌々と輝く。

 黄昏、それは終わりの訪れ。

 森羅万象、例外一つ無く。

 始原と終焉、輪廻の紡がれる物語。

 これはただ一片の終焉。

 物語の一幕に過ぎず。

 忘却の彼方に沈みゆく。

 黄昏(ラグナロク)虚像(ファントム・)(ザ・)一番(ファースト)(スター)』」


 金色の空。

 陽が沈んでゆき浮かび上がって来る星々。

 その空が黒く染まっていく時間帯。


 その空の一点に煌々と輝く星があった。

 輝く星がキラリと瞬く。

 その瞬間にこの場にいたすべての人たちが滅びを幻視した。


「がはっ!」


 そんな声を残してアルヴァ―ンさんの姿は消え去っていく。

 観客からは見えないかもしれないが、白い小さな矢がアルヴァ―ンさんの胸を貫いていたのだ。

 その声に驚き観客たちは意識をこちらへと戻す。

 観客たちが目に捕えたのはダメージが規定値に達して消えていくアルヴァ―ンさんの姿。


 観客席は決着に気づくと一気に完成を上げて沸き立ったのだった。





「それでは、これより聖杯争奪戦の表彰式を開始する!」


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


 戦闘によってボロボロになっていた地面が綺麗にされると直ぐに表彰式が開始された。

 決勝戦が終わってからまだ十分程だからであろうか、観客の熱気は最高潮に達したままだ。


「それでは、優勝者の入場だ!

 第一位……ナギ!」


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


「「「「「「ナギ! ナギ! ナギ!」」」」」


 僕の名前が呼ばれると再び大きな歓声が上がった。

 また、それに合わせて至る所で僕の名前が叫ばれる。

 その中を僕は表彰台がある中央に向けて鐘の下にあるゲートから三百六十度全方向に向けて歓声に答えるかのように手を振りながら歩いて移動する。

 僕が中央に辿り着くと会場が一斉に静まり返った。


「では、これより表彰式を開催する。

 それでは、主催者のガハルド・ボットルテ様より挨拶を頂きます。

 ガハルド様、よろしくお願いします」


 そうして、中央に備えられた台の上にガハルドさんが昇った。

 手には拡声をする為の魔道具を持っている。


「それでは、まず初めにご来場者の皆さん。

 今回は私どもの主催する聖杯争奪戦に足をお運び下さりありがとうございました。

 さて、本日まで六日間に渡る試合の数々お楽しみいただけたでしょうか?

 この大陸中に名を知られる者たちの圧倒的強さや、未だ名前が知られてこなかった者の快進撃。

 派手な魔法合戦や技術が問われる剣術戦。

 様々な試合が行われ多数の名勝負が生まれた事でしょう。

 中では今回優勝したナギ選手。

 彼は無名であったが、多数の名の知られる者たちを打倒し優勝まで上り詰めた。

 観客席の中には自身が有名でないからと出場を諦めた人も居るのではないだろうか?

 私は、今回の大会を契機にそのような人たちにもぜひこのような大会に参加していただきたいと思っている。

 この戦乱溢れるこの大陸で次に名を挙げるのはこの中に居る誰かかもしれない。

 私は、勇気ある者たちを、力のある者たちを応援する」


 言葉をそこで締めたガハルドさんはその場で一歩下がると深く頭を下げた。


「「「「「ワァァァァァ!!!!!」」」」」


 ガハルドさんの言葉により触発された観客たちの歓声が上がった。


「それでは、今回の優勝者であるナギ選手の表彰に移る!

 ナギ選手、前へ!」


 僕はガハルドさんの前に移動した。


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